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高卒新人ながらもチームの主力となったアルビレックス新潟、原輝綺

2017 6/28 18:44Aki
orange stadium
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クラブ史上初の高卒新人開幕スタメン

Jリーグでは新シーズンのチーム編成が決まるのが1月頃。これが決まると様々なメディアで予想スタメンが発表される事になる。アルビレックス新潟が2月25日に迎えたサンフレッチェ広島との開幕戦には、このチーム編成が決まった直後の段階ではどのメディアも予想できなかった選手がスターティングメンバーに名前を連ねた。

その選手とは原輝綺選手。この3月に市立船橋高校を卒業する高卒ルーキーだ。
高卒ルーキーのJ1開幕戦先発出場は2015年のベガルタ仙台、茂木駿佑選手以来で、アルビレックス新潟としてはクラブ史上初だ。 かつては横浜マリノス(当時)の松田直樹選手、横浜フリューゲルスの遠藤保仁選手、浦和レッズの小野伸二選手、名古屋グランパスの本田圭佑選手、鹿島アントラーズの内田篤人選手など後に日本代表の主力となった選手が揃っている。また近年ではセレッソ大阪の南野拓実選手などすでに海外クラブに移籍をした選手がほとんどだ。

原選手は、開幕戦から第7節まで全ての試合でスタメン出場を果たしている。またさらに第6節からは開幕戦でプレーしたボランチではなく、左サイドバックへとポジションを変えての先発を続けているという驚きの状態だ。
アルビレックス新潟は開幕からなかなか白星を挙げる事ができず苦しんでいたが、初勝利を挙げた第7節はその原選手のゴールが決勝点だった。

高校2年生までは全国的に無名だった原選手

久々の高卒新人のJ1開幕戦スタメンとなった原選手は、高校サッカーの名門市立船橋高校出身である。 2016年の9月にアルビレックス新潟への加入を発表していたので、2016年の高校サッカー選手権ではプロに加入が決まっている選手として紹介されており、またU-19日本代表の常連でもあった。

そんな原選手だが、高校2年生までは全国的には無名の選手だった。
市立船橋高校といえば、J2の湘南ベルマーレに加入し同じく開幕スタメンを勝ち取った杉岡大暉選手が1年生からすでに将来を嘱望されている存在として知られていたが、原選手を追いかけているスカウトは誰もいなかった。

しかし2人が高校2年生の夏に行われたインターハイでその状況は大きく変わる。
このインターハイで市立船橋高校は快進撃をみせ、決勝に進出を達成する。決勝はPK戦の末敗れ準優勝に終わるが、大会を通じ市立船橋高校の試合内容は素晴らしいものだった。
そしてこの大会で一躍評価を高めたのが、ボランチとしてプレーしていた原選手。 杉岡選手も最終ラインで素晴らしいプレーを見せていたのだが、それ以上に中盤でボールを奪い、攻撃につなげていく原選手のプレーは誰もが驚く新たな発見だった。

高校3年生では市船といえば原と言われる程の存在に

高校2年で一躍注目を集めることとなった原選手だが、その成長スピードは高校3年生となってからも止まることなく、Jリーグのスカウトの多くが注目する選手となっていく。
市立船橋高校ではセンターバックにポジションを移し杉岡選手とコンビを組むようになると、鉄壁の守備を誇り2016年のインターハイで優勝を達成する。
年末の高校サッカー選手権ではPKの末に2回戦で敗退してしまうが、京都サンガに加入し、開幕戦で途中出場を果たした岩崎悠人選手擁する京都橘戦、敗退となった前橋育英戦の2試合共に無失点に押さえている。

2016年10月に行われた2017年のFIFA U-20ワールドカップ出場をかけたAFC U-19選手権のメンバーから、杉岡選手は漏れることとなったが原選手だけが選出される事となった。
この大会で原選手が先発した試合は1試合のみだが、決勝までの全6試合中出場しなかったのは準々決勝の1試合のみとチームにとって重要な選手となった。 また途中出場の4試合では、試合をクローズするという難しい役割を担いながらもその役割を徹底し、チームの無失点優勝に貢献する。

さらに初戦では守備だけでなく、ダメ押し点も決めるという活躍を見せた。 このAFC U-19選手権の活躍により、スカウトだけでなくサッカーファンの間でも原選手の名前は知られるようになっていった。

いち早く目をつけたアルビレックス新潟スカウト陣

現在の高校年代のサッカーシーンではアンダーカテゴリーの日本代表の存在もあり、また高校年代のリーグ戦も盛んに行われている。 それにより、高校サッカーからプロ入りする選手は同じ市立船橋高校の杉岡選手の様に早いうちから注目を集めており、各クラブのスカウトも積極的に動いている。
また同じ高校サッカーの名門青森山田高校からジェフユナイテッド千葉に加入した高橋壱晟選手は、ジェフユナイテッド千葉がかなり早い段階でオファーを出した選手だ。京都サンガに加入した岩崎選手も同じだ。 近年では彼らも出場機会を考え、予算規模の大きいメジャークラブのオファーを待つ様な事をせずに決断するようになってきた。

そんな中、原選手は急激に成長するという少し特殊な形で注目を集めた選手だった。
原選手がアルビレックス新潟への加入を決めたのは、急激に伸び始めたタイミングを見逃さず、さらに大きく成長することをどこよりも早く見出したのがアルビレックス新潟のスカウトだったからだ。 原選手は、さらなる成長をみせていた3年次にはすでにアルビレックス新潟への加入を発表しているという一本釣りの様な形だった。

ルーキーとは思えないクオリティーを示し続けている18歳

開幕戦のスターティングメンバーを知らせるアルビレックス新潟公式ツイッターアカウントが、「ルーキーとは思えないクオリティーを示し続けている18歳が開幕のピッチに立ちます」と紹介した原選手は、早速リーグ戦5節のガンバ大阪戦を終えると通算出場時間がA契約締結条件の450分を超えた事で、A契約を締結することとなった。
それだけではなく、第7節の甲府戦ではプロ初ゴールが決勝点となり、アルビレックス新潟が今シーズン初勝利。この試合ではDAZNが発表するJ1第7節の「DAZN週間ベストプレイヤー」にも選出された。 Jリーグで今最も注目を集めているルーキーの1人と言えるだろう。

原選手は、運動量があり、強さもあり、ポジショニングも上手く、さらにユーティリティ性もある。
実際に、開幕戦ではボランチでスタートしながらも、終盤に退場者を出すと最終ラインでプレーし、6節からは左サイドバックとしてもプレーしている。
アルビレックス新潟で、このまま順調に成長を続ける事ができ、アルビレックス新潟を引っ張る存在になった時、東京オリンピックでの日本代表チームも好成績を残す事ができるかもしれない。