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【これが答え】現代サッカーを解き明かす5つの戦術を徹底解説!

2018 1/4 10:05dai06
サッカー、黒板
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ポゼッションサッカーか縦に速いサッカーか

現代サッカーの代名詞としては、「ポゼッションサッカーであること」がしばしば重要視されてきた。
これは2008-2012シーズンのジョゼップ・グアルディオラ監督(以下、敬称略)」が率いた、FCバルセロナ(以下、バルセロナ)の隆盛に由来する。当時のバルセロナはグアルディオラの下で平均ポゼッション率70%超えの試合を連発し、常にゲームをコントロールした。
相手のプレッシングをトライアングル状のパスワークでいなし続け、徐々に相手ゴールへと迫る。危ういと見れば一旦下げ、綻びをつくることができればそれを少しずつ詰めていく。そうしていくつものタイトルを獲得した。近年のバルセロナの黄金時代だった。
このバルセロナのポゼッションサッカーがトレンドとなり、多くのクラブが模倣したのだった。

しかし、グアルディオラのバルセロナほどの完成度に至るクラブはなく、やがてはバルセロナ自身も「縦に速いサッカー」を目指すようになった。
もちろんパスワークを軽視するようになったというわけではないが、一瞬の隙を見てカウンターを決めるクラブも増えた。

コンテが吹き込んだ新たな風!3バックシステム

アントニオ・コンテ監督(以下、敬称略)は、2016-17シーズンにチェルシーFC(以下、チェルシー)の監督に就任した。前シーズンをどん底の結果で終えていたチェルシーは、ユヴェントスFCやイタリア代表を率いたコンテに改革の全権を託した。

当初のコンテは、4-2-3-1のシステムを踏襲しようとしたが、チェルシーは9月末の時点でリーグ7位に沈んでしまう。この結果を受けコンテは吹っ切れたのか、自身がこれまで愛用してきた3バックシステムを採用。基本3-4-3のシステムは、守備時にWBの両翼が下がり、5バックにもなる。
チェルシーのWBにはヴィクター・モーゼス選手やマルコス・アロンソ選手ら運動量の豊富な選手がおり、攻守で躍動した。このコンテの采配でチェルシーは光を取り戻し、リーグを制したのだった。

チェルシーの3バックはシーズン中から大きな話題となり、プレミアリーグでは2017年4月時点で17ものクラブが採用した。おそらく今後も、各クラブはそれぞれの3バックのあり方を模索していくことだろう。

さぼることが許されない、FWの守備貢献

「トータルフットボール」という言葉をご存知だろうか。この言葉はいわば「全員攻撃全員守備」とされる戦術で、1974年のワールドカップでオランダ代表が使用し大きな話題を呼んだ。
どの選手にも決まったポジションはなく、ボールに向かって一斉に突っ込み、奪った瞬間に一斉に前に走る。対する相手選手はどこにもボールを逃がすことも、正確にプレッシングをかけることもできず、押しつぶされるような負け方をしてしまっていた。

そこから時代は変わり、トータルフットボールを行うチームは存在しなくなった。とはいえ、「守備貢献」が軽視されているわけではない。

通常、FWの選手は点を決めさえすれば文句は言われにくい。むしろ点が決められなければお役御免となる。しかし、そこそこ点に絡んでいても、全く守備に参加しない場合もお役御免となる可能性がある。
つまり、どれだけ守備貢献ができるかというのも現代のFWの重要な能力なのだ。

本当の意味で守備貢献の有無を鑑みられないのは、クリスティアーノ・ロナウド選手ほどの影響力を持つ選手だけだ。それ以外の選手は相手選手のバックラインにプレスをかける、あるいはパスコースを切るような動きをしなくてはならない。

その点で言えば、アトレティコ・マドリード(以下、アトレティコ)に所属するアントワーヌ・グリーズマン選手(以下、敬称略)はこのタスクをよくこなす選手だろう。
アトレティコはディエゴ・シメオネ監督の下で「チョリスモ」と呼ばれるプレッシング戦術を掲げており、彼の下でプレーするのであれば、プレスをさぼってはならない。

グリーズマンは点を決められる上に、守備によく参加する。FWが守備に参加することで足元の技術に自信のないバックラインの選手はクリアを余儀なくされる。彼らのクリアは往々にして前線の選手よりも、思った場所に飛ぶことが少ない。結果的にボールをロストさせられる可能性も高まるというわけだ。

求められる選手のユーティリティー性と可変システム

ポゼッションサッカー、採用するシステムの変化、守備貢献などを踏まえると、「選手のユーティリティー性の高さ」も現代サッカーでは重要視されるようになっている。いつどこでどんなプレーをさせても、平均以上にこなせるかどうかが、選手の実力を測る物差しとなりつつある。

例えばDFの選手でも足元でのボールの扱いに長け、パスワークに参加できること。FWの選手でも守備に参加したり、少し後ろに下がってゲームメイクに参加できること。もっと言えば、GKまでもまでが足元の技術を問われる時代になっている。

またシステムを試合中に変化させる監督も増えている。すでに紹介したコンテの場合がそうであるが、その変化に選手がついていけるかどうかも重要だ。選手は本来のポジションではない位置でプレーし、自身が本来得意としないプレーを求められることもある。
「コンバート」という言葉があるように、本職を変更される選手も時折出てくるが、ここで思ってもみなかった才能が爆発することもある。それもまた現代サッカーの1つのあり方だろう。

カットインとSBのタレント枯渇

ポゼッションサッカーが流行る前は、「キック&ラッシュ」に代表される展開の早いサッカーが重用された。特に英国においては顕著だった。
サイドからの攻め上がりにおいても、そのままカットインするよりクロスを上げて、FWがヘディングシュートを叩き込むようなシーンが多かった。

しかし、ポゼッションサッカーや足元の技術に長ける選手が増えていくことで、ドリブルでカットインする選手が増えている。彼らはその動きに多大な時間とスタミナを消費するため、守備面に綻びが出てくる。これを埋めるのがSBおよびWBの選手だ。

SBは攻撃参加だけでなく、守備もしなければならない。攻め上がればピッチ中央の選手にパスを供給し、カットインしてくる相手選手には追走しなくてはならないわけだ。つまり、テクニック、スピード、スタミナの3拍子が揃っていなければ、現代サッカーが理想とするSBにはなることができない。

残念なことにこういった条件を揃えたSBはかなり少ない。枯渇していると言っても良いだろう。どのクラブも等しく重要視し獲得を狙うため、多額の資金を投じなければクラブに引き入れることができない。
2017年の夏にはマンチェスター・シティFCが、カイル・ウォーカー選手とメンディ選手獲得にそれぞれ70億円以上を要している。

彼らSBは直接点に関わりづらい選手ではあるものの、間違いなく陰の功労者として重要な仕事をこなしている。現代サッカーにおいて欠かせない存在だ。