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日本はラグビーW杯でベスト8に入れるのか?テストマッチから見えた現状

2018 12/2 11:00藤井一
ラグビー日本代表,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

いきなり露呈した甘いディフェンス、新聞の見出しは善戦だったが

今年の日本代表の試合が全て終わった。秋のテストマッチを含めた4戦は1勝3敗。ワールドカップ(W杯)本番まで1年を切った今、果たして強化は順調に進んでいるのだろうか。

まず、急造チームの世界選抜との対戦。日本は、前半だけでトライを4つも決められた。簡単に取られ過ぎだ。

日本が反撃できたのは、世界選抜のWTBトニ・プルが負傷退場し、変わって入ったパナソニックのFBである森谷圭介の背後をつくキックが有効だったからであり(森谷には失礼ながら)トニ・プルのままなら、28-31と追い上げることができず、大差のまま敗れたであろう。

ニュージーランド2軍に完敗

その翌週はニュージーランド戦。PGで3点を先制された後、日本は田村の正確なキックでニュージーランドにプレッシャーをかけ、FBバレットのキックをアニセサムエラがチャージし逆転トライを挙げた。

しかし、前半15分、ディフェンスのほころびを見逃さないニュージーランドのアタックで再逆転トライを許してからは点差が広がる一方。結局、計10トライを許した。

日本の5トライを評価する見方もあるが、前半21分以降、10点差以内に迫ることさえできない完敗で、最終スコアは31-69。

ニュージーランドは1週前に、W杯決勝会場の日産スタジアムでオーストラリアと戦ったばかりで、その時の先発メンバーは1人も出場していない。つまり、1年後の決勝戦のシミュレーションをし、格下の日本相手には若手の有望選手を試すという非常に有意義な2週間を日本で過ごしたのだ。

もとより、翌週からイングランド、アイルランドとハードなテストマッチが続くわけで、日本戦にベストメンバーなど使っている場合ではないというのが彼らの本音だろう。

イングランド戦は前半リードも後半0点

その後日本は遠征し、イングランドとテストマッチを戦った。イングランドとニュージーランドが死闘(16-15でニュージーランドの逆転勝ち)を繰り広げた翌週のことだ。

前日本代表HCであり現在はイングランドHCであるエディ・ジョーンズが、「日本はむずかしい相手だ」といくら選手たちを鼓舞しようとも、世界ランク1位のニュージーランド戦と同じモチベーションで日本戦に臨むのは無理というもの。

だから前半、日本は15-10とリードできたのだが、イングランドも8万人を超える地元トウィッケナムの観衆の前で、日本に敗れるわけにはいかない。正SOオーウェン・ファレルを投入した後半は、一方的に試合を支配し、日本は得点どころかチャンスさえもほとんど作れず、イングランドが35-15と逆転勝ちした。

エディは「ニュージーランド戦から日本戦まで、練習は3日だけ。来年のW杯で、初戦のトンガ戦から2戦目のアメリカ戦まで中3日しかないから」とすでに本番リハーサルに入っていることを強調している。

そういえばエディは日本代表HC時代にも同様のことを実践していた。イングランドにとって実に意義深いテストマッチシリーズだったのだ。

タナボタ出場国に大苦戦

遠征最後はワールドカップで日本と同じプールの開幕戦の相手でもある格下ロシア戦だ。

ロシアのフィジカル重視のシンプルな戦い方は見事で、主将リーチマイケルの獅子奮迅の活躍がなければ日本は負けていただろう。(32-27で勝利)

ロシアはルーマニア、スペインが代表資格のない選手を出場させてワールドカップ予選を戦ったために繰り上がったいわばタナボタの出場国。ロシアにとって日本との真剣勝負は貴重な経験で、その上、十分勝負になる感触と自信を得たのだから収穫はこの上もなく大きい試合だったはずだ。

日本は秋の4戦で何をつかんだのか

ジェイミー・ジョセフHCの日本代表総括会見についてはすでに報道されているが、改めて要約すると、以下のようになる。

「チームとして経験を積むことで戦術を理解し、成長していることが分かった。メンタルも強くなった。リーチマイケルの主将としての成長もすばらしい。アタックは手ごたえを得た。ワールドカップでの戦い方については、これから」

今秋対戦した3国は皆、前述したように、明確な何かを得たのに比べ、成果が抽象的でわかりにくい。加えて、2016年のHC就任以来の「選手層が薄い。フィットネスが足りない」を今回も繰り返して言っていた。

チームの根幹に関わる課題が解消されていないのなら、ここまでの2年以上のチーム強化はうまくいかなかったということにならないだろうか?

一方でエディが繰り返し言っているのは

「日本はジェイミーのもと、強くなっている」である。

社交辞令半分だろう、またそう感じているのも確かだろうが、日々の彼の言動から察するに、さらにこう付け加えたいのではないか。

「ただし、世界はもっと、それ以上に強く、進化している」

ネガティブキャンペーンを張るつもりは毛頭ない。しかし、日本が想像している以上に世界の進化は進んでいるのではないか。日本代表の現況を見るにつけ、悲願であるワールドカップベスト8進出は、実現がどんどん困難になってきているのではないかと思えてならない。