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ボールポゼッション率から見るJ1各チームの戦い方

2017 6/28 18:44Aki
soccer data
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各チームの傾向が現れ始めたJ1リーグ

2017年の明治安田生命J1リーグも、開幕から1ヶ月を過ぎるると様々な事がわかるようになってきた。
結果についてはそれぞれ期待通りのチーム、期待以上のチームはもちろん、現時点では期待に答えられていないチームも出てきている。そしてそれだけではなく試合数を重ねる事で、2017年の各チームの志向する戦い方やスタイルなどが見られる様になってきている。
今回はその中でも、各チームのボールポゼッション率を中心に、各チームの傾向を考察していく。 ご紹介する各データは、Jリーグ公認データStatsStadium(スタッツスタジアム)を使用している「Football LAB[フットボールラボ]」(http://www.football-lab.jp)より、2017年の明治安田生命J1リーグ第1節~第7節までの7試合のデータを使用している。

J1各チームのボールポゼッション率

1位 60.6% 浦和レッズ
2位 57.4% 川崎フロンターレ
3位 56.6% サンフレッチェ広島
4位 55.1% 鹿島アントラーズ
5位 53.2% ベガルタ仙台
6位 53.1% 柏レイソル
7位 52.2% ガンバ大阪
8位 51.0% FC東京
9位 50.4% 横浜F・マリノス
10位 49.9% 大宮アルディージャ
11位 47.6% 清水エスパルス
12位 47.0% セレッソ大阪
12位 47.0% ヴィッセル神戸
14位 44.6% 北海道コンサドーレ札幌
15位 44.5% サガン鳥栖
16位 44.1% ジュビロ磐田
17位 43.5% ヴァンフォーレ甲府
18位 40.2% アルビレックス新潟

出典: Football LAB

※4月19日現在 2017年明治安田生命J1リーグ第1節~第7節を対象 ボールポゼッション率とはその名の通り、1試合90分のうちボールを保持している時間の比率の事だ。
ボールポゼッション率のランキングは、強豪チームが上位にくる傾向がある。しかしボールポゼッション率12位のヴィッセル神戸が順位表では上位争いをしているように、決して結果を表すものではない。 しかし、各チームのスタイルがわかる要素として活用されている。

6割を越えるボールポゼッション率を誇る浦和レッズ

2017年明治安田生命J1リーグ第1節?第7節までで、最もボールポゼッション率が高かったのは、浦和レッズで6割を越える60.6%を記録している。ちなみに「Football LAB[フットボールラボ]」によると、2016年シーズンを通じてボールポゼッション率が最も高かったのは、浦和レッズだった。
その浦和レッズに続く川崎フロンターレ、サンフレッチェ広島、鹿島アントラーズの3チームは、2016年もそれぞれ2位、4位、6位だったので例年通りと言っても良いだろう。

一方でボールポゼッション率が低いのは、アルビレックス新潟、ヴァンフォーレ甲府、ジュビロ磐田などだ。この中でもヴァンフォーレ甲府は2016年もシーズンを通じてボールポゼッション率は最少の値を記録しているので、ボールを保持しない戦い方が徹底されているチームと言えるだろう。

ジュビロ磐田も傾向は同じで、2016年は14位とヴァンフォーレ甲府との間に3チームいたが、その内2チームは降格となったアビスパ福岡と名古屋グランパスだので、チームとしての傾向は変わっていない。
2016年までは、50%程度と平均的な数値を記録していたアルビレックス新潟だが、2017年は最少を記録している。

今シーズンに入って数値を低くしているのは、今シーズンから就任した三浦文丈監督がボールを保持しないサッカーを志向しているからだと思われる。

他のデータと合わせることでさらに見えてくる各チームのスタイル

チームとしてボールを持つ事を志向しているのか、ボールを持たない事を志向しているのか。大まかなスタイルがわかるボールポゼッション率だが、ここでその他のデータをあわせる事で、さらに各チームのスタイルがわかるようになる。
そのデータの1つが攻撃回数。ボールポゼッション率で同じように上位だった4チームもこの攻撃回数と合わせるとそれぞれの違いが現れてくる。
攻撃回数もボールポゼッション率同様に多ければ良い、少なければ悪いというものではない。攻撃回数とは単純に攻撃を行った回数の事だ。サッカーにおいて攻撃が始まるのは相手のボールを奪った時で、攻撃が終わるのはボールを失った時。ボールを奪う事ができなければ攻撃がはじまらないし、ボールを失う事がなければ1回の攻撃が終わる事はない。
つまりこの攻撃回数が多いという事は、言い換えればボールを失った回数も多いと言えるからだ。

ボールを保持するチームの中で異なる特徴を持つ鹿島アントラーズ

ポゼッション率で1位だった浦和レッズだが、1試合平均の攻撃回数は11位の126.1回に過ぎない。
また2位の川崎フロンターレも12位の125.4回となっている。これは両チームともにJ1全チームの平均以下の数字だ。そして3位だったサンフレッチェ広島はさらに少ない120.0回の17位となっている。
鹿島アントラーズはリーグ2位の135.7回だ。ボールを保持している時間はほぼかわらないものの、鹿島アントラーズはサンフレッチェ広島よりも1試合で15回以上、浦和レッズや川崎フロンターレよりも10回前後も多く攻撃している。
この鹿島アントラーズの攻撃回数は、ボールポゼッション率が高いチームの中で、ずば抜けて多い数字だ。 このデータから考えると鹿島アントラーズは、攻撃中にボールを失う回数が多いチームだとも言える。
しかし一方で、鹿島アントラーズはボールポゼッション率も高い数字を残している。

この2つのデータを合わせて考えると、鹿島アントラーズは、ボールを奪い返す時間や回数が多いチームだという事がわかる。
通常、ボールを失う可能性が高い攻撃というのは、素早く敵陣に攻め込む形だ。
つまり鹿島アントラーズは、ボールを持ってじっくり攻めるだけでなく、素早く敵陣に迫る攻撃も得意としているのだろう。
その一方で、攻撃回数の少ない浦和レッズなどは1回の攻撃で、じっくり時間をかけながら相手陣内に迫っていく事を得意としている事がわかる。
という事は、浦和レッズは1回の攻撃で時間をかけ、相手に守備を固められながらもそれを崩す事ができるチームだということだ。