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エドゥアルド・ネット封殺で快勝した川崎F 守備で明暗”風間サッカー”対決

2018 9/26 11:37SPAIA編集部
サッカーボールⒸShutterstock.com
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連勝中と変わらないスタッツを記録した名古屋

新旧”風間サッカー”対決として注目を集めたJ1第27節川崎フロンターレと名古屋グランパスの一戦は川崎Fが3-1で勝利。勢いに乗る名古屋を川崎Fが攻守で上回り今季の順位通りの結果に終わった。

風間監督から影響を受け同じエッセンスを持つ両チームだが、そこには明確な差があった。

この試合のスタッツを見ると、シュート数、枠内シュート数では川崎Fが19本、7本(後半戦平均18.5本、7.3本)に対し名古屋は6本、4本(後半戦平均12.8本、6.4本)と、川崎Fはいつもどおりの記録を残しているが、名古屋は大きく数字を減らしており、思い通りにゴール前にたどり着けなかったことがうかがえる。

パスサッカーを武器とする両チームのパス数は726本(後半戦平均751.5本)、593本(後半戦平均557.1本)。ボール保持率では川崎Fが54%(後半戦61.4%)、名古屋46%(後半戦48.7%)を記録。

攻撃の軸となるパスに関しては、名古屋は後半戦の連勝中の平均パス数を上回るパス数を記録。パス成功率も連勝中の83.1%を上回る88.0%と、数字上は思い通りにパスを回せているように見える。

しかしこのパス数をエリア別に分けると両者の違いが明確になる。

川崎Fのパス数をアタッキングサード/ミドルサード/ディフェンシブサードのエリア別で分けると、後半戦平均213.7本/411.1本/127.8本に対し、この試合では277本/369本/80本を記録。

一方の名古屋は後半戦平均119.9本/291.4本/146.1本に対し、この試合では95本/331本/167本。

川崎Fはアタッキングサードでのパス数が増えているのに対して、名古屋はパス数が減少。名古屋は増えたパス数のほとんどがディフェンシブサードのものだった。

エドゥアルド・ネットを自由にさせなかった川崎F

エリア別パス数の違いを産んだのは両者の守備の差だった。

「ネット(エドゥアルド・ネット)は名古屋のキーマンの1人。ネットが触ることから始まるのは映像で見ていた。うちがネットにやられて嫌なことをやってやろうと思っていた。意図的にポジションを取った。」(川崎フロンターレ公式 http://www.frontale.co.jp/goto_game/2018/j_league1/27.html)

と中村憲剛が試合後に語っているように、川崎Fは名古屋のビルドアップの中心である元チームメイトのエドゥアルド・ネットに自由にプレーさせないことを徹底した。

この対策により名古屋はボールを繋ぐことで中盤に相手を引き出し一気にゴールを陥れる、お得意の疑似カウンター状態を作れなくなった。アタッキングサードにスペースを生み出せず縦パスが出せなくなってしまったのだ。

攻撃の芽をつぶされた名古屋は自陣に下がっての守備を選択した。

川崎Fのような個人技に優れた選手が多いチームと対戦する時は、自陣ゴール前の危険なスペースを埋めるというのが常套手段である。

しかし下がって守ることで名古屋はボールを奪い返す位置も低くなってしまった。

その結果ビルドアップのたびにエドゥアルド・ネットに集まるボールを狙われ、何度もゴールを脅かされ3失点を喫してしまった。

優勝、残留へ戦いは続く

盤石の勝利となった川崎F。首位広島が引き分けに終わったためこれで両者の勝ち点差は4。1試合消化が少ないことを考えると逆転優勝はかなり現実的な目標となってきた。

鹿島、C大阪、FC東京と難敵との対戦は残しているが、2連勝で勢いに乗った。昨季は第21節以降一敗もせずに優勝を果たしており、今季も快進撃が見られるかもしれない。

一方の名古屋はこれで連敗。今節は下位チームが勝ち点を重ねたため降格圏の17位G大阪との勝ち点差はわずか1。残留争い真っ只中である。

しかし完敗となったこの試合の名古屋にもポジティブな要素はあった。前半は厳しい内容となったが、後半にはビルドアップの形を変え得点につなげる対応力を発揮できたことだ。

名古屋はC大阪、FC東京、札幌、広島と上位陣との対戦を残しており厳しい戦いが続くが、この試合での対応力を見る限り上位陣も簡単に勝ち点を奪えるチームではない。