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【シンザン記念・フェアリーS】勝ち馬はいずれも桜花賞まで忘れてはいけない!その理由とは?

2020 1/14 11:09勝木淳
2020年フェアリーSを制したスマイルカナ
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ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

形を崩さないルメールの冷静さ

今年のシンザン記念は1番人気ルーツドール、2番人気サンクテュエールと上位はいずれも牝馬。勝ち馬から牝馬三冠馬2頭を出す出世レースだけに注目が集まった。

ルーツドールは東京の新馬戦を1分33秒3、2着に0秒8差つける好記録。兄は菊花賞最小キャリア優勝のフィエールマンという血統的にも、2戦目の重賞挑戦は突破可能と期待された。

サンクテュエールは牝馬の出世レースであるアルテミスSで2着。2歳GIではなく、ここに出走してきた。賞金加算への意欲がうかがえる。

牡馬勢は朝日杯FSで初芝ながら見せ場があったタガノビューティー、同レース5着のプリンスリターン、未勝利勝ち直後のディープインパクト産駒オーマイダーリンなどが出走。

レースはオーマイダーリンとサンクテュエールがスタートでやや遅れるシーンから始まった。対照的に好発を切ったヴァルナが逃げて、半マイル48秒0と重賞としては遅めの流れ。2番手にプリンスリターン。1番枠からダッシュがつかなかったサンクテュエールは控えずにインを進出、好位3番手まで押し上げて行く。ルーツドールは中団前の外に付け、タガノビューティーは朝日杯FS同様に後方待機策。

淡々とした流れから最後の直線へ。ヴァルナをかわして早めに先頭に立つのはプリンスリターン。原田和真騎手も初重賞制覇に向けてこれ以上ない競馬を展開する。

しかし、その背後のインから3番手にいたサンクテュエールが迫る。残り100mで2頭の馬体が合うも、ルメール騎手の最後のひと追いでサンクテュエールの首が前に出て勝利した。

レースは平均よりやや遅めの流れで展開。その流れに乗ったプリンスリターンとスタートの遅れを放置せずに道中で挽回し、3番手に上がったサンクテュエールの叩き合いとなった。

プリンスリターンと原田和真騎手は悔しすぎる2着。もう少し背後のインにいたサンクテュエールを意識していれば、内をすくわれなかっただろう。ただ初重賞をかけたレースでそれは責められない。

逆にインのスペースを見逃してはくれないのが2019年リーディングジョッキー、ルメール騎手。当週から2020年騎乗初めのルメール騎手はスタートで遅れるレースも目立ったが、先行馬はできるだけ先行させるリカバーも多かった。遅れたら遅れたなりではなく、遅れてもペースを察知し、内枠でもプランを忠実に実行する冷静さがここでも目を引いた。

サンクテュエールはアルテミスS同様に立ち回りのセンスのよさが目立った。さらに最後の牡馬との叩き合いは迫力があり、競り勝つ強さも見せつけた。ただし勝ち時計1分35秒9は歴代と比較すると遅い決着。

流れに乗じた競馬だっただけに、桜花賞有力候補とするにはシンザン記念組の今後と自身の動向次第だろう。

好タイムで勝ったスマイルカナ

フェアリーSはスタートが全てというレースだった。ほかより一完歩目で2、3馬身リードを奪ったスマイルカナは争うことなくハナへ。ここまでストレスなく馬なりで先頭に立てば、前走ひいらぎ賞で牡馬相手に逃げ切った経験が生きる。前後半800mは47秒0-47秒0と芸術的なラップ。単調なスピード型ではなく、力のいる冬の中山で4角から坂下までの残り400mを11.2-12.0とディープインパクト産駒らしい瞬発力を披露。性能の高さを見せつけた。

控えた赤松賞で大敗しているようなモロさもあるので、現状は逃げ戦法が理想。2歳女王レシステンシアが桜花賞を見据え、控えるようなことがあればチャンスがあるのではと思わせる。 というのも近年のフェアリーSと比較しても勝ち時計を含め、記録的な価値が高いからだ。女王の向こうを張るとまではいえないが、桜花賞戦線の伏兵として覚えておきたい一頭だ。

2着チェーンオブラブ、3着ポレンティアはいずれもキャリアの浅さが影響したか。2歳時はスローペースから瞬発力勝負という単調な競馬が多かった。今回のような締まった流れで馬群に入り、モマれ込むような競馬に戸惑いがある面が見られた。

2着チェーンオブラブは前半で3頭並ぶ場面があり、その真ん中で控えるシーンがあった。最後は目を引く末脚だっただけに経験を積めば2勝目は近いだろう。1番人気6着アヌラーダプラは終始、外目のポジションだったことが響いた。逃げ馬の活躍が目立つ中山マイル戦では厳しかった。

見直すべきは2番人気4着シャインガーネット。終始3番手の外で前に馬を置けずにややエキサイト。マーフィー騎手らしい積極的な仕掛けでタイミングよく動いたが、インにダイワクンナナがおり、4角では若干だが大回りなコーナリング。 馬群から抜けたポレンティアにかわされたが、しぶとい面を見せた。内容的には2、3着馬とは差はない。

先述のように、この開催の中山マイル戦は逃げ馬が大活躍した。5鞍組まれたマイル戦で4角先頭だった馬は1、2、1、11、1着。新馬戦を除き全て連対圏。なかには13番人気単勝141.8倍のトーラスジェミニも含まれる。先行有利な中山コースのなかで、差しが決まりやすいマイル戦だけにこの傾向は覚えておきたいところだ。とにかく馬場傾向が読みにくい冬の中山だけにこうしたデータを精査、積み重ねながら残り2週間に臨みたい。