インサイドハーフの役割
西野新体制になり今まで4-2-3-1や4-3-3が中心だったが、3-6-1を実戦で取り入れる可能性が出てきた。そこで考えられるのが攻撃のテコ入れだ。中盤から前線を厚くし、攻撃の枚数を増やすという大胆な戦術を打ち出してくることも予想される。
失点が増えても得点を増やすという勝ちにこだわった姿勢を取ろうとして、得点能力の高い選手を試合に出すだろう。顕著にそれが表れるポジションが、攻守両面の役割を担うインサイドハーフだ。
攻撃時にはリスクマネジメントをし、守備時にはインターセプト直後に一早く攻撃に転じチャンスを掴むのがインサイドハーフ。
西野監督になったことで、守備に定評のある選手より攻守のバランスの取れた選手、あるいは自分でフィニッシュまで持ち込める選手を起用すると考えられる。
5月30日のガーナ戦代表に招集されたMFは長谷部誠、本田圭佑、香川真司、山口蛍、原口元気、宇佐美貴史、柴崎岳、大島僚太、三竿健斗、井手口陽介、乾貴士の11人。(青山は故障により離脱が決定した為)戦術によっては長谷部を最終ラインに下げ、原口、乾、宇佐美をサイドやフォワードにあてる場合もある。
海外勢は自分でフィニッシュまで持って行くことができる。攻撃サッカーの展開となれば、力を存分に発揮するだろう。
しかし、引き分けに持ち込みたい場合やリードしている場面では、守備に定評あり、周りを見ることができる選手が必要だ。
様々な状況が起こりうるワールドカップ
まずスターティングメンバーという観点から見てみよう。もし「まずは守備をしっかりとしてから攻撃に移る」という場合、従来通りの4バックを適用するのがセオリー。その場合、インサイドハーフは長谷部、柴崎(香川)、井手口(山口)の4-3-3、もしくは長谷部、井手口、本田、宇佐美(原口)、乾(香川)の4-2-3-1を適用する可能性がある。
3バックにし3-6-1にした場合は、サイドの長友と酒井高徳(もしくは酒井宏樹)をハーフに引き上げ、長谷部・吉田・昌司(槙野)で最終ラインを作り、インサイドハーフを井手口(山口)・原口・乾・柴崎(宇佐美、香川)といったオプションも考えられる。
しかし試合状況に応じ、より攻撃的に、あるいはより守備的にしたいという変化は必ず訪れる。その際のメンバー起用についてデータを用いて検証してみたい。
負けている場合OR勝ちにいかなければいけない場合
フィニッシュまで持って行く「個」の能力が高い海外選手を相手取ると、日本代表の「個」の力では対抗できない場面が多くなる。そこで必要となるのが組織力だ。高度な連携を可能にするために、中盤の選手には「全体を見渡す力」、「周りを使う力」が求められる。
「負けている」もしくは「勝ちにいかなければならない」状況下で、「個」の力が通用しない場合や攻撃が単調になった時には大島の出番だ。大島の魅力は何と言っても「パスセンスの高さ」。
ここで日本代表に招集されたハーフのJリーガー(離脱した青山含む)のパスについて注目したい。
今シーズンのJリーグ、パス成功率を見ると三竿が73.23%、山口が84.1%に対して、大島は91.2%という驚異的な数字だ。また、前方へのパス割合が三竿の45.73%に対して29.29%と低いものの、成功率は76.67%と4本中3本以上成功させている。相手にとっては厄介な存在だ。
攻守においてバランスが重視なら山口を推す。しかし、負け戦で相手をかく乱したい際に最も使いたい選手が大島なのだ。
前方パス割合を見て分かる通り、大島は無理な仕掛けをしない。また今シーズンのシュート数はわずか7だ。日本代表の当落線上にいながら、あえて自分をアピールせず、ひたすら堅実なパスを供給し続ける献身的なプレーは武器になる。
勝ち戦でOR引き分けに持ち込みたい
勝ち戦で逃げ切りたい、もしくは引き分けに持ち込みたいという場合に使いたいインサイドハーフは、ディフェンス時のポジショニングが良く守備力に定評がある三竿だ。タックル数の多さがそれを物語っている。
上記は、青山を含めた招集メンバーの今シーズンタックル数である。1試合平均のタックル数が、大島の2.31回、山口の1.86回、青山の2.67回に対し、三竿は3.67回。これは常に競るポジション取りをし、チームの危機を救う働きをしていることを意味している。
「守備=経験がものを言う」という意見もあり、22歳の三竿は「時期尚早」と言われかねない。しかし、三竿のポジショニングには天性のものがあり、相手のチャンスの芽を刈り取る力は、日本にとって重要な存在になると私は思う。
海外でプレーする選手たちの方が派手で、知名度があるため「選ばれて当然」という感じだが、インサイドハーフには「バランス型の山口」「攻撃型且つ周りを生かす大島」「守備的な三竿」のような「いぶし銀の働きをする」選手も必要だ。
5月31日のW杯日本代表発表で誰が選ばれるにせよ、自身の力を最大限に発揮し、グループリーグを突破することを切に願う。