シュート数・被シュート数に変化は無いが、得点減失点増
昨季ルヴァンカップ、天皇杯の2冠を達成しリーグ戦も3位で終えたセレッソ大阪。悲願のリーグ初優勝を目指し迎えた今季は、序盤こそAFCチャンピオンズリーグと並行したスケジュールで思うように勝ち点を重ねられなかったが、ワールドカップによる中断時点の順位は1試合少ない中で暫定4位。今季も上位を争うものと思われた。
しかし中断期間後の6試合で3分3敗と未だ未勝利。第20節終了時点で7位にまで順位を落としている。セレッソ大阪に何が起こっているのか。
中断期間前の14試合の成績が7勝5分2敗、勝ち点26。中断期間再開後6試合の成績が0勝3分3敗で勝ち点3。平均得点数は中断前の1.4点から再開後の0.7点。失点は1.0点から1.7点と大きく落ち込んでいる。
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シュート数自体は1試合平均13.6本から12.7本とそれほど大きな落ち込みもなく、枠内シュート数にいたっては0.7本増の5.3本に向上。被シュート数も大きな変化は無い。
このデータを踏まえると問題となっているのは質の部分だろう。
得点では再開後の6試合で4点を奪っているが、得点者は高木、丸橋×2、オウンゴールという内訳。前線の選手で得点を記録しているのは高木の1点のみとなっている。
また失点に関しては気になるデータが1つ。セーブ数が中断前から半分の1.3回に落ち込んでいるのだ。
被シュート数自体は大きく変化が無い中でセーブ数がこれだけの落ち込みを見せているのは、再開後は対戦相手に決定的な形でシュートを打たれている場面が増えた、ゴール前で守備が機能していないと言えるだろう。
ボール保持率は増えるもゴールに近づけず
もう少し詳細にデータを比較してみると、大きな変化を見せている部分がある。
その1つがボール保持率。中断前の48.6%から再開後は51.7%とボール保持の時間が増えているのだ。
ボール保持率が高くなるということは、当然プレー数やパス数も増える。総パス数平均は499.4本から530.3本と大きく数を増やしている。
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しかし、これをエリア別に分けると、増えているのは235.4本から278.5本となったミドルサードのみ。アタッキングサードでは131.5本から129.5本、ディフェンシブサードでも132.5本から122.3本とむしろパスの数が減っている。
当然プレー数でも同様の傾向がみられ、アタッキングサードでのプレー数は228.5回から222.7回。敵陣30m以内のプレー数でも167.2回から155.0回と減少を見せている。
ボールを保持している時間は増えたものの、その実態は相手の守備ブロックの外側であるミドルサードがほとんど。相手ゴールに近い場所までボールを運び、プレーすることができなくなっているのだ。
タックル数に変化は無いが
守備面でのデータ、タックル数にも特徴的な変化が見られる。
タックル数は中断前後ともに17.5回と一見すると全く変化は見られない。しかし、その内訳はアタッキングサードでのタックル数が半分の1.5回と大きく数を減らし、それに伴い敵陣でのタックル数も5.7回から4.2回に減少している。
アタッキングサードのタックル数が減ったのに、ミドルサード前方のタックル数(アタッキングサードタックル数-敵陣タックル数)が変わらないのは、自陣でのタックル数が増えたことを意味する。
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C大阪の特徴として、守備のときにブロックを作って守るため、本来タックル数はそれほど多くない。
前半戦、第17節までのリーグ全体の数字を見ても、リーグ平均が21.8回に対してC大阪は17.2回でリーグ17位となっている。
しかしエリアをアタッキングサードだけに限るとリーグ5位となる2.7回を記録している。これは、相手のボール保持に対してはしっかりとブロックを作って守るが、敵陣でボールを奪われた時には、まずはすばやく攻守を切り替え、高い位置で守備をすることを徹底。その後ブロックを作るという流れで守備が行われていたからだった。
しかし、再開後はアタッキングサードでのタックル数が減少。高い位置での守備ができていないのだ。その結果、相手のカウンターを受ける回数が増加。セーブ率の大幅な減少もここに起因していると見られる。
可能性が高まったのはクロス攻撃
リーグ戦再開後うまくいかない試合が続く中、仙台戦、神戸戦、鳥栖戦では自らのミスで相手にセットプレーを与え失点。チーム全体が悪い流れに飲み込まれてしまっている。
そんな中で、数字が上がっているのが、クロスに関する数字。昨季、大きな武器となっていたクロスからのゴールが今季は全く見られず、クロス数もリーグ9位の16.3本、成功率はリーグ15位の18.9%と低迷していたが、再開後の7試合に限定すると、クロス数が19.8本、成功率も21.9%と上昇している。
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チームが再び上昇気流を掴むには、アタッキングサードでクロスを入れるまでの形を整備しつつ、高い位置での素早い攻守の切り替えを取り戻すことが必要となってきそうだ。