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狙うは短距離?長距離?減量騎手が活躍できるのはどの舞台か 東大HCが徹底分析

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若手ジョッキーに適用される「減量制度」

春は別れと出会いの季節。2月末で名ジョッキー・四位洋文騎手がステッキを置いた一方、3月1日、4人の新人騎手がデビューした。泉谷楓真騎手は先週末時点で早くも4勝(うち1勝は特別勝ち)、秋山稔樹騎手も初勝利を挙げるなど、フレッシュな勢いそのままに活躍を見せている。

新人騎手をはじめとする若手ジョッキーに適用されるのが「減量制度」。デビュー5年に満たない騎手、女性騎手は特別戦・ハンデ戦以外での斤量が軽くなる。今週のコラムは「減量騎手」をテーマに、恵まれた斤量が武器となる舞台を調査。馬券的に狙えるデータを探っていく(使用するデータは2015年3月21日〜2020年3月15日。なお「減量騎手」の成績は制度が適用される特別戦・ハンデ戦以外のレースのみとする)。



本当の狙いは☆マークと◇マーク

最初に減量騎手の全体成績を確認する。

減量騎手・過去5年成績ⒸSPAIA


勝利を積み重ねるごとに減量特典は小さくなっていくが、騎乗技術も比例して向上していくのだろう、男性騎手では1kg減(☆)の騎手成績が最も優秀だ。多くの騎手が自力で減量騎手を脱することができないため、力のある騎手だけが☆マークにたどりつけるという理由もある。回収率は単複ともに7割を超える数値を残しており、こちらもトップだった。

女性騎手は101勝を挙げたあとも永続的に2kg減(◇)の特典を得る。現在中央所属の騎手では藤田菜七子騎手が唯一の適用例だ。この2kg減は効果的で、減量がなかった際の成績【6-6-11-243】複勝率8.6%に比べおよそ3倍近くの馬が馬券になっている。さらに5番人気以内に限ると【5-4-3-20】複勝率37.5%、単勝回収率125%、複勝回収率92%だ。

◇マークで人気を集めている馬なら、コース・距離問わず単勝を買い続ければプラスになる。それほどまでにこの減量特典は反則的な効果を持っている点を頭に入れておこう。

なお、前走は減量騎手以外を起用していた場合の減量騎手成績は【791-837-946-15751】複勝率14.0%、単複回収率ともに69%と微妙な成績。減量騎手起用だけで買いとはならないので注意しておきたい。

減量騎手・過去5年の距離別成績ⒸSPAIA


次に距離別成績を確認。短距離と長距離に良績が集中している。

減量騎手が幅を利かせる条件としてイメージがあるのは1000m戦だが、実際に【113-121-115-1233】複勝率22.1%と全距離区分の中で一番の成績が残っている。ベタ買いするだけでも単勝回収率は92%と水準以上。1kg減(☆)に限れば132%まで上昇する。1000m戦の中でも狙いは新潟芝の直線ではなく、小倉・函館・札幌が舞台のダート戦だ。

ダート1000m×減量騎手は【94-105-95-933】複勝率24.0%、単勝回収率は102%とこちらもなんの工夫もなしにプラスになる。夏のローカルで大いに稼がせてもらいたい。

なぜか成績がぐっと落ち込んでいるのがマイル戦。【91-127-154-3129】複勝率10.6%、単複ともに50%台以下の回収率しかない。減量騎手から買うのは手控えたいところ。

長距離戦のうち施行回数が多い2400m戦は3kg減(▲)が狙い目。中穴での好走が回収率を支えており、5〜9番人気に限ると単勝回収率は267%という素晴らしい成績だ。ためらわず頭から買って高配当を狙いたい。2500m以上の芝でも買いで、特に1kg減(☆)の5番人気以内に限ると【8-6-7-18】複勝率53.8%、複勝回収率105%を記録している。

松永幹夫×減量騎手は買い!

減量騎手・過去5年の調教師別成績ⒸSPAIA


次に減量騎手起用で結果を残している調教師をピックアップした。まずは岩田望来騎手が所属する関西の名門・藤原英昭調教師。減量騎手の騎乗のうち半数以上が岩田望騎手へのものだが、馬券的な狙い目は岩田望騎手以外の減量騎手を配して臨むケースだ。該当馬は【8-9-5-29】複勝率43.1%を記録、単勝回収率も110%をマークしている。

松永幹夫調教師は満遍なく減量騎手を起用しており、人気馬の信頼度が極めて高い。1番人気は【12-5-1-2】で複勝率は驚異の90.0%。3番人気まで広げても【12-15-6-14】と依然7割を超える複勝率を記録している。人気を集めた馬に減量騎手で臨むレースは勝負気配と見て良いだろう。芝コース全体でも単勝回収率163%を誇っている。

高野友和調教師は川又賢治騎手とのコンビが好走パターン。該当馬は【6-4-2-19】複勝率38.7%、単勝回収率245%・複勝回収率124%と群を抜いている。矢作芳人調教師は自厩舎所属の坂井瑠星騎手が減量騎手時代に勝ちまくっており、勝利数が伸びていた。

こちらも藤原英昭調教師同様、坂井騎手以外に限定すると単勝回収率183%、複勝回収率103%とどちらもプラスだ。中内田充正調教師も単勝回収率119%と減量騎手で買える。

減量騎手・過去5年の買えるデータⒸSPAIA


最後に減量騎手の成績全体を概観し、成績が良かった条件を挙げる。

前述した通り短距離で真価を発揮する減量騎手だが、前走逃げた馬に限定すると馬券的な妙味が増す。単勝回収率は117%とベタ買いプラスで、5番人気以下に限ると140%まで上昇。該当すれば無条件で買いたい。

好走率、回収率ともに優秀なのは新馬で人気を集めた場合。4割を超える複勝率も全体成績と比較すれば十分優秀だが、回収率も単勝94%・複勝87%と及第点。芝に限定すると複勝率は46.1%になり、単勝回収率は114%と大台に乗る。

種牡馬別ではオルフェーヴル産駒に注目。こちらも芝の人気馬が走っており、同じく5番人気以内に限ると【18-8-4-48】複勝率38.5%と4割に迫る。単勝回収率も128%だ。

馬主では「メイショウ」でおなじみ松本好雄オーナーが馬券的に狙える。先日、泉谷楓真騎手に初勝利をプレゼントしたメイショウヒバリも氏の所有馬だった。複勝率は2割に満たないものの回収率が優秀で、ダートに限ると単勝回収率126%を記録。意図を持った騎手起用に期待が高まる。

過去5年の減量騎手成績