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飯倉のパス数55.0本に表れる異質な戦術 横浜Mアタッキングフットボールに迫る

2018 6/8 18:50SPAIA編集部
サッカー,ゴール,ⒸShutterstock.com
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これまでの常識を覆すGK飯倉大樹のプレー

今季就任したアンジェ・ポステコグルー監督が持ち込んだ、アタッキングフットボール。シーズン前半戦で、その象徴として大きな話題となったのがGK飯倉大樹だ。

身長181cmとGKとしては少々低めだが、広い守備範囲と足下技術の高さには定評があり、昨季はフルタイム出場を達成。キャリアのピークに入ろうとしている。

今季の飯倉は1試合あたりのパス数が55.0本と、GKとしてはリーグ最多だ。

J1のGK平均が31.6本、2番目に多いキム・ジンヒョン(C大阪)の39.6本と比較しても際立っており、ミドルサードでも今季通算49本のパスを記録している。(2位の権田(鳥栖)が15本)

J1パススタッツ

ⒸSPAIA

プレーの異質さは、走行距離にも表れている。第10節北海道コンサドーレ札幌戦では7.470kmを記録。これはGKとしては異色の数字で、相手GKのク・ソンユンの約1.5倍に当たる。同じ試合でFWとして90分プレーしたウーゴ・ヴィエイラと比べてみても、1kmほど少ないだけで、フィールドプレーヤーとほとんど変わらない数値である。

今季、飯倉のプレーエリアはかなり広く、GKの定位置であるペナルティエリア内にいることがほとんど無い。チームの最後尾でパスを出し、攻撃の組み立てにも参加している。中盤の選手がCBの間に下がり、攻撃の組み立てを行うことがスタンダードだと考えられている近年だが、その役割を飯倉が担っている。

中盤の選手が下がる代わりに、GKが前に出て攻撃の組み立てを安定させている。つまり、GKを除く10人のフィールドプレーヤーで攻撃の組み立てを行っている他チームに対し、横浜FMは前に出たGK飯倉も含めた11人で、攻撃の組み立てを行っているのだ。

Jリーグ内で最も縦パスを通すチーム

飯倉がフィールドプレーヤーのように攻撃の組み立てに参加する効果は、データにもはっきりと現れている。

GKがパスワークに参加する横浜FM。チーム全体でのパス数は1試合平均665.3本と多く、川崎フロンターレに次ぐ2位。そして、パス成功率は83%と川崎を抜いてリーグトップだ。また、方向別パスデータを見ても、前方パス数が1試合平均227.7本を記録しており、こちらも成功率72%でリーグトップ。本数こそ川崎の231.7本に比べるとわずかに少ないものの、川崎の成功率は70%。高い精度を要求される前方へのパスでは横浜FMに軍配が上がる。

世界的なフットボールグループである「シティ・フットボール・グループ(CFG)」の一員として名を連ねる横浜FM。同グループのマンチェスター・シティで、グアルディオラ監督が提唱する、ピッチを縦に5分割しそれぞれのレーンにバランスよく選手を配置する「5レーン理論」。実際に、SB選手が中盤選手さながら中央に入ってプレーする「偽SB」などの戦術を導入し、注目を集めている。GKである飯倉が積極的に攻撃の組み立てに参加するのも「5レーン理論」に基づいてのことだろう。

ワールドカップ中断期間を迎えた第15節終了時点で、4勝5分6敗の13位と結果に結びついていないが、得点数はリーグトップタイとなる23点を記録。さらにJ1で最も縦パスを通しており、横浜FMが取り組むアタッキングフットボールも機能しつつある。

2017-18シーズンに数々のリーグ新記録を樹立し、圧倒的な成績でプレミアリーグ優勝を達成したマンチェスター・シティは、グアルディオラ監督就任1年目の2016-17シーズンは苦しんでいた。

同じ戦法をベースにしている横浜FM。同様の進化を遂げ、タイトルを獲得する可能性は十分にある。

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