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W杯優勝候補が立て続けに滑り出し失敗 王者ドイツに土、王国ブラジルは追いつかれドロー

2018 6/18 14:11Takuya Nagata
トーマス・ミュラーらドイツ代表,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

ドイツがW杯でメキシコに初の敗戦

2018年ワールドカップロシア大会、グループFドイツ対メキシコ戦が6月17日行われ、前回大会優勝のドイツが0-1で敗れた。メキシコはW杯でのドイツ戦初勝利となった。

ドイツ車のようにがっしりし、堅実さに定評のあるドイツ代表だったが、試合開始から慎重になり石橋を叩いている間に、前半35分、メキシコのカウンターを受け、FWイルビング・ロサーノに先制を許してしまう。その後も、試合巧者のメキシコに、はぐらかされたドイツは、なかなか有効な攻撃が出来ない。逆に先制点のような鋭いカウンターを何度も受けた。

メキシコ代表は、2012年ロンドン五輪で優勝しており元々実力は十分。ただ、W杯でドイツ戦勝利数0というこれまでの対戦結果から硬くなるかと思われたが、全く物怖じしている様子はなかった。

途中交代は通常、追いかける側が手を打ったところで、逃げ切る側が対応に追われるという傾向があるが、メキシコは後半29分、身長183cmのラファエル・マルケス(39歳)を投入し、試合終盤の空中戦への対策を先回り。またW杯出場5回目となるマルケスの投入は、パワープレー対策だけではなく、一番厳しい時間帯突入の直前にメキシコのレジェンドを降臨させ、精神的な安定をもたらす意味もあった。

メキシコ代表のオソリオ監督はドイツのVfBシュトゥットガルトで選手としてプレーした経験がある。対戦相手のドイツを知り尽くしており、試合を読んだベンチワークが冴え渡った。メキシコの勝利を「波乱」や「奇跡」と呼んではいけない。メキシコは、勝つべくして勝ったのだ。 そんなメキシコを前に、試合終了間際に不要なファールでイエローカードを受けるドイツに前回王者の面影はなかった。

メキシコの試合巧者ぶりは日本の良き手本

体格で日本と大差のないメキシコの戦いぶりは、日本代表にも大いに参考になる。メキシコが見せた、近い間合いでプレッシャーを受けても慌てずに足の裏を多用する粘っこいボールコントロールや、格上との冷静な駆け引きは日本にはない。日本のサッカーは、一昔前に比べると技術的にだいぶ進歩しているが、いまだ発展途上。メキシコのプレーから学べることは多い。

ブラジルは、日本が敗れたスイスに勝ちきれず

ドイツの敗戦後には、W杯本大会に唯一出場し続けているサッカー王国ブラジルがスイスと対戦。前回ブラジル大会優勝という忘れ物を取りに来ているブラジルの思いは並々ならぬものがある。

ノラリクラリとグループリーグを突破し、決勝トーナメントにピークを持っていくのが常のブラジル。W杯直前の強化試合で日本が攻め崩せずに完敗したスイスに対し、度々ゴールを脅かし実力を見せつけ、前半20分にコウチーニョが先制。しかし後半5分にはCKからスイスに追いつかれ、その後ブラジルは攻め続けるも決め手を欠き1-1の引き分けに終わった。同じグループEでは、セルビアがコスタリカに1-0と勝利したため、ブラジルは暫定2位でスタートとなった。

今後のグループリーグの展開によっては、ドイツとブラジルが、決勝トーナメント一回戦で激突する可能性も出て来た。前回2014年W杯では、ブラジルが準決勝でドイツに1-7と大敗し、開催国の面目を失った因縁の関係でもある。

ワールドカップは恐ろしい。一夜にして優勝候補と目された2カ国が大事な1試合目の滑り出しに失敗した。慢心、油断、判断ミス、様々な要因があるが、一瞬、一度の誤りが窮地を招く。この遅れをいかに取り戻すのか、2国の次戦に注目が集まる。