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【マイラーズC】安田記念の前哨戦だが、実は本番にはつながらないレース?

2019 4/17 11:00SPAIA編集部
馬群,Ⓒ三木俊幸
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Ⓒ三木俊幸

近年は波乱傾向が続く

4月21日(日)に京都競馬場で行われるのがマイラーズC(GⅡ 芝1600m)である。関西圏で行なわれる春のマイル重賞として長く歴史を積み重ねてきたこの名物レース。収得賞金によって過度な斤量を背負わされることのない、別定のGⅡということで名の通った一流馬も数多く参戦する。

過去においてはダイタクヘリオスやノースフライトといった名マイラー、近年においてもダイワメジャー、イスラボニータといったクラシックホースが優勝馬に名を連ね、バリエーションに富んだメンバーで構成される興味の尽きない一戦。

2012年には開催時期を1週繰り下げて阪神から京都へと移設され、2014年からは1着馬に安田記念への優先出走権が与えられるなど、前哨戦としての意味合いを強めている。ただ、2009年のスーパーホーネット以来、1番人気馬の連敗が続き、波乱含みの重賞とのイメージも定着しつつある。その要因について考えてみたい。

安田記念の前哨戦としての機能を果たしているのか?

京都外回りマイルの条件は、スタートしてから3コーナーまでの直線距離も長く、いわば紛れの少ないコース形態である。

ではなぜ1番人気馬受難、人気通りの決着をみないことが多いのか。これは京都の開幕週へと開催が変更されたことが、大きく影響しているように思える。

移設初年度に優勝したシルポートは、前年の阪神開催に続いての逃げ切り勝ち。稍重馬場に恵まれたところもあったが、開幕週の馬場が先行馬にとって有利に働いたことは翌年以降の結果からも明らか。

さらに言えば安田記念の前哨戦としての機能を果たせているかにも疑問の残る結果が散見される。京都マイルと本番の東京マイルとでは、本質的には異なる能力を求められるレースになることが多い。前者がペース、展開ひとつでがらりとレースの様相が変わるのに対して、ポジション取りにそこまで固執する必要のない後者は、長い直線までいかに爆発力を温存できるかによって着順を分けるようなタフなレースである。

前出のシルポートが安田記念では結果を残せなかったことが示すように、開幕週の馬場状態を利してマイラーズCで好走した馬は、安田記念では厳しい競馬を強いられると見ておくべきかもしれない。

開幕週の傾向が色濃く出るレース

開幕週の馬場からくる傾向でさらにもう一点。2014年ワールドエース、2018年サングレーザーがレコードを叩き出したように、べらぼうに時計が速くなる点には注意を払う必要がある。

切れ味抜群のサングレーザーでさえ、内目をさばいてきたのだから、基本的には前に行った馬、インをロスなく立ち回った馬に有利な競馬であるとの見立てが正しいであろう。

2014年から3年連続で1番人気の支持を集めたフィエロは、手前を替えるのが苦手で不器用なタイプである。大きく崩れなかったものの、時計の速い決着が足カセとなって勝てなかったとみたい。

その傾向を踏まえた各陣営が安田記念へのつながりを意識すると、ここでアクセル全開の仕上げとはしづらい側面もある。2017年、2018年の1番人気エアスピネルがもう一歩のところで勝利を逃した要因は、そのあたりに求められるのであろう。

安田記念の前哨戦に豪華メンバーが集結しての力勝負と見られがちな一戦だが、実はそれより秋に同コースで行なわれるマイルチャンピオンシップと連動したレースと考えるべきであり、器用に立ち回ることのできるタイプの馬、ジョッキーに重きを置くことが、馬券攻略の近道と成り得るのかもしれない。

今年は復活したダノンプレミアムが参戦

昨年2着のモズアスコットがここをステップとして、安田記念でGⅠを制覇した。

しかし、実際のところはここでの2着の賞金を加算しただけでは安田記念出走がかなわず、2週前登録時点では補欠の扱いだった。ハンデを課せられることは覚悟の上で前週の京都競馬場で行われるオープン特別、安土城Sを勝って連闘で安田記念へ向かうというプランを立てるも、2着と取りこぼしてミッションは失敗。

かと思われたが、当週となって回避馬が出たことで出走可能となった。レースでは、広い直線をフルに生かす抜群の決め手を発揮してGⅠ制覇を果たした。

ルメール騎手鞍上にして9番人気の低評価となったのは、ローテーションを嫌われたことに起因するが、東京コースの適性が極めて高かったことを、レース前の時点で見落とされていたことも否めない。

メンバーレベルがさらに高くなりつつある近年だが、今年は一時期、最強馬という評価もあったダノンプレミアムが最大限に力を発揮できる舞台はどこであるか。初参戦の京都でいかなる走りを見せるのか注目したい。