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宝塚記念は”一歩足りない馬”が活躍できるレース

2019 6/19 11:00SPAIA編集部
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Ⓒ三木俊幸

ファン投票上位馬が人気に応えるのが難しいレース

ファン投票の上位馬には優先出走権の与えられるグランプリレース。暮れの有馬記念が一年を締めくくる最強馬決定戦との位置づけ(近年はその後にも2歳GⅠが組まれてもいるが)ならば、宝塚記念は上半期の総決算ともいうべきビッグレースだ。

過去の優勝馬にはディープインパクト、オルフェーヴルやメジロマックイーンといった歴史的名馬たちが名を連ねる。

しかし、1番人気馬受難のレースであることもファンの間では知られた事実。前年のダービー馬ドゥラメンテがレース中に故障を発生し、2着に敗れた2016年の結末は記憶に新しい。ファン投票上位馬がその人気に応えるのが難しい一戦と歴史が語っているのなら、果たして狙うべき馬は?その傾向から今年のレースの行方を探ってみたい。

最後はバテ合いになる理由とは?

有馬記念の行なわれる中山2500mというトリッキーな設定はしばしば波乱を伴ったドラマを生み出すが、阪神2200m内回りというコース形態はそれほど攻略の難しい設定ではないはず。

スタートしてから最初のコーナーに入るまでの距離は十分にあり、内外極端な枠に入っても加速をつけやすい条件。ある程度の機動力を備えた馬であればポジションを取りに行くことはたやすい。

ただし、逃げ切りが難しいことも近年の宝塚記念の傾向は物語る。内回りであることを意識すれば各馬の仕掛けが早くなるのは必然であり、勝負どころから加速ラップが続くも坂の影響を受けるゴール前のラスト1ハロンでラップを落とすのがレースの特徴である。

瞬発力勝負の流れになりづらいのであれば、4角で勝負圏内の位置にいて、持久力に秀でたタイプを狙い打ちすればいいのか?実はそれは昨年くらいである。

優勝したミッキーロケットはラチを頼りたいその特性からインにこだわり続けるレースを選択し、追い込んできた香港馬ワーザーとは、その内外コース取りの差が明暗を分けた。

しかし、これは先行した馬たちが絶妙にレースを流すも、圧倒的に力不足であったことから、好位で運ぶ馬たちに難なくVロードを明け渡したことで起こり得た微妙な展開がもたらしたもの。

例年のように、強い馬が逃げる形を早めに追いかけてはラストで失速するものであり、かといって早めにポジションを上げてきた差し馬も外を回るロスがこたえて、いつも通りの切れ味は発揮できない。直線半ばからは、いわばバテ合いといった形となるのが宝塚記念の本質だと思われる。

一歩足りない馬が活躍できる要因とは

〝上半期の最強馬決定戦〟と銘打ったレースが本来の機能を果たしていれば、展開不問で突き抜けるスーパーホースが現れたっていいはず。しかしそうならないのは、この6月末という開催時期にある。

年中、競馬を盛り上げるという観点から一時は7月に開催されたこともあったが、あらゆる方面の反対を受けたし、売り上げもそれほど伸びなかった事実から、今の時期に落ち着いた。

一方では、2歳馬のデビューを早める番組編成にあって馬房の関係もあるし、春に活躍した馬が宝塚記念を目標として調整を続けるには長すぎる間隔や気温を考えると過酷な設定であり、秋のビッグレースもしくは海外遠征に照準を合わせるにしても、この季節に阪神2200mのGⅠを走ることはリスクしか伴わないと考える陣営が増えるのも当然である。例えそこに一流馬の名前があっても、この時期に最高のパフォーマンスが見られるかは疑わしい。

また、レースレベルの低下に加えて混迷に拍車をかけるのが、梅雨時期の馬場状態。春の開催が一段落ついた後の最終週。各年の勝ち時計のバラつきを見ても、例え良馬場発表であっても芝の状態が安定したものではなかったことは十分にうかがえる。

同じく波乱の要素を含んだ有馬記念の優勝馬と改めて比較する時、宝塚記念でGⅠ初制覇を達成した馬が多いことに気づかされる。前述したようにコース取りの差を生かした2018年ミッキーロケットに、雨馬場の適性をいかんなく発揮した2017年のサトノクラウンも国内のGⅠ勝ちは初めて。

レースレベルの低下や馬場状態の不安定化、先の目標が見えづらくなることで各陣営のモチベーションの低下などの複合的な要因によって、いわばGⅠではちょっと足りないとみられていた馬が、その一歩を詰めることのできるレース。そう解釈することが馬券的中の近道となるのかもしれない。

今年出走する馬の中では、誰もが思い描く一歩足らずはエタリオウとクリンチャー。GⅠを勝ってはいるものの、現実的なところだとリスグラシューとキセキ。この少し甘い馬たちに注目したい。