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明治が大学ラグビーの覇権を握るのか 東日本大学セブンズから見る今シーズン

2019 4/18 11:00藤井一
イメージ写真,ⒸShutterstock.com
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平成最後の大会で明治が堂々の3連覇

東日本大学セブンズ大会はその名のとおり7人制だが、昨年、明治が2連覇。それも選手たちの高い意識が感じられる優勝を飾ったことで、15人制の全国大学選手権でも明治が帝京の連覇にストップをかけ優勝するのではないかと予想した。帝京の連覇を止めたのは天理だったが優勝はその天理を破った明治と、結果的に予想は半分的中。そのような視点から今年も、大会を振り返りつつ新年度の大学ラグビー界を占ってみたい。

大会は明治が3連覇した。今年1月、22年ぶりに大学選手権を制したことが後輩たちにいい影響を与えているのだろう。各選手が自信を持ってプレーしていた。田中澄憲監督も「一人一人の勝ちへの姿勢がとても強く見られたのがうれしかった」と語った。

最大の山場は準決勝の帝京戦だった。明治は2点リードで前半を折り返したものの後半で帝京に逆転を許し7-10とリードされたままロスタイムに突入。そこでボールを手にした明治は驚異の粘りを発揮する。何度もフェーズを重ね、ハンドリングエラーをすることもなく約2分ボールをつなぎ続け、見事左スミに逆転のトライを決めて12-10と競り勝ったのだ。

決勝の対戦相手は準決勝で慶応戦に圧勝(41-10)した東海。この大会で優勝するには4試合を全勝しなければならず、準決勝から決勝までのインターバルは準決勝第1試合だった東海が約1時間、第2試合の明治は40分ほどしかない。

しかし、準決勝後半に大幅リードした東海大は決勝に備えて、中心選手を次々と控え選手と入れ替え(7人制は試合中に5人まで戦術的な選手交代が可能)、スタミナの温存を図ることができた。

一方、明治は準決勝で、帝京とロスタイムを含め、約16分(7人制は7分ハーフ)、中心選手が全力でプレーし続けなければならなかった。当然、疲労の蓄積は明治のほうがあると考えられたわけだが、決勝の明治は立ち上がりこそ東海にあっさりトライを奪われたものの、山崎洋之(4年生)のトライなどで逆転してからは常に明治ペース。終盤、息切れしていたのはむしろ東海のほうだった。

結局、東海の得点は開始早々の1トライに終わり、明治が25-5で堂々の3連覇を達成した。

1年生・石田吉平の活躍も出色

明治でプレーが光ったのは常翔学園出身で入学したばかりの石田吉平。1年生ながら今大会4試合に出場し3トライを奪った。すでに7人制の日本代表に選ばれ、国際大会にも出場していて、7人制では先輩たちより高い次元のプレーを経験している。以前から痛めていた右肩の手術のため、今秋までそのプレーを観ることはできないが、来年の東京オリンピック出場の可能性も十分にある期待の18歳である。

その他の選手も高いレベルでまとまっており、明治は今年も大学選手権優勝候補の最右翼。心身の充実という点では現時点で№1と言い切って間違いない。

打倒明治の筆頭はやはり帝京か 他大学にも魅力はいっぱい

帝京は例年、この大会にそれほど意欲的に取り組んできたとは思えないのだが、今年はかなりまとまったいいチームだった。9年続いた大学日本一の座から滑り落ちたことで、今年は、いろいろな意味で始動が早いということなのかもしれない。準決勝は、明治の高い集中力の前に惜しくも逆転負けを喫したが、王座奪還へまずは悪くないシーズンのスタートを切ったと言えそうだ。

準優勝の東海も1年生留学生ワイサケ・バリワイ・ララトゥブアが随所で猛烈な突進を見せスタンドを沸かせるなど多くの伸び代が期待できる。

面白そうなのが大東文化だ。フィジカルの強さを活かして1回戦敗退チーム(12-26で日体大に負け)で争うコンソレーショントーナメントに優勝した。この大学はトンガ人留学生のイメージが強いがトンガではなくフィジー人留学生のサイモ二・ヴ二ランギ、高校時代をニュージーランドで過ごした日本人松田武蔵という2人の1年生が加わったことで、また一つ違った魅力のあるチームになった。彼らが秋以降、レギュラーの座をつかめるかどうかも含め、日下唯志新監督がどんな手腕を振るうのか楽しみである。

今大会出場校以外では、昨年、帝京を破るも大学の頂点には一歩及ばなかった天理も、関西の雄として新たな闘志で挑むシーズンだろう。また、古豪同志社も東日本大学セブンズの前日に行われた関西セブンズ大学の部で優勝し、15人制での復活を期している。

新年度の大学ラグビーは始まったばかり。ワールドカップはキャッチコピーどおり、一生に一度かもしれないが、その後に控える国内の大学ラグビーシーンでも一生に一度のパフォーマンスが見られるかもしれない。見どころが多そうな今年の大学ラグビー。ワールドカップ終了後もぜひラグビーから目を離さないでほしい。