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PNC全勝優勝の日本代表、初のW杯ベスト8は期待できるのか アジア初のラグビーW杯開幕まであと1か月

2019 8/21 11:00藤井一
PNC日本対トンガ戦でトライを決める福岡堅樹Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

勝つことの意義と主将の思い

ラグビー日本代表がパシフィックネーションズカップ(PNC)でフィジー、トンガ、アメリカに3連勝して優勝した。ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ(HC)率いる日本代表への期待が俄然高まってきたが、ワールドカップ本番でも勝てるのだろうか。

あと1か月少々でワールドカップ(W杯)開幕という時期の試合は、もちろん負けるより勝つほうがいいに決まっている。勝つことでチームとしての一体感が育まれるからだ。それも今まで通算成績で負け越しているフィジー、アメリカに勝ったのだからこの点は素直に喜びたい。

また、PNC最終戦のアメリカ戦に勝った後、リーチマイケル主将が「変な自信は持たないほうがいい」と締めくくっていたのもよかった。これは4年前のW杯出場組全員の思いだろう。なぜならW杯ではどこの国もテストマッチよりワンランク、いやツーランク上のチームに仕上げてくるからだ。日本もW杯本番までにさらにチーム力を上げなければ、予選で戦うアイルランドやスコットランドには勝てないことを理解した上での発言に思えた。

PNC優勝を振り返る

まず、W杯本番とは相手も違うが気候も違う。日本で戦ったフィジー、トンガは暑い気候には慣れているから決して日本有利ではなかったはず、という見方もできるかもしれないが、フィジー選手が本来持っている独特のトリッキーな動きはあまり見られず、暑さによりパフォーマンスが低下していた可能性がある。

トンガについては、花園の暑さで前半から明らかに消耗していた。

フィジーで行われたPNC第3戦では昨年から好調を維持するアメリカに勝利した。アメリカは昨年初めてスコットランドを破り、PNCでもサモアに勝っている。そのアメリカを撃破したことは大きいが、日本代表は2トライを許し20失点、反則も多かった。開幕前のこのタイミングで格下のアメリカにここまで失点を許したことは問題だ。

W杯ではどんな戦いを

PNCの3戦、繰り返すが勝ったことには意味があるし、昨年から今年にかけて「大丈夫なのか?」という戦いぶりだった日本代表が、遅まきながら、ようやくW杯本番でも戦えそうなところまできたといえるだろう。

だだし、今大会の目標は申し上げるまでもなく善戦することではない。ベスト8進出だ。そのためにはロシア、サモアは勿論のこと格上の相手であるアイルランド、スコットランドの最低どちらかには勝たなければいけない。

その2国は元々FW重視のお国柄だ。今はBKにも決定力があるが、彼らが日本に勝つために手段を選ばないとしたらモールでくることが予想される。僅差の展開になったらなおさらだ。とするとフィジー戦でモールで簡単にトライされたことは不安材料。彼らのモールはフィジーより強固なので「W杯でもモールで1、2本やられるのはやむを得ない」としても、3本、4本となったら、その失点を上回る得点を日本に求めるのは難しい。

PNCで見せた日本のアタック力は?

日本は勝ち点制で争われる今回のPNCで、どの試合も4トライ以上奪ってボーナスポイント+1点を獲得し、アタック力を評価されたのだが、これはどの参加国もアイルランドやスコットランドほどディフェンスが整備されておらず、しかも暑さで本来のパフォーマンスではなかったからと考えるのが自然だ。

もちろん、日本のBKにいろいろなアタックのオプションが生まれ、連携が取れてきたのも事実なのだが、やはりW杯ではなかなかPNCのようにはいかないだろう。そうなるとやはりアイルランド、スコットランド打倒のためにはモールで簡単にトライされないディフェンスこそが最も重要ということになる。

SO田村優のゲームメイクでスペースをうまく攻め、WTB松島幸太朗、福岡堅樹のスピードで芸術的なトライをもってしても、アイルランド、スコットランドに本気のモールで泥臭くゴリゴリやられたら分が悪い。

PNC優勝は、W杯までの一過程にすぎない

PNC優勝で思い出すのは、その前身の大会ともいうべきフィジー、サモア、トンガ、アメリカ、カナダ、日本の1回戦総あたりで争われたパシフィックリム選手権に4勝1敗で優勝して臨んだ1999年のW杯だ。

この大会は予選でサモアと同組、直前のパシフィックリム選手権で日本は4トライを奪ってサモアに勝ったのだが、W杯ではノートライで完敗、結局予選全敗で敗退した。

当時の故平尾誠二日本代表監督がW杯前「パシフィックリム選手権の結果は参考にならない」と言っていたことも思い出す。ちなみに、この大会とパシフィックリム選手権はジェイミー・ジョセフ現日本代表HCがNo.8として出場した大会でもあり、パシフィックリム選手権のサモア戦では逆転のトライを決めている。

W杯に出場する31人は今月29日に発表される。20年前の予選全敗が繰り返されることはさすがにないと思うが、結局アイルランドにもスコットランドにも勝てなかったという結果は避けたい。残された時間はあとわずかだ。

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