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長谷部誠を通じて学ぶ「キャプテンの役割」とは?

長谷部誠,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

W杯サッカー日本代表2大会連続でキャプテンを務める

サッカーW杯、ブラジル大会とロシア大会の2大会連続で日本代表キャプテンを務めた長谷部誠。常にチームを鼓舞し、ロシア大会ではチームを決勝トーナメントに導いた。2大会連続で代表チームのキャプテンを務めるのは異例のことだ。一時的に吉田麻也らがキャプテンマークを巻いたが、W杯本番では長谷部が務めることに。

長谷部の「キャプテンシー」が素晴らしいことは言うまでもない。しかしながら「キャプテンを務める」とは、どれほど困難なことなのだろう。株式会社アイディアヒューマンサポートサービス(東京都渋谷区)のスポーツメンタルトレーナー、田中誠忠(たなかのぶただ)さんに聞いてみた。

キャプテンやリーダーになりたがらない人が多い

「あの選手はキャプテンシーがある」と耳にすることがある。「キャプテンシー」は、非常に難解かつ高度なコミュニケーション能力が必要で重大な責任を伴うものであるというイメージが強い。では、「キャプテン」に世間はどんな印象を持っているのだろう。

「ジュニアに限らず、スポーツや企業でキャプテンやリーダーになりたがらないという話はよく聞きます」と田中さんは話す。それはなぜだろう?

どんな場面でも結果を求められ、出さないといけないのがキャプテンやリーダーだ。「メンバーに嫌われず、好かれるキャプテン(リーダー)になりたい」と考え、うまく立ち回りたいのが本音だろう。しかし、常に責任というプレッシャーを抱えているため、結果を出すために厳しくメンバーに接することもある。そこで生まれるのが「嫌われるのでは?」というような不安感情だ。

田中さんは、この現状について「子供の頃から、失敗すると文句を言われる父親・うまくいかなくて経営者に怒られる管理職・勝てなかったチームメンバーや指導者に文句を言われているキャプテン、などを見ているので保身的な考えになっている」と指摘した。つまりこれらが要因となり、誰もが嫌われることを避けようとするため、キャプテンやリーダーにはなりたがらないというわけだ。

「キャプテンの役割」とは?

改めてキャプテンとは、どんな役割を担うのだろうか?

「簡単に言えばチームを勝たせることが役割だ。そしてメンバーはリーダーを勝たせること、結果を出させることが役割」と田中さんは言う。

自分自身が中学2年生もしくは高校2年生時に、3年生のキャプテンが強いリーダーシップでまとめている姿を見ると「自分にはできないのでは?」と考えてしまう。キャプテンに向かないのは、自分自身の性格ではないかと考えるようになり、多くの人は「自分には向いていない」と興味さえ持たなくなる。

では、キャプテンとしての「あり方」を自分自身で構築するにはどうすればいいのだろう。例えば「人前では話をするのが苦手」という不安を抱えている場合、「苦手」を克服しようとするのではなく、今の自分に何ができるのかを考えてみる。そして肯定的な自己認識を周りの指導者らと共にゆっくりと育成し、自信をつけていくことだ。

さらに、田中さんはこう付け加えた。

「キャプテンに任命されてから、すぐにキャプテンのように振る舞う必要はない。チームを勝たせるために自分ができることは何か。先輩のように大きな声で引っ張らなくても、一人ずつとの会話であれば自分にもできるかもしれない。自分にできることから役割を果たす。これもキャプテンの役割」

「関係性をゴールにするのではなく、結果を出すために必要なコミュニケーションを追求し、結果軸で考えること。そして自分ができることやできないことを『自己分析』していくこと」

理想のキャプテン像を追うのではなく、自分自身の「あり方」を構築し、チームや組織を強くするために「自己分析」して結果を出すことが「キャプテンの役割」のようだ。

田中誠忠

Ⓒマンティー・チダ