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大学の中でもトップクラス!関東大学サッカーリーグとは?

2017 8/17 16:20柴田カズヤ
サッカー 選手
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全国の高校生が集まる関東大学サッカーリーグ

関東地方における大学サッカーは2部構成の関東大学サッカーリーグ(以下関東リーグ)を頂点に1都7県のチームが参戦する各都県大学リーグが関東リーグの下のディビジョンとして位置づけられている。都県リーグについては2章で詳しく説明するので、ここではまず関東大学リーグについて紹介する。
関東リーグは日本のトップであるJ1リーグから数えて5部、6部相当になる。日本の各地域にも関東リーグのように地域の大学リーグがあるが、関東リーグは各地域リーグの中でも高いレベルを誇る。大学日本一を決める大会である全日本大学サッカー選手権大会においてそのほとんどの大会で優勝しているのが関東のチームであることからもその強さがわかる。
Jリーグの下部組織出身の選手や、高校サッカーの強豪校の選手、中にはユースの日本代表に選ばれたことのある選手など、全国各地から能力の高い高校生が関東の大学に集まりそのレベルは非常に高いと言える。試しに関東リーグに所属する選手を見てみると必ずどのチームにも「このチーム知ってる」というレベルのチームの出身者がいるはずだ。
中には高校時代にJリーグのクラブからオファーをもらいながら、さらに実力をつけてからプロになりたいと考え、あえてプロ入りを遅らせて大学に入学してくる選手もいる。 関東リーグに所属するチームはもちろん大学の部活のチームではあるのだが、先述の通りプロになるための力をつけるために選手が集まることもあって、特に関東1部のチームなどはプロ予備軍といっても過言ではなく、プロチームのように一種のブランドと化している部分もある。
このようなチームは施設も大変充実していて、人工芝のグラウンドはもちろんのこと、グラウンドを2面持っているチームも少なくない。また、指導者に関しても元プロの選手が指導を行っているチームもあり、さらには複数人のコーチやトレーナーもいるなど恵まれた環境を持っているチームもある。

関東を目指すチームが所属する都県リーグ

1章では関東リーグを紹介したが、関東地方における大学サッカーは関東リーグだけではない。1章でも少し触れたが、関東リーグの下に位置するリーグとして各都県で行われる大学リーグがある。
各都県リーグには東京都と山梨県の大学が参加する4部構成の東京都リーグ、同じく神奈川県の大学で構成される1部構成の神奈川県リーグ、千葉県の大学によって構成される2部構成の千葉県リーグ、埼玉県の大学で構成される2部構成の埼玉県リーグ、茨城県、栃木県、群馬県の大学から構成される1部構成の北関東リーグの計5つがある。
都県リーグのチームも関東リーグに参戦することができ、各チームはそれを目指して日々活動している。都県のチームが関東に上がることができるチャンスは年に1回で、都県リーグで優勝、もしくは上位に入ったチームだけが参加できる関東大学サッカー大会で、まず各リーグを勝ち抜き、最後に行われる昇格決定戦に勝利することができた2チームだけが関東へと昇格することができる。
年に1回だけのチャンスということに加え、各都県リーグで優勝(もしくは上位)しなければならないこと、そして最後の昇格決定戦に勝たなくてはいけないと昇格への壁は非常に高いといえる。
また、例えば2部リーグに所属するチームは関東リーグに昇格できるまで最短で2年だが、それを成し遂げることは簡単なことではない。都県リーグの選手たちはまさに4年間の大学生活をかけて関東リーグへ挑戦しようとしているのだ。

多くのプロ選手を輩出

話を関東リーグに戻す。サッカーダイジェストwebによると2016年シーズンのJ1に所属する大卒の選手を見ると圧倒的に関東リーグ出身の選手が多いそうだ。

3位 筑波大(関東1部2位) 13人
(中略)
1位タイ 流経大(関東1部8位) 16人
(中略)
1位タイ 明治大(関東1部1位) 16人
(中略)
地区ごとに見ると関東大学リーグ勢からの輩出が目立つ。

