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「先発+本田ら3人」に頼るしかなかった日本代表 4年後のW杯は23人で8強を

2018 7/9 14:55SPAIA編集部
ワールドカップ,ロシア大会,日本代表,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

前評判を覆す善戦も届かなかったベスト8

ベスト16に進出した日本代表は、強烈な攻撃力を持つベルギーに対して互角に渡りあった。

日本が狙ったのは左WBと守備的MFの背後のスペース。左WBはムニエ、守備的MFはデ・ブライネが入るポジションだが、彼ら2人は本来もう1つ前のポジションの選手。そのため守備に切り替わった時の反応がどうしても遅い。原口のゴールはムニエの背後、乾のゴールはデ・ブライネが戻らなかったことでできたスペースと、日本の2つのゴールはまさにそこを突いたものだった。

また前線の献身的な守備も見逃せない。グループリーグでは1試合平均4.3回だった敵陣でのタックル数がこの試合では倍近い7回を記録した。

一方で今大会グループリーグ最少ファウル数を記録した1試合平均9.3回の水準は維持し9回。今大会ではセットプレーからの得点が多いことを考えると、この少ないファウル数が2点先制の状況を作り出した要因の1つと言えるだろう。

しかし結果的には2-0から3失点。惜しくもベスト8には届かなかった。

3失点のきっかけとなったのは65分のベルギーの選手交代。カラスコとメルテンスに代えシャドリとフェライニを投入すると、攻撃時には中盤の底にヴィツェル、インサイドハーフの右にフェライニ、左にデ・ブライネ、前線はルカクとアザールが2トップに近い3-1-4-2に変化。日本はこれに対応できなかった。

1失点目は長友と昌子の間に立ったフェライニを起点にした攻撃から生まれたCKがきっかけ。 2失点目と3失点目は日本のCKから生まれたカウンター。3失点目があまりに強烈だったため2失点目はCKの流れからという印象しか無いかもしれないが、このベルギーのCKは日本のCKからのカウンターで与えたものだった。

日本に足りなかったもの

ベルギー戦で起こった相手の変化に対応できなかったことから始まった逆転劇。この展開は初戦のコロンビア戦でも同じ事が起こっていた。

コロンビア戦ではハイペースで試合に入った日本が先制、さらに相手の退場を誘発させたが、コロンビアは31分にクアドラードに代えてバリオスを投入。中盤のセンターの守備を固め、キンテーロを右SHへと移動。攻撃の形を変化させた。しかし日本はこれについていけず39分に同点ゴールを許している。

コロンビア戦では、結果的に日本はハーフタイムで戦い方を修正、さらに後半に大迫が追加点を決めることで事なきを得たのだが、ベルギー戦で変化があったのは後半の65分。日本には修正を行う時間(ハーフタイム)は無かった。

世界上位レベルの相手はプレーの途中でどんどん変化を行い、常にその変化に対応することが求められる。そのためには個々の判断とチームとしての引き出しの数が必要となるのだが、大会直前2カ月前の監督交代による準備期間の少なさからか、日本にはそれが無かった。

「14人」の日本代表

そしてもう1つ言えるのは、選手層。今大会での日本代表は世界の強豪を相手に十分に渡り合えるだけのプレーを見せたが、残念ながらその日本代表とはコロンビア戦、セネガル戦、ベルギー戦で先発した11人に交代で入る本田、山口、岡崎の3人を加えた「14人」でしかなかった。

それを象徴するのがベルギー戦。日本は同点に追いつかれた後、柴崎に代えて山口、原口に代えて本田と2人の交代を行った。つまり交代枠を1つ余らせている。岡崎が怪我を負ったことで、余らせたというよりも使えなかったのだ。

今回の日本代表は、W杯日本代表史上最多の6得点を決めた、大迫、香川、乾、柴崎による攻撃陣が対戦国を悩ませたことは間違いない。彼らが海外で揉まれてきた経験が大舞台で生きた。しかし、その実態は、彼ら個々の即興と連携によるものでしかなく、チームとして組み立てられたものではなかった。

チームとしての戦術や役割には乏しく、人が変わるとチームも変わってしまう。ポーランド戦ではそれが明らかになってしまった。

4年後は23人でベスト8を

これは「先発+3人」以外の選手が劣っていたという訳ではない。

ワールドカップまでの準備期間を振り返るとわかるように、この攻撃陣の中心となった香川、乾の2人は最後のテストマッチで起用されたセカンドチョイス。厳しい言い方をすると偶然上手くいっただけだ。

「先発+3人」とそれ以外の選手の違いは。すぐに息が合ったかどうかでしかなかった。

大会前には大きな逆風が吹く中、チームに一体感をもたせた西野監督のチームマネジメントは素晴らしいものだった。しかし急スピードで進化している世界のサッカーに追いつくには、それだけでは不十分であることも明らかになった。

西野監督の退任が決まり、次期監督の検討が始まっている。日本代表がベスト8の壁を破るには、個々の能力だけではなく、チームとしての完成度を高め、戦術の選択肢を増やせる指揮官が必要だ。

西野監督は帰国会見で「日本は8年周期でベスト16に挑んでいる。今後はそれではダメ。4年後はベスト8を狙えるチームにならなければならない。4年後の選手につなげるための成果は出せた」と語っている。次の監督のもと、4年後は23人で戦えるチームでベスト8の壁を突破してほしい。