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勝負にこだわったサッカー日本代表 アジアカップベスト8進出!

2019 1/22 11:47中山亮
サッカー日本代表
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Ⓒゲッティイメージズ

圧倒的なボール保持力を見せたサウジアラビア

1月21日にAFCアジアカップUAE2019決勝トーナメント1回戦の日本対サウジアラビアが行われ、日本代表は1-0で勝利し、準々決勝へ駒を進めた。この試合において、日本は開始5分にしてサウジアラビアの誇るボール保持力の前に、カウンター狙いを強いられる展開となった。

グループステージの試合でも、ボール保持にこだわるサッカーを見せていたサウジアラビア。コパ・アメリカ2016でチリ代表を優勝に導いたピッツィ監督率いるサウジアラビアは、チームとしてボールを持つ仕組みが整備されていた。

それに対して、日本は立ち上がりに前線の武藤と南野がプレッシングを仕掛けるが、全くボールを奪えなかった。 おそらく現時点では10回戦っても、10回ともサウジアラビアがボールを持つ展開になっただろう。サウジアラビアのボール保持と日本のボールを奪いに行くプレッシングには、チームとしてそれだけの差があった。ポゼッション率で日本が23.7%、サウジアラビアが76.3%となったのは決して偶然ではなかった。

サウジアラビアのボール保持を受け入れた日本

しかし、サッカーはボール保持率で勝敗が決まる競技ではない。 森保監督は広島時代からそうやって割り切ることができる監督だったからこそ、3度優勝という結果を残してきたのだ。

立ち上がりの日本はサウジアラビアのボール保持に対し、ボールホルダーへアプローチをかけ切れない場面が続いたが、4-4-2のプレッシング、もしくは南野を中盤のヘルプに入るようにし、中を閉めるブロックを形成。さらに相手の裏を狙う動きについては、マンツーマン気味に付いていくようにした。

ボールを奪った時は、高い位置を取るサウジアラビアSBの裏に武藤を走らせる形を徹底して行った。ここから南野、原口、堂安が飛び出してカウンターを狙う。 日本はカウンターでも、シュートまで持っていくことはできていなかったが、それでも高さという点では日本に強みがあったので、セットプレーを取ることができればいいという考えは持っていただろう。

すると前半20分、日本は狙い通りCKから富安が頭で合わせて先制した。早い時間帯に先制することができたのはさすがとも言えるし、ラッキーだったとも言える。日本にとっては本当に理想的な時間帯での先制点だった。サウジアラビアに先制点を奪われた時はもちろん、もし0-0のまま試合が進んでいたら、日本にとってはさらに苦しい展開となっていたはずだ。

試合を動かさない采配を見せた森保監督

サウジアラビアがボールを持ち、試合をコントロールされながらも先制することに成功した日本。 この段階でサウジアラビアは、内容は悪くはないのでこのまま続けていこうという状態だったのではないだろうか。

これに対して森保監督は基本的に動かなかった。もし、いくつかあったチャンスでサウジアラビアに同点に追いつかれていたならば、おそらく森保監督もボールを持とうとしたり、徹底してプレッシングを行ったり、試合を動かす采配を見せただろう。

だが、試合を動かすことで新たなリスクが生まれる可能性もある。リードしているのは日本で、サウジアラビアには欧州一流国のような絶対的なストライカーはいない。森保監督は試合を極力動かさず、状況を見て応急処置的な対応にとどめることを選択した。

森保監督が取った応急処置的な対応の一つが、原口を長友の外側にまで戻す5バック的守備だ。

日本のフォーメーションは基本的に4-2-3-1のままだったが、相手がサイド深くにボールを運んだ時に原口が長友の外側に下がり、相手の横幅を使った攻撃に対応する作戦をとった。原口の前には南野か武藤のどちらかが入り、サウジアラビアが押し込んできた時には5-4-1で守る形にした。

試合終盤にはサウジアラビアもFWの人数を増やしてきたが、日本も塩谷を投入することで対応。 リードを奪ってからの日本は試合を殺すことに専念し、1-0で逃げ切りに成功。ベスト8進出を決めた。

アジアのチーム相手に、ここまでボールを保持された試合は長らく記憶に無い。そんな中、エンターテイメント的には面白みにかける試合だったが、勝負に徹した森保監督の采配は見事だった。

一方で、アジアには日本以上のスピードで、世界のサッカーに近づこうと進化しているチームがあることも明らかになった。これは今の日本代表や森保監督の問題ではなく、日本サッカー界全体が受け止めなければいけないことだろう。