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FC東京2位躍進の源は「パスの少なさ」と「速さ」にあり

2018 6/2 15:00SPAIA編集部
J1第15節までのチームパス数,ⒸSPAIA
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「速い」FC東京

FC東京のサッカーは「速い」。 選手個々のスピードは勿論なのだが、チームとして「速い」のだ。

「速さ」を象徴するデータの1つがパスの数とその方向だろう。 FC東京の1試合平均パス数は439.1本(第15節終了時点)。これはJ1 18クラブ中17番目の数字でJ1平均523.9本と比較しても100本近く少なく、J1トップの川崎の704.1本の60%ほどでしか無い。

このパスをさらに方向別で分けると、FC東京の前方パス数は184.8本。これは全パス数のおよそ42%となり、リーグで2番目の高さとなる。FC東京はボールを奪うと余計な横パスやバックパスを使うことなく、高い比率で相手ゴール方向へ縦パスを繰り出している。

第15節までに317回のタックルを記録しているFC東京の「速さ」は、攻撃時だけに留まらない。その29%に当たる91回は敵陣、なんとアタッキングサードでも34回のタックル数をあげている。

選手のポジション別で分けると、MFの選手が最多で158回と約半数を締め、FWが50回を記録、中盤から前の選手で208回と全体の60%を超える。

FC東京は守備から攻撃に切り替わったとき、ボールを一旦キープしない。また、攻撃から守備に切り替わったときも、一旦下がって陣形を整えたりもしない。 攻守の切れ目をできるだけ短くし、前へ攻め入る「速さ」を追求したサッカーを行っている。

J1第15節までのチームパス数ⒸSPAIA

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「速さ」を生み出すセントラルMF高萩

FC東京の速さを生み出しているポイントは、個々の選手データを見ると明らかだ。 チーム内最多のタックル数を記録しているのは高萩洋次郎の40回、次いで橋本拳人の36回で、 共にセントラルMFを務めている。

さらにパス数でもチーム最多の高萩。 GKやDF陣はポジションが低く必然的に前方パスが増えるため、GKやDF陣がランキング上位に並ぶのは当然だ。しかし、GK林彰洋やCB森重真人に次ぐ3番手には、セントラルMFの高萩が入っている。

高萩は、ボールの奪取とパスの両方を極めることで無駄をなくし「速さ」を生み出している。

「速さ」をさらに加速させるFW永井

高萩が生み出した「速さ」をさらに加速させているのは、2トップの一人である永井謙佑だ。 FC東京が快進撃を始めた頃に、永井が先発定着したのは偶然ではない。

Jリーグファンなら誰もが知っている永井の爆発的スピード。しかも、試合中にそのスピードを何度も発揮することができるスプリント力を持ち、第8節C大阪戦では今季J1最多となる42回を記録している。

通常は、守備時に自陣のポジションに戻り、攻撃時には攻撃幅を作る動きが求められるサイドの選手にスプリント数が多くなる傾向がある。しかし、永井はFWのポジションでありながら、この記録を達成した。

攻撃時にFWが走ることができる場所は、相手ディフェンスラインの裏しかない。味方がボールを奪う度に、繰り返し何度もそこへ走っている永井。このスプリントが味方のボールを引き出しているのだ。

ボールを奪った直後にパスを出す高萩の「速さ」を、相手ディフェンスの裏へ走る永井が、さらに加速させているということなのだ。

「速さ」は世界のトレンド

日本ではショートパスをつなぐポゼッションサッカーが好まれる傾向がある。

「技術力を最大限に生かし、規律や結束して化学反応を起こす」 西野朗日本代表監督は、就任会見で「日本のフットボール」をこう説明した。

しかし、近年そのポゼッションスタイルに対抗し躍進を見せているのが、攻守の切り替える「速さ」を追求するサッカー。決勝では敗れたものの、今季UEFAチャンピオンズリーグで躍進を見せたクロップ監督率いるリヴァプールFCが、その象徴とも言えるだろう。

長谷川健太監督がFC東京に持ち込んだのは、リヴァプールFCが目指し、世界のトレンドとなっている「速さ」を追求したサッカーなのだ。