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3年ぶりのJ1に挑むセレッソ大阪が目標を達成するために必要なこと

2017 8/17 16:20Aki
サッカー,ゴールネット,シュート
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J1昇格が至上命題だった2016年

3度目のJ2で2年目を迎えた2016シーズン。セレッソ大阪はこれ以上J2にとどまる事はクラブにとって大きなダメージとなってしまう可能性が高いということで大型補強を敢行。
山口蛍選手、染谷将太選手は移籍したもののそれ以外の昨シーズンの主力選手は残り、それに加えて、柿谷曜一朗選手、杉本健勇選手というJ1で4位となった2013シーズンの主力選手を復帰させ、さらには鹿島アントラーズから山村和也選手、FC東京から松田陸選手、ツエーゲン金沢から清原翔平選手を獲得するとJ2では飛び抜けた陣容を誇るチームを編成する。
しかし一方で監督には昨シーズン終盤に「あくまで今シーズン終了まで」としてスクランブル的に監督に就任することとなった大熊清氏が2016シーズンも継続して指揮を取る事を発表。
クラブはOBのファン・ソンホン氏やユン・ジョンファン氏などを中心にオファーを出していた様だが両者とも破談となったため、言ってみればスクランブル状態が継続する形となる。
もちろんクラブOB以外の監督を招聘するという選択肢もあり、その為の動きも行っていたが、最終的にクラブはその方法を選択しなかった。

苦しい戦いを続けながらもJ1昇格を決定

2016シーズンは、開幕4連勝、8試合連続負け無しと結果だけを見れば華々しいスタートを切るが、実際の試合内容はとてもチームのクオリティに合っているとは言えないものばかり。対戦相手が対策をねってくる様になると初黒星となった9節から14節まで1勝3分3敗と一気にペースダウンを見せる。
そしてこの頃から聞かれるようになったのは、対戦相手の選手や監督からの「個の能力は高いがチームとしては」というコメント。
このコメントは最終的にプレーオフ決勝まで聞かれたように、チームとして改善される事もなく、また夏頃からはサポーターからも大熊監督に厳しい声が聞かれるようになり、実際にチームも7/9の第22節以降は目標としていた首位はおろか、自動昇格圏内となる2位以内に一度も浮上する事はなかったが、大熊監督を継続。これはシーズン当初の大熊監督就任の経緯を考えると内容はどうであれ、よほど大きく成績を落とさない限りは当然のことだったかもしれない。
圧倒的な戦力を擁しながらも苦しい戦いを続けるチームは最終的に2015シーズンと同じ4位でシーズンを終えると、昨シーズン敗退したJ1昇格プレーオフ決勝でファジアーノ岡山に勝利しJ1昇格を達成する。

2017シーズンはユン・ジョンファン監督を招聘

3年ぶりとなるJ1で戦うこととなったセレッソ大阪は念願となるOB監督ユン・ジョンファン氏の招聘に成功。ユン・ジョンファン氏はセレッソ大阪のOBであるだけでなく、今ではすっかりJ1に定着したサガン鳥栖の監督として躍進を支えた人物。また2014年にシーズン途中で退任することとなったのはユン・ジョンファン監督率いるチームの成長が、クラブの規模を超えてしまうというクラブが想定していない好成績を残していたからで、監督としての実績は申し分ない人物。
クラブとしては最も望んでいた人物の招聘に成功したと言えるだろう。
また、補強に関してはそもそも昨シーズンの編成がJ1レベルの選手が揃っていた事もあり、ここ数年の様な派手さはないが、移籍が心配されたキム・ジンヒョン選手を始めとするプレーオフ決勝でプレーした全選手の残留に成功。
そして、サガン鳥栖時代にユン・ジョンファン監督の下で主力選手として活躍していた水沼宏太選手やKリーグナンバーワンセンターバックのマテイ・ヨニッチ選手、昨シーズンのJ2で最もインパクトを残したチームであるレノファ山口から福満隆貴選手とピンポイントでありながらも効果的な補強を行っており、陣容としては大きな心配は無いだろう。

ユン・ジョンファン監督はどのようなサッカーを見せるのか

そんな2017シーズンを迎えるセレッソ大阪に対して考えられる不安点は大きく2つ。
1つは昨シーズンの主力選手が全て残ったとはいえ、昨シーズンのチームに戦術的な積み上げがほとんど無かった事、そしてそれも含めてユン・ジョンファン監督がどのようなサッカーを見せるのかという部分ではないだろうか。
特にユン・ジョンファン監督が以前サガン鳥栖を率いていた時に見せていたサッカーはいわゆる韓国スタイルのサッカー。韓国代表が得意としており日本代表が苦手としていた、最終ラインから前線の選手へのロングボールを高さの無いサイドバックが対応しなければいけないように工夫して多用、そのこぼれ球を運動量を活かして2列目の選手が拾うというスタイルだった。
これが成功したのはサガン鳥栖には豊田陽平選手という日本屈指のエアバトラーがいたから。セレッソ大阪には当然豊田選手はいないし、彼のように高さがあり身体のぶつかり合いを厭わない選手もいない。そんな中で、昨シーズンにチームの武器はこれだというものを作る事ができなかったのだから、不安に感じる事も当然だろう。
しかし、ユン・ジョンファン監督はサガン鳥栖時代に最初から韓国スタイルにこだわったわけではないと語っており、柔軟な姿勢を持っている様子。少なくとも守備面の改善は期待されるので、まずはJ1残留、そして目標とする9位という姿勢で戦う事ができれば期待できるのではないだろうか。

クラブが目標を達成し続けるために必要なこと

セレッソ大阪にとってはそれ以上に大切な事は、クラブとして監督や選手などの現場だけを始めとするチームをサッカー以外の問題で引っ張らない事だろう。
例えば昨シーズンの大熊監督の継続は、J1昇格を本気で狙うならありえない決断だ。
クラブOBが監督に就任するというプランは美しく、クラブのブランドとしては大きな要素となり得るものだが、それはあくまで副次的な産物であるべき。
J1昇格のためにはOB監督の招聘に失敗したとしても、それ以外の選択肢の中から優れたチームを作り上げる事ができる人物を招聘すべきだった。
しかし、クラブの目論見によりそれは行わない事に。サッカーを中心に考えると、昨シーズンも最終的に自動昇格圏に入ることができなかったという現実は大きく、それは監督に責任があった事はあきらか。しかし、昨シーズン監督を務めた大熊清氏は、そもそも監督としてではなくGMとしてクラブに招かれた人物だから、大熊清氏はクラブに実際のサッカー以外の問題で引っ張られた被害者とも言える。
セレッソ大阪がサッカーチームとして目標を達成していくには、ここを改善する事。そしてあくまでサッカーを中心に、ユン・ジョンファン監督や選手をサポートしていく事ではないだろうか。