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貪欲にゴールを求めるストライカー、佐藤寿人選手

2017 5/17 09:55Aki
sato hisato
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J1リーグ通算得点数2位のゴールゲッターが誕生するまで

2017年に12年間に渡って所属したサンフレッチェ広島から名古屋グランパスへと移籍した佐藤寿人(さとうひさと)選手。12年連続2桁得点という前人未到の記録を持っており、J1リーグ通算得点記録も大久保嘉人(おおくぼよしと)選手に次ぐ2位と、まさにJリーグを代表するストライカーと言える佐藤寿人選手ですが、決して若くから突出した成績を残してきた選手ではありません。
佐藤寿人選手がプロ入りしたのは2000年でした。双子の兄である佐藤勇人(さとうゆうと)選手と共にジェフユナイテッド市原ユース(当時)からトップチームに昇格。ユース時代にはAFC U-17選手権1998に出場するもグループリーグで敗退となり1999U-17世界選手権の出場を逃し、2001FIFAワールドユース選手権には出場するもグループリーグで敗退し、谷間の世代と呼ばれていました。
クラブでも出場機会を得る事ができず、2002年には当時J2に降格したセレッソ大阪に移籍します。しかしここでは同年生まれの大久保嘉人選手がブレイクした事でやはり出場機会を得る事ができないままでした。しかしこのセレッソ大阪でチームメイトだった眞中靖夫(まなかやすお)選手が行っていた「自らの武器を磨くための準備を怠らない姿勢」に大きな感銘を受け自分の武器を磨く事を決意。これが後のJリーグを代表するストライカー佐藤寿人選手の誕生のきっかけとなります。

仙台で開花した才能

眞中靖夫選手に影響を受け、自らの武器として取り組んだのがスピードを活かした裏への抜け出しとニアへの飛び込みでした。
そのプレーを繰り返し練習した事で、ベガルタ仙台に移籍した1年目から30試合に出場し9得点と大ブレイクを果たします。チームはJ2に降格となりますが、ベガルタ仙台への完全移籍を決め2004年には20得点とJ2得点ランキング4位となるゴール数を量産しました。
そしてこのシーズンから、翌年に移籍したサンフレッチェ広島での2005年?2015年をあわせた12年間連続2桁得点というとんでもない記録を樹立。
さらにこの12年間の間に個人としては、FIFAクラブワールドカップ得点王(2012年)、日本年間最優秀選手賞(2012年)、JリーグMVP(2012年)、Jリーグ得点王(2012年)、Jリーグベストイレブン2回(2005年、2012年)、Jリーグフェアプレー個人賞3回(2007年、2012年、2013年)、J2得点王(2008年)、Jリーグ月間MVP(2015年7月)と多くのタイトルを獲得しています。
またチームとしても2012年、2013年、2015年と3回のJ1チャンピオン、2008年のJ2チャンピオン、を獲得するなどJリーグを代表する選手となったのです。

佐藤寿人選手が突き詰めたオフサイドラインを突破する基準

佐藤寿人選手の武器となった「スピードを活かした裏への飛び出し」このプレーを活かすために様々な工夫をしています。
このプレーで最も注意しないといけないのはオフサイドです。オフサイドラインギリギリから飛び出す事でチャンスは大きくなる、がしかしオフサイドにひっかかっては元も子もありません。このギリギリの場所を掴む為に佐藤寿人選手は様々なテクニックを駆使しています。
その代表的なものの1つは、右サイドで味方がボールをもっていて身体が右を向いている時は、オフサイドラインを把握するために相手選手以外のものを目印にしているという事。
もしかするとご存じない方もおられるかもしれませんが、サッカーの副審は試合中なんども上下動を繰り返しています。これは副審の重要な仕事の1つであるオフサイドをジャッジするためです。
副審はオフサイドを真横から見てジャッジするために守備側チームの最終ラインの動きに合わせて上下動を繰り返しています。という事は、相手選手を見ていなくても副審の場所を見ていればオフサイドラインを把握できるということなのです。
佐藤寿人選手は副審が視界に入る状態であればスピードダウンを招く事につながる動き、わざわざ首を振って相手ディフェンスの位置を確認すること、をほとんどしない。副審のポジションを見て判断しています。

豪快なシュートを決める秘訣

佐藤寿人選手のもう1つの強みは、遠い距離からでもキーパーの隙をつくような豪快なシュートで得点を決める事ができます。
このプレーも先程のオフサイドラインを把握している方法の応用編で、ボールを受ける時にゴールの位置を確認するという手順を飛ばしてシュートを放つ。ですからキーパーの隙をつく豪快なシュートを他のFWよりも決める事が多いのです。
ではどうやってゴールの位置を確認しているのかというと、スタンドや看板など周囲の景色を観察しているのです。
何度もプレーしているホームスタジアムはもちろん、年間1試合しかプレーすることの無いアウェイスタジアムでも、試合開始前のピッチでウォーミングアップを行う時に周囲の景色とゴールまでの距離、位置の関係をチェックします。
もちろんボールを止めてゴールの方向や距離を確認できる余裕がある時はしっかりとボールを止めて確認するという作業を怠ることはありませんが、相手のプレッシャーが激しく確認する時間を作れない時には、このピッチ内から見える景色を参考にゴールの位置・距離を把握し、チャンスであれば直接ゴールを狙うのです。

名古屋で新たな挑戦に挑む2017年

佐藤寿人選手は今年、慣れ親しんだサンフレッチェ広島を離れ名古屋グランパスに移籍することを決断しました。
サンフレッチェ広島では若手選手や新加入選手の台頭により出場機会を大きく減らしていましたが、佐藤寿人選手にとって多くの栄光を獲得した大切なクラブ。そしてそのクラブも佐藤寿人選手に引き続きサンフレッチェ広島でプレーできるよう契約延長のオファーも出していました。 しかし佐藤寿人選手は35歳にして新たな挑戦となる移籍を決断しました。
その要因となったのは、川崎フロンターレから名古屋グランパスへと指揮するクラブを変えた風間八宏監督の存在も大きかったでしょう。
佐藤寿人選手は成長に貪欲な選手です。1学年上の中村憲剛(なかむらけんご)選手、同じ1982年生まれの大久保嘉人選手や同世代の選手が川崎フロンターレで見せていたさらなる成長を目の当たりにして、佐藤寿人選手が自身の成長を求めたのは必然ともいえます。
佐藤寿人選手が名古屋グランパスでどういった進化を見せるのかに注目です。