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皐月賞制覇に向けて、サートゥルナーリアが乗り越えなくてはならない2つの壁

サートゥルナーリア,ⒸJRA
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ⒸJRA

外厩制度の技術向上

2年連続、ぶっつけ本番で挑んだ馬が桜花賞馬になってしまった。データで予想をするものにとっては、厄介な事態である。

ひと昔前なら、これはありえないことである。そもそも馬は栗東や美浦の調教施設で仕上げるのが当たり前である。放牧から厩舎に戻ってきた馬は体が太くて、絞るのに苦労し、完璧に仕上げるには前哨戦を使って、本番(GⅠ)に臨むくらいがちょうどよかった。

しかし、その時代も終わろうとしているかもしれない。現に今週行われる皐月賞の近5年を見るだけでも、時代の変化が分かる。皐月賞の前哨戦といえば、3月に行われる重賞、弥生賞とスプリングSか、オープン特別の若葉ステークス、無理をしてでも出たければ皐月賞まで間がない毎日杯を使って賞金を稼いで出走したものである。

だが、ここ5年の皐月賞馬の前走レースを見ると、2月初旬に行われる共同通信杯組が3勝も挙げているのだ。普通なら、この時季は寒くて2か月空けると、体が絞れない傾向に陥りがちだが、最近はそうならない。その大きな要因が外厩技術の向上にある。

近年、馬は放牧先でただ休んでいるだけではない。疲れた体を癒しながら運動しているのだ。この運動こそが今のローテーションの定説を崩しつつある。

ぶっつけ本番でも勝てると私に教えてくれたのが2006年の秋華賞。この年の勝ち馬は4戦無敗でオークスを制覇したカワカミプリンセス。オークスから秋華賞は約5か月空く。強さを認めつつもさすがに無理だろうと思ったが、それを簡単にやってのけたのだ。

ただ、このローテーションが流行るのかと思ったが、これに失敗したのが次の年のウオッカである。誰もが知る名馬で、牝馬ながら日本ダービーを勝った強者が、宝塚記念からぶっつけで挑んだ秋華賞でまさかの3着に敗れた。宝塚記念を使った影響があったかもしれないが、ウオッカでも勝てないのかと思い知らされたことを覚えている。

サートゥルナーリアが越えなければならない2つの壁

今回、ぶっつけ本番で皐月賞取りを狙う馬がいる。それがサートゥルナーリアだ。前走のホープフルS(GⅠ)を見るとただ者ではないと思わせるくらい完勝だった。あの走りをすればここもあっさり勝てるだろう。

ただ、本当に仕上げられるのだろうか。今回、サートゥルナーリアは中14週で皐月賞に挑むことになる。そこで、14週以上空けた馬のデータを見ていきたい。

近10年とその向こうの10年の成績比較,ⒸSPAIA

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ここ10年で外厩の技術が上がったと言われているので、2009~2018年の10年間と1997~2008年の10年間を比べてみると、やはり近10年の方が間隔を空けても結果が出ていることが分かる。全体数が多すぎて率はあまり変わらないが、勝ち星だけ見ると約250勝も違う。それだけここ10年で休養明けでも力を出せるようになったと考えていいだろう。

次にクラス別成績で分けてみた。

近10年とその向こうの10年のクラス別成績比較,ⒸSPAIA

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率的なものはやはり近年が優勢だが、GⅠの勝ち星を見ると、2009~2018年は14勝、1997~2008年までは10勝と実はそれほど変わらない。

ただ、サートゥルナーリアにとってここからが厳しいデータである。14週以上空けてGⅠを勝った馬は何頭かいるが、今回は何といっても3歳牡馬クラシックの1つ皐月賞。これを勝つと種牡馬になった時にかなり価値が上がるとまで言われる大事な1戦である。

あとの2つ、日本ダービー、菊花賞をぶっつけ本番で取った馬はこの20年で昨年の菊花賞勝ち馬、フィエールマンだけ。もう少し広げると、1987年に皐月賞から菊花賞を勝ったサクラスターオーがいる。ただ、3歳の春と秋では馬の完成度が違う。体、精神的にまだまだ子供なこの時期にきっちりと仕上げるというのはかなりの腕が必要となる。

最後に2009~2018年の性別成績。

近10年の性別別成績比較,ⒸSPAIA

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牝馬に比べて牡・セン馬の勝率は非常に低い。「牝馬は仕上がりが早い」という説があるように、やはり牡馬に取って間隔を空けることはプラスにでないのかもしれない。

ぶっつけで挑んだ馬がクラシックの桜花賞を勝ったり、菊花賞を勝ったりしているここ2年。時代は確かに変化しているのかもしれない。ここでサートゥルナーリアが皐月賞を勝つと、新たな時代の幕開けとなるだろう。それを見たい気もするが、ここで競馬の難しさをもう一度考えさせられるレースになっても面白いのではないだろうか。