サウジアラビア戦とは真逆の展開となったベトナム戦
AFCアジアカップUAE2019準々決勝、日本はベトナムに1-0で勝ち、準決勝進出を決めた。ボール保持率は日本の68.2%に対してベトナムは31.8%。3日前に行われた1回戦サウジアラビア戦とは真逆の展開となった。
ベトナムの布陣は5-4-1。グループステージ初戦、トルクメニスタン戦と同じ布陣だったが、守備のコンセプトは異なり最終ラインに5人、中盤に4人を並べる形。この布陣では前線が1人になるため、ボールを奪いに行くことや、相手の攻撃方向を限定するという部分では難しくなるが、自陣のスペースを消すという部分ではかなりの強度を発揮する。つまりベトナムは最初から日本にボールを持たせることを選択していた。
そんなベトナムに対して、中2日の日本は先発メンバーを入れ替えることも考えられたが、代わったのは出場停止の武藤から北川の1人のみ。森保監督は「変えないこと」を選択した。
「カウンターのカウンター」を狙ったが……
自陣のスペースを埋めるベトナムの5-4-1に対して、日本は立ち上がりからボールを保持するものの、効果的な攻撃をほとんど繰り出すことができなかった。
低い位置で人数をかけてブロックを作る相手に対して、パスワークだけで攻略するのは難しい。例えば何年もかけてチームをつくってきた川崎Fであれば、攻略できたであろう。しかし、代表チームで川崎Fのような精度を求めるのは無理な話である。
そうなると、必要となるのは選手の動き。相手選手を動かすことでできたスペースをチームで共有し、活用していくことが求められる。
しかし、この試合で日本はそれが全くできなかった。きっかけとなる相手選手を動かそうというプレーは試合の序盤から南野を中心に何度かは見られた。ただ、中2日でコンディション面での影響が大きかったのか、せっかくスペースをつくったのに、入っていく選手も少なく、攻めあぐねる場面が続いた。
そんな中でチャンスにつながりそうだったのが、攻守を切り替える場面である。具体的にいえば、日本がボールを奪われベトナムからカウンターを受けるが、それを日本が阻止し、こちらもカウンターを繰り出す「カウンターのカウンター」といった場面だったが、この状況を意図的に作り出すのは難しい。
その結果、日本はボールを持つが、攻めあぐねる状況で試合が進むこととなった。
そんな中24分、日本はCKから吉田が頭で合わせてゴールネットを揺らし、一度はゴールが認められたが、準々決勝から導入されたビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)によって取り消されてしまった。
しかし今度は57分、ペナルティエリア内に侵入した堂安が倒されプレーが一度はノーファウルとされるも、VARによってファウルに覆りPKを得た。これを堂安が決めて日本が先制し、そのまま逃げ切って準決勝進出を決めた。
大きなポイントとなったVAR
ロシアワールドカップで導入され、アジアカップでも今大会の準々決勝から運用が始まったVAR。
VARが活用されるのは重大事項のゴールとゴールにつながるプレー、PKとPKにつながるプレー、一発退場につながる行為、反則者の特定の4つに限定されており、いずれも試合結果に影響を与える可能性の高い場面である。
その結果、どうしても「VARが試合を決めた」となってしまうことが多い。
ただし、VARによる問題点もすでに指摘されている。
例えば取り消された吉田のヘディングシュートの場合である。これはヘディングシュートが腕に当たったとしてハンドリングの反則を取られた。
しかし、ハンドリングは単に手や腕にボールが当たった場合に反則となるわけではなく、そのポイントとなるのは「故意に手や腕でボールを扱った」かどうか。
この場面、吉田の腕は自然な場所にあり、腕をよける時間的な余裕がなかったため、「故意」とするには微妙であった。競技規則上はノーファウルとしてもよかった。
しかし、VARではゆっくりと映像が再生されるため、どうしても「故意」の反則に見えてしまいやすい。VARでは「当たったかどうか」という判定を正確に下すことができる。
しかし「故意かどうか」や、どのような影響を与えたかを判定するのは難しくなるのだ。
とはいえ、ロシアワールドカップのグループリーグでは99%を超える的確性だったし、Jリーグでも2019年から一部試合でVARが導入されることが決定している。今後もこの流れが続いていくだろう。
今後は審判団のさらなる向上も求められるが、VARにこのような特徴がある以上、プレーヤーにも対応が求められる。