出典: サッカーダイジェストweb

また、近年の日本代表においても、関東リーグを経験した選手が選ばれるケースが多くなっている。代表的な例を挙げると、現在イタリアのインテルに所属する長友佑都選手は明治大学出身、ドイツのマインツに所属する武藤嘉紀選手は慶應義塾大学出身だ。またJリーグ所属の日本代表を見ても川崎フロンターレ所属の小林悠選手は拓殖大学出身だ。このように大学を経由してトップ選手へと登っていく選手が増えている。その中でも特に関東リーグはやはりレベルの高さから今後さらに多くの日本代表選手や海外で活躍する選手を輩出する可能性がある。
長友選手や武藤選手は高校時代も強豪チームに所属していたということもあるが、一方で高校時代は無名だった選手選手が大学で開花する場合もある。国士舘大学の松本孝平選手は神奈川県の藤沢清流高校を卒業後国士舘大学に入学するが、入学当初はサッカー部に所属せず、友人と作ったサッカーチームでプレーしていた。しかし、もっとレベルの高いチームを求めた結果途中入部という形でサッカー部に入部する。入部後は1番下のカテゴリーのチームからトップチームへと上り詰め2015年の関東リーグでは得点王を獲得するなどその能力が評価され2017年からはJリーグの名古屋グランパスに加入することが内定している。
これはかなり稀な例かもしれないが、高校時代には目立たなかった選手(しかも途中入部)に隠された能力を引き出す可能性があるのが大学リーグだと言え、その中でもレベルの高い関東リーグは選手にとっても魅力的なのかもしれない。

近年の関東大学リーグ

プロ予備軍と言える関東リーグ所属のチームだが、その強さはより集中していると言える。関東リーグに所属するチームを見てみるとその所属している部員数が100人を超えるチームも少なくない。中には日本体育大学のように300人を超える部員を抱えているチームもある。
人数を見てもわかるかと思うが、多くの高校生が関東リーグに所属しているチームに集まっている現状がある。これらのチームは人数だけでなく先ほども紹介した通り施設や元プロの指導者など環境面でも充実していることもあって、レベルの高い選手がトップチームより下のチームにもたくさんいて層が厚くなっている。
このようなことも関係しているのかもしれないが、関東リーグには毎年都県リーグから2チームが上がってきている中、1年で再び都県リーグに降格するチームが少なくない。2016年に35年ぶりに関東リーグに昇格した明治学院大学は残念ながら1年で東京都リーグへの降格が決定してしまった。高い高い壁を乗り越えて関東リーグにようやくたどり着いても関東リーグにはさらに高い壁があるのだ。 少し厳しい言い方になるが、「普通のチーム」が関東リーグに昇格するということはとてつもなく難しいことなのだ。もちろん昇格できる可能性は常にあるが、関東リーグ常連のチームというのはそれくらい強さが集中していると言える。

今後の展望は?

あくまでも個人的な展望になるが、関東リーグに所属できるような強豪のチームとそうでないチームとの差が広がる可能性があると考えられる。
どういうことかというと、大学から強化対象の部活に指定されるなどバックアップを受けることで強化を図れるチームと、特別な支援を持たない普通のチームとの格差がさらに広がるということだ。
現実的な話になるが、関東リーグはレベルの高い選手がいることに加えて、お金もかかる。例えばグラウンドなどは味の素フィールド西が丘のように大学のグラウンド以外で試合をすることもあるし、他県で試合がある場合は前泊することもあるなど、試合をするだけでもお金がかかる。サッカーのレベルに加えて安定した財源がなければ満足に戦うことができないのだ。
このようなことができるのは、大学からの援助がしっかりとしているチームなどに限られる可能性があり、差が広がるものと考えられるのだ。
一方で、強化を図るチームにおいては多くのプロ選手が輩出される可能性が大いにある。事実、毎年間違いなく関東リーグのチームからプロ選手は誕生している。
また、これまでサッカーに力を入れていなかったチームが大学から強化指定を受けるなどしてバックアップを受けることで一気に強豪チームになる可能性もある。例えば東京国際大学はわずか数年前の2009年は埼玉県リーグの2部所属だった。しかし、指導者を招聘したり、グラウンドを作ったり環境を整えることで一気に強豪チームへと変化していき、2017年は関東1部リーグで戦う。
大学入試の季節になると毎年のように定員割れの大学が出ているというニュースを目にする昨今において、学生を集めるために部活を強化するというケースはあるので、新勢力としてどんなチームが台頭してくるのか楽しみな部分はあるかと思う。
チーム間の格差は広がるかもしれないが、どのチームがそれに食らいついていくのか、そして、未来の日本代表になるような選手が誕生するのかという点は今後の関東リーグにおける1つの視点になるのではないだろうか?