「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

【日経新春杯】下剋上は馬場適性にあり レース結果から明瞭になった適性とは

2020 1/20 11:20勝木淳
2020年日経新春杯の結果インフォグラフィックⒸSPAIA
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸSPAIA

明暗くっきりの馬場適性

先手を奪うエーティーラッセンとハナから番手を狙ったロードヴァンドールの関係は相思相愛のごとくすんなり収まり、内枠レッドレオン、行けないサイモンラムセスも2頭の関係性を壊すような素振りはない。

実績馬のなかでもっとも前にいたのが外枠のアフリカンゴールド。枠なりに壁のない位置となり、深追い厳禁の様子。それを見ながらインに収まったのがモズベッロ。池添謙一騎手らしい意図と意志をもった騎乗プランが実行された絶好の形。

アルゼンチン共和国杯でためて弾けた競馬から、タイセイトレイルも以前のような強気な策に出られず、中団の後ろ。菊花賞以来のレッドジェニアルはスローペースの後方2番手では勝負圏内には入れない。

勝負どころまでの位置関係が結果に大きく影響したのは言うまでもないが、それ以上に格上の有力馬が展開の不利を逆転できない末脚を削がれる京都の芝も大きかった。

この週の京都競馬場は話題のディープインパクト産駒アドマイヤビルゴこそ新馬勝ちを飾ったが、これも2番手からの抜け出しという安全策でのもの。ためても切れ味を封じられ、ゴール前はピッチ走法のパワー型の馬が、リズミカルなフットワークで重い馬場に対応する場面が多く見られた。

勝ったモズベッロは2019年でもっとも極悪だったと言っても過言でない、7月中京の芝2200m(重)1勝クラスを0秒6差勝ち、この冬の特殊な馬場を作った原因でもある昨秋の京都開催、それも開催後半の芝2400mで2勝クラス勝ち(0秒5差)と特殊な馬場にこそ適性があったといえる。

インでロスをなくし、4角から馬場がいい外を通るという今開催の理想的なコース取りで突き抜けた。前2勝同様に勝つ時は突き抜ける馬。裏返せば、買い時と消し時がはっきりした馬である。今後はこの勝利から得られたデータを活用し、モズベッロの取捨選択をしていきたい。

2着レッドレオンは全4勝いずれも上がり2位以下、34秒台後半というディープインパクト産駒のなかでもいわゆる切れない部類の馬。こちらも今後は馬場適性を考慮したい。

敗退組のなかでは

モズベッロと同じ位置にいた11着アフリカンゴールドは最後の直線での反応で見劣った印象で、モズベッロより内側を走ったことからも明らかに特殊な馬場が合わなかった。緩い流れの芝2400m戦を前から攻めてしのぐ、それが同馬のスタイル。形はモズベッロに似ているが、適性は明らかな軽い馬場向き。これもこの日経新春杯で明確になったことでデータとして蓄積しておきたい。

4番人気で4着だったタイセイトレイルは、直線ではしっかり伸びていて、こちらは馬場に削がれたわけではなく、むしろ重い馬場には合っていた。敗因はずばり展開だろう。夏までは前で位置をキープして、抜け出すような競馬で成績を残していた馬だけに控えたのは裏目に出てしまった。アルゼンチン共和国杯好走が新味なのか、それまでの競馬が自身のスタイルなのか。その答えが待たれる。

6着サトノガーネット、7着レッドジェニアルは特殊な馬場でもそれなりに脚は使えた。もっと軽い馬場であればと思わせる内容で見限れない。

5着プリンスオブぺスカは人気を覆す走り。スローを途中で動いたからこそ残せた成績ではあるが、この相手で自ら動いて掲示板確保は立派で、こちらも重い馬場に高い適性があることを忘れない方がいい。なぜなら今回同様にいつも人気以上に走る馬なので、好走時をつかめれば自然と高配当にありつけるからだ。

2020年日経新春杯の結果インフォグラフィックⒸSPAIA

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて「築地と競馬と」でグランプリ受賞。中山競馬場のパドックに出没。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌「優駿」にて記事を執筆。