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逆転勝ちできたポイントは「幅」 アジアカップ初戦、日本対トルクメニスタン

2019 1/10 11:09中山亮
サッカーボールⒸShutterstock.com
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中央のコンビネーションを封じられた日本

日本の先発メンバーは権田、酒井、吉田、槙野、長友、富安、柴崎、堂安、南野、原口、大迫の11人。布陣はいつもの4-2-3-1。守備的MFには遠藤が発熱で欠場となり富安。またこれまでは負傷でチームを離れた中島が入ることが多かった左SHには原口が入った。対してトルクメニスタンが取った布陣は5-4-1。

立ち上がりから日本がボールを持つ展開となるが、トルクメニスタンの5バックの前に思うようにシュートまでの形を作れず、逆にボールを奪われカウンターの形を作られる。

森保監督就任後、特徴的なのは大迫への縦パスをきっかけに2列目の3人が絡んできて、中央のコンビネーションで一気にDFラインを突破してしまう形だ。縦パスが入ってからのスピード感はかなりのものがある。

トルクメニスタンの5バックが狙ったのは、この中央のコンビネーションを封じること。

縦パスを受ける大迫に対し、トルクメニスタンの5バックの1人が厳しくアプローチをかけ、残りのDF4人+中盤4人が中央を閉める形でコンパクトな4-4のブロックを形成することで、スペースを奪ってきたのだ。

そしてここでボールを奪うと1トップが基点となり、そこにSHのスプリント力を生かしたカウンターを発動する作戦を取ってきたのだ。

失点の場面を振り返ると、トルクメニスタンの7番アマノフの素晴らしいミドルシュートだったが、決して偶然によるものではなく、カウンターで一気にボールを運ばれたことで日本のボールホルダーへのアプローチが遅れたからこそ起こったものだった。

左サイドで「幅」を作った日本

まさかの1点ビハインドで後半を迎えることになった日本だったが、56分、60分と後半の立ち上がり15分間で大迫が2得点を奪い、一気に逆転に成功。いずれも基点となったのは左サイドの原口だった。前半、てこずっていた日本が後半で一気に逆転に成功した理由は、原口を含めた左サイドのポジショニングが改善されたことにある。

前半の日本の攻撃は吉田や柴崎からの大迫への縦パスをきっかけに、堂安、原口の両SHはそのくさびの落としを受けようと、中央へ入るポジショニングを取っていた。しかし後半の原口は左サイドに大きく開くポジショニングへと修正。これによりトルクメニスタンの守備ブロックは横に広げられてしまうことになったのだ。

大きくサイドに開く原口に対して、トルクメニスタンのDFが付いていけば中央にスペースが生まれ、付いていかなれば突破力のある原口に自由が生まれるというという状態になったのである。

この典型的な形が2点目の場面。吉田から左サイドに開く原口への長いボールに対して、トルクメニスタン12番のWBアンナオラゾフが付いていくが、そうなると3バックの右に入る4番サパロフとの間にスペースができる。原口はこのスペースにヘディングでボールを落とすと、そこに入った長友が折り返す。そのボールを中央でフリーになった大迫がゴールに流し込んだのだ。

この場面はあまりにもあっさりと決まったので、トルクメニスタンの隙を突いた形に見えたかもしれないが、隙でもミスでも無く日本のポジショニングが改善されたことによって生まれたゴールだった。

この原口が基点となった2点があったことで生まれたのが堂安の3点目だ。前半とは異なり、トルクメニスタンDFはサイドに開く原口をケアするために横に開かざるを得なくなり、そうなると中央の圧縮度は弱まる。その結果、中央で時間とスペースが生まれた大迫、南野、堂安が絡むことができたのだ。この3点目のシーンでも原口が左サイドで開いたポジションを取っている。

この後、日本がペースを握ったまま試合は進むかと思われたが、79分に途中交代で入った北川の中盤でのボールロストから受けたカウンターで、トルクメニスタン17番アンナドゥルディエフを権田が倒してしまいPK。これを決められ3-2となり、トルクメニスタンが息を吹き返すが、日本はなんとか逃げ切りに成功。薄氷の逃げ切り勝ちという結果となった。

日本が逆転勝ちできたのは、左サイドのポジショニングが改善され、攻撃で「幅」を作ることができたからのもの。臨機応変に戦術を変えたことが勝利につながったといっていい試合だった。