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日本サッカー界待望の大型サイドバック 酒井宏樹

2017 4/12 20:20Aki
hiroki sakai
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サイドバック王国 日本

Jリーグから海外リーグへ移籍する選手が多くなった昨今。Jリーグ選手にとって、どうしてもフィジカル(肉体的・物理的)面がヨーロッパの選手に劣る部分がある。大半はテクニカルなアタッカータイプの選手だ。ワールドカップにも出場していない小柄な香川真司選手が、移籍後にセンセーショナルな活躍を見せた事もその影響かもしれない。
もう1つ多くの選手がプレーするポジションがある。それはサイドバックだ。 世界最高峰の大会であるチャンピオンズリーグの2010-2011シーズン準々決勝では、長友佑都選手(インテル・ミラノ) 対 内田篤人選手(シャルケ04)という日本人サイドバック対決が実現した。
特に世界的なサッカー強豪国でもなくヨーロッパでプレーする選手もそれほど多くない日本人選手が、この世界最高峰大会の準々決勝で、同ポジションで対戦するというのは大変珍しいことだ。
おそらく、日本人選手が持つアジリティの高さと献身性や平均テクニックの高さが、ヨーロッパの大きなクラブで求められているサイドバックの要素と一致したのだろう。海外に移籍する日本人ディフェンダーのほとんどが、サイドバック選手となった。

日本代表として狙われていたサイドバック

多くの素晴らしいサイドバックを輩出している日本サッカー界だが、韓国代表やオーストラリア代表など、ワールドカップやオリンピックの予選で対戦することになるアジア強豪チームからは、狙い所にもなっていた。
サイドバックに共通しているのは小柄な選手であるということ。世界中でも体形が小柄な日本人は、アジリティやスピード、すばしっこさを求めらるサイドバックに適しているのだ。
フィジカル面を全面に出して戦う事が強みの韓国代表やオーストラリア代表は、日本代表のサイドバックポジションに向けロングボールを入れ、そこに大型フォワードを走り込ませるという戦い方をあみだし多用してくるようになった。元々そのような戦い方を苦手としていた日本代表に対し、アジアのライバル国である韓国代表やオーストラリア代表がさらに強調するようになったのだ。
対して日本代表側は、サイズ感のあるサイドバックを追及するようになる。

日本代表にとって待望の大型サイドバック

そのタイミングで誕生したのが柏レイソルの下部組織出身、身長185cmのサイドバック酒井宏樹選手だった。 酒井宏樹選手は、今季からヴァンフォーレ甲府の監督を務める吉田達磨氏の指導のもと、工藤壮人選手(現サンフレッチェ広島)や武富孝介選手(柏レイソル)、指宿洋史選手(アルビレックス新潟)らと共に黄金世代と言われた柏レイソルユースでプレーした選手だ。
サイドバックはディフェンダーの中では攻撃が多く、クロスと関わる事が多いポジションだ。 クロスが上手い選手とは、相手のディフェンダーが横に広がっている時のスペースや、ディフェンスラインとゴールキーパーの間にできるスペースにボールを送り込む際の成功率が高いのだ。 酒井宏樹選手はユース時代から、クロスに独特のセンスを持っており、状況に応じてスペースにボールを送り込む事ができる選手なのだ。
そんなクロスという武器を持ちながらも、プロ入り直後は体格を活かしてセンターバックとして出場した経験もある。日本代表選手がライバル国から狙われるサイドバックだ。

大型サイドバックが欧州屈指の名門クラブに移籍

酒井宏樹選手はロンドンオリンピックに出場するタイミングで、柏レイソルからドイツのハノーファー96に移籍。1年目こそサッカーの違いに手こずり、あまり出場機会がなかったが2シーズン目からレギュラーポジションを獲得。そして2016年6月24日にフランスのオリンピック・マルセイユに移籍が決定する。
日本では、フランスリーグ・アンはそこまで注目されてなかったが、2011年以降はパリ・サンジェルマンが中東のオイルマネーを背景に、世界で最も裕福なクラブの1つとなり国内リーグでは圧倒的な強さを見せるシーズンが続いた。 現在は、オリンピック・マルセイユ自体が中位以下に終わる事も続いている事もあり、そこまで知名度が高くはない。元々はフランスリーグ・アンに置いて2番目の優勝回数を誇るフランス屈指の名門クラブだ。またフランスで唯一チャンピオンズリーグ(当時はチャンピオンズカップ)の優勝経験もある。
ヨーロッパの主要クラブがUEFAやFIFAに対抗するために作られたクラブ連合G-14の設立時のメンバーであることからもわかるように、かつてはヨーロッパを代表するクラブの1つでもあった。そんな欧州屈指の名門クラブへ移籍することとなった。

フランスの地で鍛えられ続ける毎日

このフランスの名門クラブへの移籍は、期待の大型サイドバック酒井宏樹選手にとってさらに大きな成長を促すものになるだろう。
フランスリーグ・アンは、パリ・サンジェルマンのように戦術共にヨーロッパトップレベルのクラブでもあり、アフリカ出身のほかにも北アフリカアラブ系やブラックアフリカ系の選手までも、他のヨーロッパリーグと比較しても多くの人種がプレーしている。
特にオリンピック・マルセイユの様な名門クラブ相手の場合は、自分が認められるチャンスだと認識し、さらにその傾向が高くなる。 酒井宏樹選手は移籍当初そんなフランスリーグ特有の環境に戸惑いかなり苦労するが、徐々に馴染んでくるとシーズン途中に交代したルディ・ガルシア監督のもとでレギュラーポジションを獲得する。
この環境は酒井宏樹選手にとって絶好の環境だった。またイタリアの監督経験も活かしたルディ・ガルシア監督の戦術はクオリティが高く、ポジショニングに甘さがあった酒井宏樹選手にとっては大きく影響した。