名門浦和で最年少日本人プロに
日本時間の6月19日午後9時にキックオフを迎える、サッカーW杯の日本―コロンビア。日本代表のメンバーを思うとき、少しばかり思い入れを持ってしまう選手がいる。ドイツ・ブンデスリーガ1部のハノーバーに所属する原口元気。左右のサイドアタッカーとして期待される27歳のこの10年を考えると、大舞台での活躍を願わずにはいられない。
原口のプレーを初めて見たのは、彼が浦和レッズに所属していた2009年のキャンプだった。当時17歳にもかかわらずプロ契約をした直後で、浦和としては史上最年少プロだった。
ドリブルが得意で、テクニックにも優れている。小学生時代から周囲には「天才」と称される選手だった。Jリーグ初ゴールは2009年4月12日のアウエーの名古屋グランパス戦。前半43分、ゴール前のこぼれ球に反応し、右足で決めた。
17歳11カ月3日でのゴールは、クラブ史上最年少ゴールだったにもかかわらず、その時に原口がもらした一言が印象に残っている。
「長かった」
プロ契約が決まった後、主にスポーツ紙が大きく取り上げ、期待をあおった。だが、天才と言われても、中途半端や強引なプレーが目立っていた。思った以上に結果が出せず、不安やいらだちもあったのだろう。それが初ゴール後のコメントにつながったのだと思う。
しかしながら、2009年シーズンはJリーグでの得点はこの1点のみだった。原口が思った以上にプロの壁にぶち当たっている感じがした。
ジュニアユースの池田伸康コーチに話を聞いたことがある。「原口は子どものころから天才だった。ドリブルでフィールドプレーヤー全員を抜いていくんです」。そんな趣旨の話をしてくれたと記憶している。
子どものころから圧倒的な技術を持っていても、体力やスピードは年上の経験豊かな選手にかなわない時がある。成長過程においては必ず起こりうる場面なのだが、原口にとってはプロ1年目のシーズンでそう感じた。
J1のDFには得意のドリブルが思った以上に通用しなかった。スピードも間合いも見切られていた感じがした。ただ、それも20歳になった2011年シーズンになると乗り越えていた。Jリーグで9得点。名実共に名門の大黒柱に成長していた。