これまでの常識を覆すGK飯倉大樹のプレー
今季就任したアンジェ・ポステコグルー監督が持ち込んだ、アタッキングフットボール。シーズン前半戦で、その象徴として大きな話題となったのがGK飯倉大樹だ。
身長181cmとGKとしては少々低めだが、広い守備範囲と足下技術の高さには定評があり、昨季はフルタイム出場を達成。キャリアのピークに入ろうとしている。
今季の飯倉は1試合あたりのパス数が55.0本と、GKとしてはリーグ最多だ。
J1のGK平均が31.6本、2番目に多いキム・ジンヒョン(C大阪)の39.6本と比較しても際立っており、ミドルサードでも今季通算49本のパスを記録している。(2位の権田(鳥栖)が15本)
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プレーの異質さは、走行距離にも表れている。第10節北海道コンサドーレ札幌戦では7.470kmを記録。これはGKとしては異色の数字で、相手GKのク・ソンユンの約1.5倍に当たる。同じ試合でFWとして90分プレーしたウーゴ・ヴィエイラと比べてみても、1kmほど少ないだけで、フィールドプレーヤーとほとんど変わらない数値である。
今季、飯倉のプレーエリアはかなり広く、GKの定位置であるペナルティエリア内にいることがほとんど無い。チームの最後尾でパスを出し、攻撃の組み立てにも参加している。中盤の選手がCBの間に下がり、攻撃の組み立てを行うことがスタンダードだと考えられている近年だが、その役割を飯倉が担っている。
中盤の選手が下がる代わりに、GKが前に出て攻撃の組み立てを安定させている。つまり、GKを除く10人のフィールドプレーヤーで攻撃の組み立てを行っている他チームに対し、横浜FMは前に出たGK飯倉も含めた11人で、攻撃の組み立てを行っているのだ。