形を崩さないルメールの冷静さ
今年のシンザン記念は1番人気ルーツドール、2番人気サンクテュエールと上位はいずれも牝馬。勝ち馬から牝馬三冠馬2頭を出す出世レースだけに注目が集まった。
ルーツドールは東京の新馬戦を1分33秒3、2着に0秒8差つける好記録。兄は菊花賞最小キャリア優勝のフィエールマンという血統的にも、2戦目の重賞挑戦は突破可能と期待された。
サンクテュエールは牝馬の出世レースであるアルテミスSで2着。2歳GIではなく、ここに出走してきた。賞金加算への意欲がうかがえる。
牡馬勢は朝日杯FSで初芝ながら見せ場があったタガノビューティー、同レース5着のプリンスリターン、未勝利勝ち直後のディープインパクト産駒オーマイダーリンなどが出走。
レースはオーマイダーリンとサンクテュエールがスタートでやや遅れるシーンから始まった。対照的に好発を切ったヴァルナが逃げて、半マイル48秒0と重賞としては遅めの流れ。2番手にプリンスリターン。1番枠からダッシュがつかなかったサンクテュエールは控えずにインを進出、好位3番手まで押し上げて行く。ルーツドールは中団前の外に付け、タガノビューティーは朝日杯FS同様に後方待機策。
淡々とした流れから最後の直線へ。ヴァルナをかわして早めに先頭に立つのはプリンスリターン。原田和真騎手も初重賞制覇に向けてこれ以上ない競馬を展開する。
しかし、その背後のインから3番手にいたサンクテュエールが迫る。残り100mで2頭の馬体が合うも、ルメール騎手の最後のひと追いでサンクテュエールの首が前に出て勝利した。
レースは平均よりやや遅めの流れで展開。その流れに乗ったプリンスリターンとスタートの遅れを放置せずに道中で挽回し、3番手に上がったサンクテュエールの叩き合いとなった。
プリンスリターンと原田和真騎手は悔しすぎる2着。もう少し背後のインにいたサンクテュエールを意識していれば、内をすくわれなかっただろう。ただ初重賞をかけたレースでそれは責められない。
逆にインのスペースを見逃してはくれないのが2019年リーディングジョッキー、ルメール騎手。当週から2020年騎乗初めのルメール騎手はスタートで遅れるレースも目立ったが、先行馬はできるだけ先行させるリカバーも多かった。遅れたら遅れたなりではなく、遅れてもペースを察知し、内枠でもプランを忠実に実行する冷静さがここでも目を引いた。
サンクテュエールはアルテミスS同様に立ち回りのセンスのよさが目立った。さらに最後の牡馬との叩き合いは迫力があり、競り勝つ強さも見せつけた。ただし勝ち時計1分35秒9は歴代と比較すると遅い決着。
流れに乗じた競馬だっただけに、桜花賞有力候補とするにはシンザン記念組の今後と自身の動向次第だろう。