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ラグビー日本代表、W杯開幕へ期待と不安 BK決定力向上も各ポジションで経験不足懸念

2019 9/2 17:00藤井一
ラグビー日本代表キャプテンのリーチマイケルⒸゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

前回経験者は10人、そのうちBKには4人

ラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会(9月20日~11月2日)に臨む日本代表メンバーが8月29日に発表された。ジェイミー・ジョセフのHCとしての集大成、選び抜かれた31人を前回経験者を中心に分析する。

WTB、FBで選ばれている20代半ばのフィニッシャー福岡堅樹、松島幸太朗は、この4年ですべてにおいて進化した。つまり日本代表はBKの決定力がアップしたのだ。

しかし、CTBには前回W杯経験者がいない。このところ成長著しい中村亮土が、ウィリアム・トゥポウ、ラファエレ ティモシーと組んで臨むことになるが、3人とも代表キャップ数は20に満たない。29歳の経験豊富なSOもできる立川理道はジェイミー・ジョセフHCから評価されなかったが、この3人のキャップ数を足しても立川の55に及ばない。経験不足を補う何かが3人には求められる。

4年前、どちらかといえば控え的な存在だったSOの田村優は30歳になった。彼も経験を積むことで着実に成長した。ワールドカップ本番でもしっかりとしたゲームメイクを期待したい。

視野が広く、創造性抜群のSO山沢拓也は立川同様、今年の宮崎合宿の段階で外されていたのが個人的には大変残念だが、山沢、立川については外野がとやかく言うことではないのだろう。SOは田村と、山沢とは同世代の松田力也に任せることになる。

SHは3人選ばれている。そのうちの一人が前回経験者の34歳、田中史朗だ。このところ茂野海人、流大の起用が多いので、W杯は3回目となる田中はプレーヤーとしてよりもアドバイザー的な役割としての選出と考えられる。茂野、流ともにいいセンスをしているが、4年前の田中以上になれるかは未知数である。

FWは18人、LOにはW杯4回目トンプソンルーク

FWには前回W杯経験者が6人いる。前回に続いてキャプテンを務めるリーチ マイケルは、30歳、股関節を痛めてしばらく試合から遠ざかっていたが、本人は「体力的にもこの4年間で進化した」と言っているのでその言葉を信じたい。現実的には4年前並みのパフォーマンスで大会期間中、けがなくプレーしてくれれば十分だ。これは31歳になったツイヘンドリックについても同様である。

FW第3列ではもう一人、29歳のアマナキ・レレイ・マフィが選ばれている。強くて激しいプレーは4年前もすごかったがその後スーパーラグビーのレベルズでも活躍し、さらにレベルアップした。昨年、ニュージーランドで暴行事件により逮捕され不安だったが、今春に無事代表再招集。今の日本において不可欠な選手といえる。

問題はLOで選ばれたトンプソン ルークだ。関西を愛し日本に帰化した関西弁を操るナイスガイ。4年前を最後に代表を引退していたのだが、急きょ招集されたのだ(2017年のアイルランド戦でもけが人続出で1試合だけ代表復帰)。

4年前、まさに鬼神を思わせるプレーぶりで南アフリカ撃破を始め、日本の躍進に大貢献した。今回、いきなり出場したPNCでも「さすが!」と思わせるプレーはしている。だが、いかにトレーニング方法が進化した現代といえども38歳になった今、4年前以上のプレーなど期待できない。

結局LOはこの4年で人材を育てられなかったということなのだ。LOで選出された他3人は、年齢はともかく身長がトンプソンより低く、経験値も少なく、大変不安なポジションである。

若干視点は変わるが同様のことがフロントローについても言える。前回経験者はPR稲垣啓太、HO堀江翔太の2人。29歳の左PR稲垣はこの4年で一段とパワーアップした。33歳の堀江についても円熟味が増し、前回並みかそれ以上のパフォーマンスは十分期待できるだろう。

もとよりフロントローは経験が特に重要なポジションである。そういう意味でPRは5人が選ばれているが、本来FW第3列の選手である中島イシレリを昨年からPRで起用し、結局W杯メンバーに選んだのが気がかりだ。

そしてHO3人のうちの一人は、代表キャップ0の北出卓也。フロントローについてはけが人が多く、やむを得ない部分はあるにしても、中島が少なくともワールドカップで真っ当なスクラムが組めるか?といったら疑問符以外つけられないし、キャップ0の選手を専門職中の専門職であるHOに一人選ばなければならなかったのは、やはり人材不足であると言わざるをえない。

南アフリカとの壮行試合で問われる真価

日本はPNCに優勝して期待が高まっていることもあり、W杯を前に世間は前景気を煽っている。それに水を差すつもりは毛頭ないが、こうしてみると特にFW前5人は不安がいっぱいだし、CTBもはっきり言って前回以上のメンバーとは言い難い。

目の色を変えて向かってくるアイルランド、スコットランドは当然このあたりを分析済みだろう。まずは、壮行試合である6日の南アフリカ戦で、日本の真価が問われる。