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森保JAPAN初の引き分け 収穫と課題が見えてきたベネズエラ戦

2018 11/19 15:20中山亮
森保監督,日本代表,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

南米の新興国ベネズエラ

11月16日に行われたキリンチャレンジカップ2018、日本代表対ベネズエラ代表は1-1の引き分け。森保JAPAN初の引き分けは収穫と課題を感じさせる試合となった。

ベネズエラ代表は、ワールドカップ出場経験こそないものの昨年行われたU-20ワールドカップでは準優勝。この大会では決勝トーナメント1回戦で堂安、富安を擁するU-20日本代表とも対戦しており、延長戦の末にベネズエラが勝利している。

また代表選手のほとんどの選手が国外でプレーしており、中でもスペインリーグで活躍し、現在は武藤嘉紀が所属するニューカッスルで9番をつけるサロモン・ロンドン、セリエAトリノで中盤のレジスタとして活躍するトマス・リンコン、そして今季スペインからセリエAウディネーゼに移籍したスピードスター、ダルウィン・マチスの3選手が広く知られている。

相対する日本代表の先発メンバーは、前回のウルグアイ戦に続き4-2-3-1の布陣ながら、3人を入れ替えた。大迫、南野、中島、堂安、柴崎、遠藤、酒井宏樹、吉田に加え、左SBに長友から佐々木、CBに三浦から富安。GKに東口からこの試合が日本代表デビューとなるシュミット・ダニエルとなった。

ベネズエラのプレッシングと日本代表の解決策

開始早々に中島がシュートまで持っていったものの、立ち上がり試合のペースを握ったのはベネズエラ。

リンコンがアンカーに入り、左SHにマチス、センターにモレノとU-20ワールドカップ日本戦にも出場していたエレーラ、右SHにムリージョが入る4-1-4-1の布陣を敷き、センターのモレノとムリージョが柴崎と遠藤に対して高い位置からアプローチをかけ、日本のビルドアップを制限する。

このアプローチで奪い返したボールをスピードある両サイドアタッカーで一気にボールを運び、中央のロンドンでゴールを奪うのがベネズエラが狙う形だ。

前半11分には富安が何とか掻き出したもののロンドンに決定機を作られ、さらに13分には柴崎のパスをインターセプトし、ゴール前でのFKに結び付けられている。

このベネズエラの守備に対して日本が打開策を持てる様になったのは20分を過ぎたころから。

ベネズエラの守り方では、CBの吉田、富安、MFの柴崎、遠藤の4人に対し、ベネズエラは1トップのロンドン、MFのモレノとエレーラの計3人で対応している形になっているため、必ず誰か1人は空いている。

そこで柴崎と遠藤がモレノとエレーラを引きつけることで出来たリンコンの左右のスペースに中島、堂安、南野、大迫が入り込み、そこに吉田、富安、柴崎、遠藤の空いている選手から縦パスが入れられるようになった。MFの2人と吉田だけでなく富安もパス能力の高い選手だからこそできる形だ。

さらにこのビルドアップで存在感を発揮したのがGKのシュミット・ダニエル。

ベネズエラのプレッシングに対してCB、MFのところで詰まったとしてもシュミット・ダニエルに戻すと正確なキックで逆サイドのSBやさらにその奥のSHまでパスを届けることができる。決して目立つプレーではないが、シュミット・ダニエルのキックの精度の高さは森保JAPANの武器になり得ると感じさせた。

縦パスが入るようになると躍動するのが、森保JAPANの顔である、大迫、南野、中島、堂安のアタッカー陣。ゴールこそセットプレーからだったが、縦パスをきっかけに一気に加速する前線4人のアタッカーはこの試合でもベネズエラを悩ませていた。

これまでの日本代表はポゼッション志向が強く、ハリルホジッチ元監督が取り入れようと苦心していた縦に速いサッカーが、森保JAPANになり選手を入れ替えることで一気に近づいたと言えるだろう。

見え始めた森保JAPANの課題

しかし後半に入ると課題も見えてきた。

結果的には酒井宏樹がPKを与えてしまい同点に追いつかれることになるが、この時間帯は日本が前線4人の選手(中島、大迫、堂安、南野)を全て交代させた後。4人が交代すると、攻撃のスピードも守備の精度も一気に低下してしまうこととなった。

その中でも特に代わりがいないのが、3試合連続で先発を続けている大迫と南野のコンビ。この試合では杉本と北川、パナマ戦では川又と北川が交代で出場しているが、どちらの試合でも交代後に大きく精度を落としている。

現在の主力となっている前線4人はお互いのやりたいことが上手くハマっているが、レギュラー格の選手だけで大会を勝ち抜けないことはロシアワールドカップでも実感した部分である。

彼らの代わりになり得るような選手を探すか、もしくは現在のバックアッパーに彼ら同様の動きを落とし込むことができるか。これからの森保JAPANの課題だと言えるだろう。