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フランス対ベルギーのW杯準決勝から見えるものとは 日本が学ぶべき選手育成の在り方

2018 7/11 15:55Takuya Nagata
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Ⓒゲッティイメージズ

フランスが1-0逃げ切り

2018年ワールドカップロシア大会は7月10日、準決勝フランス対ベルギーの試合を行い、後半6分にCKからバルセロナDFサミュエル・ウムティティがヘディングで決めた1点を守り切り、フランスが3大会ぶりの決勝戦進出を決めた。

ベルギーは、決勝トーナメント1回戦で2点ビハインドからロスタイムに3点目を取り劇的な逆転で日本を下し波に乗ると、準々決勝で優勝候補の筆頭ブラジルを撃破。一方のフランスは、決勝トーナメント1回戦でアルゼンチンとの激しいシーソーゲームを制し、準々決勝ウルグアイ戦では、横綱相撲で2-0完封勝利していた。

前評判の高かったフランスとベルギーの共通項

今大会で前評判の高かったこの2カ国は、ともにグループ1位で突破。優勝候補を下して勝ち上がってきたことは言うまでもないが、ラウンド16で厳しい戦いをものにしたという共通点がある。

その他にも、両国を比較すると、非常に共通点が多いことが分かる。ヨーロッパで国境を接する隣国で、ベルギー南部はフランス語圏だ。首都のブリュッセルは、美しい街の景観や美食から小パリとも呼ばれる。

フランスは人口の9%が外国生まれで40%が祖父母に移民を持つ。一方のベルギーは住民の約13%が外国生まれで、約25%が移民系だといわれる。オープンなお国柄の両国の代表選手には、今大会も多くのアフリカ系選手が出場した。ベルギー代表のコーチ陣に元フランス代表FWティエリ・アンリがいたことも、両国の近い関係を示す例だ。

どちらの国にも身体的な素質の高いアフリカ系選手を、ヨーロッパの優れたシステムで育成する土壌がある。国内リーグはイングランド、ドイツ、スペイン等の欧州主要リーグと比較すると経済規模では及ばないが、選手の育成に力を入れ、周辺国のビッグクラブに送り出している。いわば、育成リーグという位置付けだ。

日本代表が初めてワールドカップに出場した1998年フランスW杯で優勝した際に注目されたのが、フランスのクレールフォンテーヌ国立サッカー養成所だ。日本のJFAアカデミーなども大いに手本にしている。

ベルギーは、今でこそ欧州サッカー界の盟主だが、長らくは無名だが将来性のある外国籍選手の登竜門といった存在だった。ベルギーの国内リーグは非常にユニークな運営方法がなされている。

1部のジュピラー・プロ・リーグは、16クラブがホーム・アウェー2回総当りの後、上位グループと下位グループに分かれて2回総当たりプレーオフを行う。実力や順位が近いチーム同士が戦うことで、拮抗した試合を増やすことが目的だ。欧州の小さなリーグのため、最後まで注目を集められるようにして行った工夫とも言える。

サッカーの経済システムが脆弱な日本

日本ではプロクラブが少ないこともあり、大半の選手はアマチュアクラブか学校のチームで育つ。それは教育の一環であり、プロサッカーのエコシステムである、選手を育てて売るという概念は皆無といってよい。

人として立派になるため、いい選手になるため、という精神的な動機で日本人選手は成長していく。それは非常に素晴らしいことだが、ビジネスとして成り立てば、育成にはさらに予算が充てられるようになり、好循環が促される。

この辺りは、地勢的な要素もある。フランスやベルギーでは、育てれば買ってくれるクラブが近隣地域に多くあるが、日本では国内で若手選手を売り買いすることはほとんどなく、売り込むには海を越えていく必要がある。

Jリーグでは、近年放送権料の増加で、クラブへの分配金が増したが、欧州と比べるとまだ桁が違う。移籍に関してもシーズンの切れ目が異なっており、リーグとして選手が欧州に移籍しづらい体質だ。選手を海外に出したくないJクラブ側と海外移籍を促したい日本協会の綱引きも延々と続いている。

オープンな育成システム確立を

孤立した地形はどうにもならないが、まずは国内に選手の育つ経済システムを確立することが急務だ。リーグの人気をメジャーにし、入場料やスポンサー収入等でクラブが潤うことも重要だ。その資金は、選手獲得や育成に充てることが出来る。現状では、日本のサッカー人気は代表チーム主導で、Jリーグはおまけという感がある。

外にオープンで育成システムを確立しているフランスとベルギーが躍進した2018年ロシアワールドカップ。日本が学ぶことは多くある。