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【AJCC&東海S】ブラストワンピースは再びトップ戦線へ 今年の東海Sのレベルは低かった?

2020 1/27 10:49勝木淳
2020年アメリカジョッキークラブカップインフォグラフィックⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

ブラストワンピースが復活のV

冬の中山最終週はGⅡアメリカジョッキークラブカップ(AJCC)。暖冬のあおりを受け、例年以上に雨が多かった昨暮れから新春の中山競馬場。休眠期の野芝に洋芝をオーバーシードした馬場は雨で緩むとさらに時計を要する傾向がある。この最終週も明らかに外が伸びる上がりの時計がかかるタフな馬場だった。

そんな馬場を苦にしなかったのが1番人気のブラストワンピース。3歳時は稍重の有馬記念を勝ち、洋芝の札幌記念を快勝した現役屈指のパワー型。高速馬場では予想外の大敗を喫するあたりもこの馬の個性の表現。

であれば、この日の馬場はブラストワンピースに絶好の状態。問題は馬の状態だった。凱旋門賞大敗以来の実戦とあってそのダメージは抜けているのか?海外遠征後不振に陥る馬も多く、どうしても疑いたくなるもの。最終的な単勝オッズは1番人気ながら3.0倍。GⅠ馬に優しい斤量57キロ、荒れ馬場得意なブラストワンピースでもかなり疑われた。

目を疑ったのはその戦法だった。押し出されたスティッフェリオの流れは1000m通過1分2秒4の緩いペース。そんな中、ブラストワンピースは4番手先行というイメージとは異なる積極策に出る。騎乗3戦目の川田将雅騎手が大胆な変身を馬に求めた。流れを考えればこれがハマった。マイネルフロストが3角でマクリに行ったこともスタミナ型のブラストワンピースにはあと押しとなった。

この馬場で持久力戦となれば、敵うものはいなかった。中団が動く競馬よりも、自ら潰しに行くような強引な戦法こそがブラストワンピースの個性を生かせる競馬。以前は高速馬場でもろさを見せていたが、この戦法であれば条件を問わずに走るようになれるのではなかろうか。

2着ステイフーリッシュはローカル2000m、荒れ気味の馬場が好走条件で、クリストフ・ルメール騎手の馬場を読んだコース取りに導かれて好走した。条件次第の馬だが、当てはまる条件で評価を下げなければ、馬券に貢献してくれるだろう。

3着ラストドラフトはもったいなかった。遅い流れを中団後ろのインと不利な状況ながら、最後はコース巧者のミッキースワローをかわして3着。勝負圏内から外れたのは展開が向かなかったからであり、こちらも昨年とはイメージを変えなければならないだろう。

2020年アメリカジョッキークラブカップを制したブラストワンピースⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

予想陣では東大ホースメンクラブが厳冬期に強い5番人気ステイフーリッシュを評価し、○◎△で見事に的中した。

ダート戦線に新風!エアアルマス、GⅠに王手

中京ではなく京都で施行された東海ステークスはGⅠ馬インティの始動戦として注目を集めた。同馬とみやこステークスで乱ペースをつくってしまったスマハマとの後先、展開がカギを握ると考えられていたが、いざレースになるとインティはスタート直後から一切行く気を見せずに控える戦法。脚質転換を図ったのだ。そうなればスマハマのマイペース。時計が出る重馬場のダート1800m重賞としては遅い1000m通過1分1秒7。

インティは中団馬群の前に控え、代わって2、3番手の外にいたのがエアアルマス。4角で早々にスマハマに競りかけ、それを直線で一気に突き放した。

惜しかったのはヴェンジェンス。以前は1400m戦中心にそれも外枠と好走条件に注文がつくタイプだったが、昨秋復帰後からそれらを一新する走りを続けている。この日もインティをマークし、同馬に合わせて動いたことで先に動いたエアアルマスを逃したが、インティにはきっちり先着、エアアルマスにも最後はかなり詰め寄っていた。かつてのイメージは捨て、新たに評価のし直しが必要だろう。もともとはワンターンの競馬に強かった馬だけにフェブラリーS出走ならば面白い存在だ。

3着インティは評価が難しくなった。昨年は中京で行われたこのレースとGⅠを連勝、チャンピオンズカップも3着と左回りでパフォーマンスを上げる馬なので、この3着で無理に評価を落とすのは禁物かもしれないが、スピードを生かしてこその馬だけに控えて差しに回って味があるかどうかは疑問符がつく。次戦がGⅠであれば、再度の作戦変更があるかどうか注視しておきたい。

しかしながら勝ち時計は重馬場で1分50秒2。前日の2勝クラス特別・蹴上特別が9頭立てでスローペースになり、勝ち時計は1分51秒1とその差は0.9秒差にとどまった。インティやスマハマ、ヴェンジェンスを筆頭に持ち時計を下回る記録はペースが緩かったことを考えてもパフォーマンスとしては不満が残る内容だけにフェブラリーSに直結するか否かは疑わしい。

2020年アメリカジョッキークラブカップインフォグラフィック

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて「築地と競馬と」でグランプリ受賞。中山競馬場のパドックに出没。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌「優駿」にて記事を執筆。