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グループステージで露呈した森保ジャパンの課題 “守備連携”と“ゲームメイカーの不在”

2019 1/18 11:45橘ナオヤ
武藤,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

グループステージ全勝も懸念点があらわに

2019年アジアカップのグループステージが終わった。日本は3戦全勝で決勝トーナメント進出を果たした。森保ジャパン初の国際大会だが、これまで絶対的な主力だった中島翔哉(ポルティモネンセ)と若手DF守田英正(川崎フロンターレ)が負傷により辞退。代わって乾貴士(ベティス)と塩谷司(アル・アイン)が加わった。

優勝候補の一角として無敗で突破したものの、その内容は万全とは程遠い。守備ではGKとディフェンス陣の意思疎通、サイドのケアの課題が浮き彫りとなった。

そして攻撃では主軸選手の離脱の影響が大きい。手応えもあるだけに、決勝トーナメントに向けて早急に懸念を解消してほしいところだ。

連携に不安を残す守備

3-2で勝利したトルクメニスタンとの初戦。1失点目はディフェンスリーダーの吉田麻也(サウサンプトン)が統率する守備陣とGK権田修一(サガン鳥栖)の間に連携不足が感じられ、ポジショニングが甘かった。

また、カウンターでゴール際まで迫られるシーンが多く、長友佑都(ガラタサライ)が攻撃に参加した際の左サイドのケアについて、長友と左CBの槙野智章(浦和レッズ)、そして両ボランチの意思疎通が不十分だった。

1-0で辛勝したオマーン戦でも、守備陣と権田の連携不足は改善されず、アタッキングサードで危険なプレーをさせてしまった。初戦でピンチを招いたサイドについては、オマーンが日本のサイドアタックを警戒し高めに選手を配置した影響で、長友、酒井宏樹(マルセイユ)とも攻め上がる場面は限られた半面、オマーンもサイドから危険な崩しはなかった。

オマーン戦から10人を入れ替えて臨んだウズベキスタン戦では、再三にわたり日本の左サイドから攻められた。失点シーンでは、左SBの佐々木翔(サンフレッチェ広島)が前方でプレーに絡んだ中でボールを奪われると、FWショムロドフにドリブルで切り込まれそのままネットを揺らされた。

決勝トーナメントでの戦いに向けて、サイドのケア、そしてディフェンスラインとGKの連携改善が急務だ。

中島の不在で南野、堂安の攻撃力に陰りが

攻撃面では、中島の不在が大きな痛手だ。南野、堂安、中島ともに前への推進力とシュートを打つ意識の高さが特徴だが、中島はそれに加えて周りの味方を生かす力、前線でのゲームメイク能力に長けている。

森保体制に入ってから生まれた得点の多くは中島が起点となり、狭い間でのパス交換や抜け出しによって得点に結び付いてきた。原口元気(ハノーファー)や乾もドリブルやテクニックに定評のある選手だが、南野や堂安のプレーを引き出すタイプではない。

中島の不在はここまでの3戦で随所に表われている。オマーン戦では前半だけで南野に4度の決定機が訪れたが、全てふいにしている。中島のようにゴールに向かって連携できる味方が近くにいなかったことで、南野が独力で突破しようとして機を逸してしまう、そんなシーンが続いた。

それは堂安や、スピードスターの伊東純也(柏レイソル)についても同様だ。前線にゲームメーカーを欠く現状では、ボランチの柴崎岳(ヘタフェ)から組み立てる試合作りも検討すべきかもしれない。

武藤、北川起用なら2トップが最善か

また大迫勇也(ケルン)のスタメン離脱も痛い。初戦では原口、長友からのアシストにより、わずか4分で2ゴールを叩き込む活躍を見せたが、シーズン中に負った怪我が悪化しオマーン戦、ウズベキスタン戦を欠場した。

その2試合でプレーした北川航也(清水エスパルス)と武藤嘉紀(ニューカッスル)は大迫とはプレースタイルが異なる。オマーン戦ではスタメンの北川、彼と交代して途中出場した武藤ともに3トップの頂点としては仕事を果たせなかった。

彼らはウズベキスタン戦のように2トップに近い形でプレーした方が生きる。両選手とも裏への飛び出しが得意な選手だが、武藤はより強いフィジカルで相手に当たり負けしない。ウズベキスタン戦でも高い打点のヘディングで同点弾を叩き込んだ。

一方の北川はそんな相棒と良い距離感でプレーすることが得意だ。所属する清水エスパルスでは、ドウグラスや鄭大世といったストライカーの相棒としてアシストを量産し、昨年は自身も2桁得点を記録。相棒のいるフォーメーションが彼には向いているようだ。

中島の合流が無い以上、チームの陣容はFWのファーストチョイスである大迫の回復次第だ。大迫のスタメン復帰が難しい場合は、ウズベキスタン戦のような2トップ型のフォーメーションで武藤、北川、そして南野の3人から起用するのも一案だ。

韓国との山は避けたが、くせ者ぞろいの決勝トーナメント

決勝トーナメントではラウンド16でサウジアラビアと対戦する。グループEでは北朝鮮相手にゴールを量産。格下相手とはいえ、高い攻撃力を示した。日本はサウジと過去13回の対戦で8勝4敗1分と勝ち越しているが、近年サウジも力を付けてきており、最後に対戦した2017年9月には0-1で敗れている。

韓国やUAE、カタールと別のブロックに入ったとはいえ、準々決勝ではヨルダン、そして準決勝ではイランと戦う可能性がある。どちらもグループステージを無失点で勝ち上がってきたチームである。

ヨルダンはうまく組織されたチームで、グループBではオーストラリアを完封している。イランは日本、韓国と並ぶ優勝候補で、ストライカーのアズムンがけん引する攻撃陣は要注意だ。

優勝を目指す日本の前にはくせ者ばかりがそろっている。次戦まで日本に残された時間はわずか3日。2011年以来の優勝を果たすため、森保ジャパンの真価が問われる。