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ヴィッセル神戸新監督ファン・マヌエル・リージョは「哲学する」指揮官

2018 9/20 13:23SPAIA編集部
サッカーボールⒸShutterstock.com
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マンC監督グアルディオラの師匠

ヴィッセル神戸は吉田孝行監督が退任し、スペイン人のファン・マヌエル・リージョ氏が就任すると発表した。ルーカス・ポドルスキ、アンドレス・イニエスタとワールドクラスの選手を次々に獲得してきた神戸が招聘したファン・マヌエル・リージョ氏とはどのような人物なのだろうか。

リージョを語る上で欠かせないのがマンチェスター・シティの監督であり現在世界最高の監督とも言われるジョゼップ・グアルディオラとの関係だろう。

リージョはグアルディオラ監督が師を仰ぐ存在として知られている。

2人が出会ったのはまだグアルディオラが選手としてプレーしていた1996年。当時レアル・オビエドを率いていたリージョのポゼッションサッカーに感銘を受け親交が始まった。

グアルディオラが現役最後のクラブとして選んだのがメキシコのドラドス・シナロア。当時世界的なスター選手だったグアルディオラがこのクラブを選んだのは、リージョが監督を勤めていたからで、わずか半年のプレーだったがグアルディオラは「最も影響を受けた監督」としてリージョの名を挙げている。

スペイン1部リーグ最年少監督

16歳で指導者としてのキャリアを歩み始めたリージョは、29歳の時にスペイン1部史上最年少監督として注目を集めたUDサラマンカを始め、これまでスペインの数多くのチームで指揮をとってきた。

近年で最も知られているのは元アルゼンチン代表監督ホルヘ・サンパオリとのコンビで、2015年からはチリ代表、2016年からは当時清武を獲得したセビージャFCでサンパオリが監督、リージョが助監督を勤めていたことだろう。

コパ・アメリカ2015でチリ代表を優勝に導いたことでサンパオリは同年のFIFA最優秀監督にノミネートされるが、この優勝もリージョ抜きではあり得なかった。

セビージャFCを去ってからはコロンビアで監督を勤めていたが、その後解任され現在はフリー。そこでヴィッセル神戸が夏頃からコンタクトを取っており、今回の退任に合わせて監督就任という流れになった。

リージョのサッカー

リージョがこれまで監督として残してきたことの1つは4-2-3-1というシステムを完成させたことだ。

今では当たり前の様に多くのチームが採用するこのシステムだがかつてこのシステムを作り上げたのはリージョである。

そして、現在ヨーロッパで最先端の考え方となっているポジショナルプレーという概念を作り上げたのもリージョ。

「コンセプトであり評価基準であってフォーメーションの話しでは無いので説明は難しい」
(フットボリスタ2011年5月25日発売号ファンマ・リージョインタビュー)

本人も語っているように難解なのだが「攻守一体となったプレーの中でボールを自分たちの意図する場所に運び、それを有利に進める」という哲学に近い考え方である。

リージョはこれを実践するためにボールを保持することを好み試合をコントロールしようとする。

神戸に与える影響は

今季開幕前に神戸は「ポゼッションサッカーに取り組む」としていたが、リージョはポゼッションサッカーの本質を知る監督なのである。

理想のサッカーに対する思いはこだわりと呼ぶにはあまりにも強く、そのためこれまでのキャリアでは解任も多く、選手としての実績も無いためスモールクラブでの指揮がほとんどだった。

その一方で、理想に近いプレーが出来たときのチームの強さ、美しさは他に類を見ない。それだけに世界的な知名度は高くグアルディオラを始め信奉者が多く存在する。

神戸がリージョの哲学を身につけることができれば、本当の意味でのアタッキングフットボールをJリーグで見ることができるだろう。リージョの哲学はグアルディオラに大きな影響を与えておりイニエスタとの相性にも期待が持てる。

発言も哲学的

かつて日本代表監督を勤めたイビチャ・オシムの哲学的な発言が「オシム語録」として注目を集めたが、リージョの発言もオシムに負けていないほど哲学的でウィットに富んでいる。

就任会見でも垣間見えた様に、リージョは質問に対しストレートには答えることは少ないが、例え話を織り交ぜながらところどころにリージョが考えるサッカーの本質を散りばめて語るのだ。

彼の指揮するチームはもちろん、彼の発言に注目するのも面白いだろう。