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2017年はどうなる? 高校生年代の女子サッカーに注目

2017 4/12 11:20芝田カズヤ
女子 サッカー
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高校生女子サッカーは力の偏りがある?

高校サッカーに限らず高校野球や、高校バレー、バスケなど、どの競技にも強豪校は存在し、前評判の高いチームが優勝するということも少なくありません。 高校女子サッカーは現在のところ、その傾向がより強いと言えるかもしれません。冬に行われる高校選手権はこれまでに25回行われています。同大会の過去の優勝チームを振り返ると優勝経験があるのは12チームありますが、2008年から2014年までの7大会を見ると、優勝したのは宮城県の常盤木学園高校と兵庫県の日ノ本学園の2校のみでした。
また全国大会の1つである女子サッカー競技のインターハイは2012年から行われています。これまでに5回しか行われていませんが、大会で優勝経験があるのは3チーム(2013年は雷雨の為両校優勝)、うち日ノ本学園が4回優勝しています。 これを偏りがあると受け取るかどうかは人によって異なるかもしれません。しかし全国大会のスコアを見ても大差がつく試合も少なくなく、現在のところ、圧倒的な強豪校の存在が他を寄せ付けていない感があります。
ちなみに男子の高校選手権では、過去10年の優勝校をみると実に8チームが初優勝を果たしていて女子とは対照的に力関係の変化も著しくあります。

新たな強豪チームは現れるのか?

では、女子高校サッカーの力関係はどう変わっていくでしょうか? もちろんすぐに勢力図がガラリと変わるということは無いかも知れませんが、少なくとも新たな勢力が現れてもおかしくないと言える状況になりつつあります。
まず、2017年の高校選手権の決勝を振り返ってみると、東京の十文字高校対大阪の大商学園というカードでした。両チームはこれまでにも全国大会に何度も出場していましたが、優勝経験はありません。 この決勝戦は今後女子高校サッカーの勢力が変わっていく可能性を予感させてくれました。
そもそも、先ほど紹介した常盤木学園や日ノ本学園が全国の舞台で優勝するようになったのも2000年代に入ってからです。1990年代までは別の強豪校が存在していました。それが、2002年に常盤木学園が選手権で初優勝を果たすとそこから何度も決勝に進出するようになり、今では最多5回の優勝、6回の準優勝を数えています。常盤木学園の初優勝をきっかけに女子高校サッカーの勢力が変わり始めたように、今回の初優勝を目指したチーム同士の決勝も今後の女子高校サッカーの変化を期待させてくれます。

近年女子の選手数が増えている!

女子高校サッカーにおいてはなぜ、力関係に偏りができてしまうのでしょうか? その背景の1つに選手数の少なさが考えられます。男子の高校生年代の選手が2015年で約17万人、一方の女子はすべての年代の合計でも約2万7000人とその差は明らかです。
この数字は年代べつでないため不明な部分がありますが、この2万7000人が小学生年代、中学生年代、高校年代、大学、社会人チーム、プロと別れるため、1つ1つのカテゴリーに所属する選手はかなり少なくなります。人数の少なさがあるので、チーム間での力の偏りが出やすいものと考えられます。
しかし、近年では、人数が少ないという問題が改善の傾向を示しつつあります。それは、中学、高校の女子サッカー部の部員の増加です。

なでしこの未来を担う中学生、高校生に目を向けると、中体連(日本中学校体育連盟)に加盟する全国の女子サッカー部員数は5970人(2015年度)。「世界一以前」である2010年度の3538人に比べ、約1.7倍に増えている。同様に、高体連でも2014年度に初めて1万人を突破した。

出典: サッカーキング

女子サッカー選手が増加しているという事実は、今後の女子高校サッカーのみならず、日本の女子サッカー全体に良い影響をあたえてくれるはずです。また、学校が新たに女子サッカー部を創部したり、学校のバックアップを受け強化しているチームも増えつつあります。 女子サッカー部員数の増加、チーム数の増加は日本女子サッカーの未来への期待をもたせてくれるものだと言えます。

高校年代の日本代表は世界3位

みなさんは女子サッカー高校生年代の日本代表の存在をご存知ですか?女子の代表にはフル代表であるなでしこジャパン、20歳以下の代表であるU-20日本代表、そして17歳以下のU-17日本代表があります(U-20、U-17は年齢とともに呼称が変わる)。
なでしこジャパンはオリンピックやワールドカップを、U-20は U-20ワールドカップ及びそのアジア予選を、U-17はU-17ワールドカップ及びそのアジア予選を主に戦います。このうちU-17日本代表は高校生の年代の選手で構成されます。2016年にU-17ワールドカップがヨルダンで開催されましたが、U-17日本代表はこの大会で準優勝となりました。
世界で準優勝するということだけでもその実力の凄さがわかるかと思います。この大会に高校サッカー部所属の選手が5名参加していました。この日本代表のメンバーの多くはなでしこリーグの下部組織所属の選手ですが、なでしこリーグ下部組織には所属していない高校サッカー部から代表入りしたということは快挙です。しかも、この5選手のうち、星槎国際高湘南の宮澤ひなた選手、藤枝順心の千葉玲海菜選手は予選のグループリーグから決勝まで全6試合に出場していて、数少ない高校サッカーの選手であってもその実力に差がないことを示しているのではないでしょうか。
このような高いレベルを経験した選手が再び高校サッカーの舞台で戦うことで周りの選手を含めてレベルアップにつながり、その先になでしこジャパンが見えてくるのかもしれません。

なでしこジャパンへの道

高校女子サッカーから、なでしこジャパンへの道程は決して遠いものではありません。なでしこジャパンは2016年のリオデジャネイロオリンピックではアジア予選で敗退し出場権を逃しましたが、2011年にワールドカップを制覇し、2012年のロンドンオリンピックでは銀メダルを獲得、2015年のワールドカップで準優勝など、世界のトップレベルで戦ってきました。
現在チームは佐々木則夫監督から高倉麻子監督へと変わり、選ばれる選手にも少しづつ若手選手が増えてきています。高倉監督に変わり代表チームに招集された選手の中には10代の選手もいます。従って高校サッカーでプレーしている選手にとっても決して代表チームは遠い存在ではないと言えます。むしろ、もし高校生のうちから結果を出し、なでしこジャパンに食い込んでくるような選手が出てくれば、今後の日本代表の展望はなお一層明るいものとなります。さらには3年後の2020年東京オリンピックでは今の高校生がちょうど20代になるころなので、代表チームに関わる可能性は大いにあります。ぜひともそのような選手の誕生を期待したいものです。
しかし、そのような選手が出てくるためには、さらなる女子高校サッカーの発展、とりまく環境の向上が必須です。
みなさんが女子サッカーに注目し試合を見ることは、女子サッカーを取り巻く環境に影響を与えます。ワールドカップ、オリンピックで活躍する選手もこの中から出てくるかもしれません。日本女子サッカーの未来のための1歩として、女子高校サッカーに注目し、応援していきませんか?