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【マイルCS】昨年不利の無念を晴らす 東大HCの本命は高配が狙えるモズアスコット

2019年マイルCSで本命に推されたモズアスコットⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)
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ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

ペース次第で脚質の有利不利が大きい

11月17日(日)に京都競馬場で行われるのはマイルCS(GⅠ・芝1600m)。毎日王冠を快勝した3歳馬ダノンキングリーが安田記念勝ち馬インディチャンプ、天皇賞2着馬ダノンプレミアムら歴戦の古馬に挑む一戦だ。この3頭をはじめとする人気馬の扱いや、それ以外で狙うべき穴馬を検討する。

まずはレース展開や馬場傾向、コースの特徴といった点を分析していく。

前後半3Fと1~3着馬の脚質ⒸSPAIA

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過去10年を見るとミッキーアイルの逃げ切りあり、トーセンラーの大外一気ありで、脚質的にはつかみどころがない。そこで、前半が33秒台だった10、14年、上がりが速かった13、15年と、それ以外の平均ペースの年で分けてみた。

すると、スローまたはハイペースになった4回では、勝ち馬の4角通過順位が古い方から7、14、10、8番手。平均ペースの6回では7、4、7、1、13、5番手で、17年のペルシアンナイト以外は中団より前で運んだ馬が勝っている。大まかに言えば、平均ペースなら前残り、速いか遅いかに関わらず極端なペースなら差しが決まる傾向があるようだ。

今年は逃げそうなのがグァンチャーレかマイスタイルくらい。ただ、マイスタイルは中距離なら逃げ馬だが、マイル戦のメンバーに混ざるとさほどテンが速い方ではない。グァンチャーレはマイラーズCで逃げた時が前半3F36.0というスローペースだった。となると、今年はGⅠとしてはかなり緩いペースから、上がりの速いレースになると予想され、瞬発力に長けた差し馬が台頭すると読む。

イメージに反して内枠が苦戦

マイルCS自体はCコース替わりということもあり、昨年のステルヴィオや14年のダノンシャークなど鮮烈なイン突きのイメージがある。しかし、京都芝・外1600m全体としてのコースデータを見ると特に内枠有利ということはない。

過去3年の京都芝1600m外の枠番別成績ⒸSPAIA

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むしろ1・2枠は複勝率下位で、内すぎる枠は不利と言っていい。かたや8枠は連対率・複勝率がトップ。3コーナーまでの距離も十分にあるので、外を回るロス以上に包まれずに走れるメリットの方が大きいようだ。

先週の馬場傾向を考えると、日曜メインのエリザベス女王杯はラッキーライラックが鮮やかに内を抜け出しての勝利。しかし、「内を突いたこと」自体をラッキーライラックの勝因とする論調には懐疑的だ。

もちろん、内に進路が空くことを見越して抜け出した判断は見事だが、同日の7レースは上位3頭全て外を回った馬だったし、9レースもシンプルゲームが大外からまくって勝っている。特段インの馬場状態がよかったとか、内で脚をためることが有利な傾向ではなかった。

これを考慮すると、マイルCSでは枠順にそれほどこだわる必要はないが、どちらかと言えば外目の枠だと、包まれることはないので競馬がしやすそうだ。

典型的な叩き良化型

スローペースになると見込んで、瞬発力に長けた馬を中心に考え、本命はモズアスコット。昨年のマイルCSは内を通った馬が上位を独占するレースだったが、そんな中で4角大外を回し、おまけに不利まで受けた。それでも、直線は進路を探しながらしっかり伸びて、勝ち馬とは0.5差。13着と着順の上では大敗だが内容は悪くなかった。

連闘で昨年の安田記念を勝っているように典型的な叩き良化のタイプで、休み明けのレースは毎回追いだされてからの反応が著しく悪い。したがってマイラーズCと毎日王冠の敗戦は度外視できるし、今年の安田記念も内が極端に有利な馬場状態の中、インディチャンプに内から弾かれながらも頑張って0.3差の6着と見せ場を作った。

前走のスワンSでハナ差敗れたダイアトニックとの比較で考えると、2度叩いてさらに良化が見込めること、1キロの斤量差がなくなること、距離が200m延びること、と逆転する要素は十分にそろっている。1年半ぶりのGⅠ奪取へ条件は整った。

対抗はかなり悩んだがダイアトニックにする。先ほど述べたようにモズアスコットを高く評価しているので、それを破った前走を素直に評価したい。瞬発力型という点でも傾向には合うが、この馬の場合1400m【5-1-0-0】に対し1600mは【1-1-1-2】と若干パフォーマンスを落とすのが不安点。

3番手はダノンプレミアム。この馬がこれまでに経験したレースで前半3Fが最も速かったのは今でも2歳時のサウジアラビアロイヤルCで、その時が34.3。安田記念の大敗はいくつも原因が挙げられるが、初めてマイルGⅠらしい流れで、外を追走して脚がたまらなかったこともあるとみている。本質的には中距離馬のはずでマイルへの短縮ではあまり買いたくないのだが、今回はメンバー構成上スロー濃厚なので対応可と判断して3番手にした。

4番手にはインディチャンプ。前走はベストではない1800mで58キロを背負い、速めの流れをやや力みながら2番手追走で3着というのは悲観する内容ではない。ただ、ゲートも道中の折り合いも、いかにも難しそうな馬なので主戦の福永騎手の騎乗停止はかなり痛いだろう。

ダノンキングリーは瞬発力自慢で前走の勝ちっぷりも鮮やかだが、その時4キロあったインディチャンプとの斤量差が今回は1キロになる。今年の3歳世代がどうも古馬相手に精彩を欠くシーンが目立っているのも気になる。過信は危険だ。

以下、先週に続いて人気薄にルメールが騎乗するレイエンダ、天皇賞は枠順の不利でまともな勝負にならなかったアルアイン、大穴では富士Sで直線さばくのに手間取りながら4着のクリノガウディーまで押さえる。

▽マイルCS予想▽
◎モズアスコット
○ダイアトニック
▲ダノンプレミアム
△インディチャンプ
×ダノンキングリー
×レイエンダ
×アルアイン
☆クリノガウディー

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《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」でも予想を公開中。