注目の風間サッカー対決
前節2位対4位の上位争いとなる札幌戦を7-0で大勝し逆転優勝へ勢いを増している川崎F。第27節でぶつかるのはシーズン前半戦を最下位で折り返しながらも、後半戦に入ると怒涛の7連勝で12位まで順位を上げた名古屋グランパスだ。
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川崎Fは2016年まで風間八宏監督が指揮を執り、一方の名古屋も2017年から同じく風間監督が率いている。
風間監督といえばショートパスが連続するパスサッカー。川崎Fは一試合平均711.0本でリーグトップ。名古屋も598.6本と大きな差があるもののリーグでは4番目に多い。
このパスを軸に相手ゴールに迫る攻撃サッカーで川崎Fは39得点、名古屋は42得点を挙げている。
特に名古屋の後半戦での得点力は圧巻で、1試合あたり3.4点はリーグ平均の1.4点の2倍以上という凄まじさである。
同じ指揮官のエッセンスを持つ2チームだが、当然ながら似ている様で似ていない点も多く、後半戦に入ってからそれは顕著になっている。
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高いボール奪取力が川崎Fの強み
川崎Fと名古屋の大きな違いが守備力だろう。
川崎Fは後半戦のパス数が一試合平均751.5本でリーグトップ、ボール保持率も60%を超えリーグトップ、シュート数でも18.5本でリーグトップなのだが、それ以上に飛び抜けた数字を記録しているのが被シュート数。リーグ平均13.4本に対してわずか6.0本。必然的に枠内シュート数も減り1.8本しか打たれていない。
川崎Fの強さは単にボール保持率を高め攻撃機会を奪うことだけでなく、ボールを失った時の再奪取にある。単にパスをつないで攻めるだけのチームではなく、ボールを奪い返すことで主導権を握り続ける。
これこそが、風間監督からチームを引き継ぎ、昨シーズン初タイトルをもたらした鬼木監督が川崎Fに植え付けたものだろう。
縦への速さを身に着けた名古屋
後半戦に入ってから快進撃を続けた名古屋の攻撃データには興味深い変化が見られる。
後半戦のパス数は543.4本と前半戦の624.5本から少なくなっている。それでも平均以上で変わらずパスをつないでいるのだが、ボール保持率は50%を上回っていたものが平均以下の約48%に減少。
さらにミドルサードでのプレー比率はリーグで3番目に高い49.7%を記録しているのだがアタッキングサードでのプレー比率は22.2%でリーグ最少、シュート数12.8本もリーグ平均13.4本を下回っている。
それにも関わらずリーグトップの得点数を記録している理由は、後半リーグ平均32.2%を大きく上回る50.0%の枠内シュート率、リーグ2位の枠内シュート6.4本から見えてくる。
このアタッキングサードで手数をかけずに少ないシュート数で得点を奪うというやり方は、相手が守備を固めてしまう前に攻め込もうとする縦に速いサッカーが持つ特徴と同じ。
名古屋は、ミドルサードまではショートパスをつなぐことで相手を引き出し、背後に生まれたスペースを突いて相手が守備を固めてしまう前に一気に縦に速くフィニッシュまで持っていっている。
後半戦から、この疑似カウンター状態を作り出すことで、爆発的に得点力を向上させているのである。
進化した名古屋のサッカーは上位陣に通用するのか
この試合のポイントとなるのは、縦に速い要素を身に着けた名古屋の攻撃が川崎Fの守備を攻略できるかどうかだろう。
ミドルサードでボールを持つことが出来ず、アタッキングサードにスペースを作り出せなければ前節の札幌同様、ビルドアップを狙われショートカウンター食らい大敗する可能性もある。
しかし、川崎Fが今シーズン敗れた6試合は全て相手の縦の攻撃に屈したもの。そしてそのうち5試合は先制点を奪われた試合で、さらにそのうち4試合は前がかりになったところで相手の速いサッカーで追加点を許している。
そしてこれこそが後半戦の名古屋の必勝パターン。失点も多い名古屋だが相手が前にでてきたところで次々に追加点を奪い連勝を重ねた。名古屋にとってはその第一歩となる先制点が大きな意味を持ちそうだ。
優勝、残留へ譲れぬ一戦
川崎Fは逆転優勝のためには下位のチームに負けるわけにはいかない。ここで敗れてしまうと1試合未消化とはいえ首位広島の結果次第では勝ち点差9にまで開き、逆転できる目安と言われる残り試合数を上回ることになる。
名古屋は後半戦の8試合を(第18節が未消化)7勝1敗で降格圏を脱出し、順位を12位にまで上げたが、16位柏との勝ち点差はわずか「2」。これまでは下位チームとの対戦が多く、広島・川崎F・FC東京・札幌・C大阪と上位6チーム中5チームとの対戦を残している。
この試合で勝ち点を拾えなければ、再び残留争いに巻き込まれる可能性が大きい。
同じエッセンスを持つ2チームの対戦は、両チームにとって大きな一戦となる。