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ベティスで不遇の乾貴士がローン移籍したアラベスとは

2019 1/31 15:00橘ナオヤ
乾貴士,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

プレー機会を求め移籍を決断

アジアカップ2019を戦う日本代表の森保一監督は、中島翔哉の負傷離脱を受けて乾貴士を追加招集した。そのアラブ首長国連邦(UAE)の地で、移籍という大きな決断をした乾。今季から加入したレアル・ベティスでは十分な出場機会を得られていなかったためだ。1月24日、今シーズン終了までのレンタル移籍で、デポルティーボ・アラベスへと戦いの場を移した。

ワールドカップロシア大会では4試合で2ゴール。セネガル戦とベルギー戦であげた鮮烈なゴールによって、FIFAが選出する「ロシア・ワールドカップで台頭したスター5選手」にも選ばれた乾。SDエイバルで3シーズン主力として活躍したのちに、W杯前にベティスへの移籍を発表。W杯での活躍を手土産に、新天地でもそのまま活躍するかと期待された。

だが、キケ・セティエン監督のファーストチョイスから外れ、リーグ戦と国内、欧州のカップ戦を合わせて14試合の出場にとどまっていた。事態を打開すべく乾が選んだのが、アラベス移籍だった。

アラベスとはどんなクラブ?

デポルティーボ・アラベスは、バスク自治州の州都ビトリア=ガステイスに拠点を置くクラブ。ここ10年は2部、3部を主戦場としていたが、2016-17シーズンにプリメーラ(1部)に昇格。今シーズンがプリメーラ3シーズン目となる。

本拠地エスタディオ・デ ・ メンディソローサ(収容人数約19,500人)はエイバル(エスタディオ・ムニシパル・デ・イプルーア 5,250人)よりは大きいが、ベティスのホーム、ベニート・ビジャマリン(約52,000人)と比べると小さい。また、監督の基本戦術が違うので「同じ」とは言えないが、リーガの中では規模がともに小さく同じバスクに拠点を置くという共通点があるため、多少はエイバルに似た環境とも言える。

好調アラベスはサイドの主力が負傷、乾に白羽の矢が

11シーズンぶりにプリメーラ(1部リーグ)に昇格した16-17シーズン、アラベスは勝ち点55でリーグ9位と昇格組としては大健闘の成績を残した。それ以上に、コパ・デル・レイ(スペイン国王杯)ではクラブ史上2度目となる決勝進出を果たし、バルセロナに5-0と完敗を喫したもののサプライズを起こした。

今シーズンはクラブOBのアベラルドが指揮を執り、第21節終了時点でリーガ5位と躍進を見せている。クラブには、FWボルハ・バストンやFWジョナタン・カジェリ、ガーナ代表MFワカソ・ムバラク、スウェーデン代表ヨン・グイデッティらが所属。アベラルド監督は4-2-2を基本布陣としており、乾が入るとすれば中盤左サイド(LMF)が濃厚、次点でより前線のポジションとみるべきだろう。

LMFのレギュラーはバルサユース出身のMFホニー・ロドリゲスだったが、第18節に負傷。アタッカー陣にはカジェリ、バストン、グイディッティらタレントを擁するが、いずれもセンターフォワード系。左ウィングでのプレーを得意としていたイバイ・ゴメスをこの冬にビルバオに売却しており、アラベスはこのポジションの補強が急務だった。ホニー同様サイドからの攻めを得意とする乾は、このポジションでの活躍が期待される。

しかし、当然ながら乾にレギュラーが確約されたわけではない。負傷するまでホニーはリーグ戦全試合に出場しており、指揮官の信頼は厚い。移籍が決まった1月24日の時点で、乾はまだ日本代表とともにアラブ首長国連邦(UAE)にいるため、チームへの合流は遅れる。

また、森保監督はアジアカップを“総力戦“で戦うとしているが、乾をファーストチョイスとしては見ていない。ホニーの復帰までに代表、そしてクラブでアベラルド監督の信頼を掴む活躍が見せられなければ、再びベンチを温める日が戻ってくる恐れもある。

だが、プレーする喜びを求め、あえてこの決断を下した乾。「大好きなリーガエスパニョーラで3チーム目、新しいサッカーに触れて思いっきり楽しみ、また成長したいと思っています!」という言葉のように、またスペインの地で左サイドを切り裂く姿を見せてほしい。