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Jに吹き込むスペイン旋風、その先に見えるJリーグの隆盛と日本代表の強化

2018 7/28 10:00Takuya Nagata
アンドレス・イニエスタ,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

イニエスタとトーレスがJデビュー 早くも大物の片りん

2018年ワールドカップロシア大会で中断していたJ1リーグが7月22日に再開。そこで注目されたのが、共にJ入りを果たしたスペイン代表歴のあるアンドレス・イニエスタ(34歳)とフェルナンド・トーレス(34歳)だ。

ヴィッセル神戸に入団したイニエスタは、渡邉千真に代わって途中出場。湘南ベルマーレ相手に0-3という完敗だったが、スルーパスやCKからの左足ボレー等、随所でその実力を披露した。世界クラスの選手のJデビュー戦とあって、この日、神戸はクラブ史上3番目に多いホーム観客を動員した。

サガン鳥栖に加入したトーレスは、田川亨介に代わり後半5分に登場。左サイドからドリブルで持ち込み、右足で一瞬切り替えてリズムをずらしてシュートを放つ様はさすがだった。得点こそなくチームはベガルタ仙台に0-1で敗れ黒星スタートとなったが、スピードの衰えを圧倒的な経験値でカバー、ピッチにいるだけでDFに圧力をかける存在感を発揮していた。

サッカーは11人でプレーするもので、どれだけの大物選手であっても加入してすぐに魔法の様にチームが勝てるようになるわけではないが、実力は見せた。神戸はアジアチャンピオンズリーグ出場、鳥栖はJ1残留が見えてきた。後半はスペイン旋風が巻き起こりそうだ。

一足早く、スペイン人指導者が日本上陸

実は選手より一足早くスペインサッカーの経験が豊富な指導者が日本に先乗りしている。東京ヴェルディのミゲル・アンヘル・ロティーナ監督とジェフユナイテッド千葉のフアン・エスナイデル監督が共に2017年シーズンからJクラブで指揮を執っている。

2008年と2012年の欧州選手権連覇および2010年ワールドカップ優勝で、スペイン代表が築いた黄金時代の頃、これこそが日本の目指すべきサッカーだと盛んに言われた。そして日本代表は2014年ブラジルワールドカップに向けた監督招へいのため、スペイン人指導者との交渉を行ったがことごとく不調に終わり、2018年ロシア大会に向け待望のスペイン系監督ハビエル・アギーレ氏との契約に至った。

日本代表は軽快なパスワークを用いた戦術で、メキメキ力をつけていったが、スペイン時代の八百長疑惑で告発されたことから、道半ばで日本サッカー協会が契約解除に踏み切った経緯がある。

そこからの日本代表の紆余曲折は、記憶に新しいところだ。近年、日本代表監督は外国人であることが当然とされてきたが、日本サッカー協会はA代表と五輪代表を森保監督に兼任させるなど、代表チームの内製に向けて動いている。

世界を見渡すと、サッカー先進国のほとんどは、自国の指導者が代表監督を務めている。成熟したサッカー大国には、当然優秀な指導者がいるものだ。

Jリーグと最高峰の欧州主要リーグとでは、やはり選手や指導者の経験値にギャップが出るのは否めない。日本で、唯一世界基準で戦えるのが代表チームだが、日本人監督の経験不足から今まで外国人監督に頼ってきた。

これでは日本人指導者が育たず悪循環だが、代表チームを指導者育成の場にすることもできない。国内サッカーに世界基準を持ち込むことが、長期的に見た日本サッカーの発展に重要な要素だ。

神戸のバルサ化は最高のモデルケース

そこで注目すべきは、ヴィッセル神戸のバルセロナ化だ。ビッグネームのイニエスタの加入に人々の目が行くが、実はそれと同じくらい大事な取り組みが、バルセロナに縁のある育成指導者の招聘だ。

神戸の育成部にアルベルト・ベナイジェス氏(63)とマルコス・ビベス氏(43)が加入した。トップチームに加わったメディカルスタッフのエミリオ・リカル氏(57)も、長期的なクラブ運営に大きな影響を与えるだろう。

欧州CLで上位進出常連のスペイン2強である、レアル・マドリードとバルセロナを比較すると、圧倒的に世界で手本にされているのは、バルセロナだ。その理由は、これだけのビッグクラブでありながら、育成型のクラブ運営をしているからだ。

レアルが大金で世界中から大物選手を買いあさっているのに対し、バルセロナはチームの中心選手を自前のカンテラ(下部組織)で育てている。クラブの哲学が選手の髄まで浸透しており、監督が代わってもチームのサッカーが大きくぶれることはない。継続は力なり。この一貫性が強さの秘訣であり、監督が代わる度にスタイルが変わってしまう日本代表に必要なものだ。

Jクラブの財政規模からは、レアルの真似は出来ないが、上手くすれば、バルサ流は可能だ。神戸市がバルセロナの姉妹都市だったことと、ヴィッセルオーナーの三木谷浩史氏が、楽天のマーケティング戦略の一環で関係を深めていることが幸いし、FCバルセロナという世界基準が日本に確立しようとしている。

この流れを一過性のものにしないために重要なことは、サポーターの存在だ。サッカー人気のないサッカー強豪国はない。大勢の観客で埋まるスタジアムが全国で増えていくことで、入場料、スポンサー、放映権料等で、クラブの体質が強化され、リーグ全体の国際競争力もついてくる。

真の日本代表強化には、地域のサッカー熱とJリーグの盛り上がりが不可欠

1億人以上の人々が住み、世界第3位の経済大国であるにも関わらず、国内クラブの収益が世界ランキングの10位どころか30位以内にすら入っていないことを考慮すれば、日本のクラブサッカー熱は、サッカー先進国とかなりの温度差があると言わざるを得ない。

ファンやサポーターは支持者であると同時に消費者でもある。現金な話だが日本代表、国内リーグが強ければファンやサポーターは自然と増える。消費者が増えれば強化や育成に投資できる額は増えるのだが、強くなるための資金が強くならなければ手に入らないとなると本末転倒だ。では、資金がなければ強いクラブ、強いリーグにできないのか。

そんなことはない。

元セレッソ大阪のディエゴ・フォルランもプレーしたビジャレアルは、人口約5万人だが、世界最高峰のリーグの一つであるスペインのリーガ・エスパニョーラのプリメーラ・ディビシオン(1部)の常連だ。リーグ最高順位は2位。他のチームに比べれば小さなホームタウンだが、育成に力を入れ優秀な選手を輩出し、熱心なサポーターに支えられ、各国代表が所属する他チームと対等に渡り合っている。

かつて神様ジーコは、人口僅かに6万人前後の鹿嶋市(旧鹿島町)を中心とした地域に常勝軍団アントラーズを創った。日本にだってできないことはない。地域のサッカー熱が盛り上がれば、クラブはもちろん、Jリーグのレベルも上がり、日本代表も自然と強くなっていくだろう。

その足掛かりとして、イニエスタやトーレス、スペイン系指導者のJリーグ加入は大きな意味を持っている。

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