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【大阪杯】前哨戦で「負けるべくして負けた馬」に注意

2020 4/1 06:00SPAIA編集部
馬群,ⒸSPAIA
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昔からレベルが高くGⅠへと昇格

以前は「サンケイ大阪杯」、または「産経大阪杯」との名称で行われていた大阪杯。古くから、「阪神大賞典」と並んで、春の古馬中長距離路線の実力馬たちによる始動戦として親しまれてきたレースである。

近代競馬の流れであるスピード化が進むにつれ、天皇賞・春を始めとする長距離レースの価値が薄れると、お手頃な距離のここへと参戦するスターホースが増えた。それにより、GⅠ級の豪華メンバーが集うスーパーGⅡと評されるようになり、GⅠ昇格への機運は年々高まっていった。

同時期に行われるドバイ国際競走への有力馬の流出を防ぐという政治的意図も見え隠れする中、2017年からは「大阪杯」と名称を改め、GⅠレースとしての歴史をスタートさせた。

GⅠ昇格後はよりレベルが上がった

GⅠ昇格後とそれ以前を比較すると、単純に勝ち時計が速くなったというわけではなく、レースの質が少々違ってきたという印象を受ける。

2017年の勝ち馬キタサンブラックはマルターズアポジーを先に行かせることで好位置を確保して実質レースを支配すると、自分のタイミングで仕掛けて後方の追撃を封じる完璧な立ち回りを見せた。序盤、緩いペースで流れた2018年は、スワーヴリチャードが向正面から早々にまくって一気に先頭に立つと、ラチを頼る形でそのまま押し切って実力を示した。

このように、よりスピードが求められるとともに、GⅠホースたちが自身の弱点をカバーして、本気で勝ちにくるようになったのだ。これまで前哨戦として行われていたGⅡ時代のような生ぬるい展開には成り得ないレースへと変貌を遂げている。

GⅠとなり傾向は変わっていく?

GⅡ、GⅠで行われた過去のレース傾向をまとめると、人気馬は信頼に足りる、若い4歳馬優勢、小回り二千に実績のある馬が有利といったところだろうか。大方、この見解は間違いないであろうが、新たなGⅠ前哨戦として機能し始めた中山記念、金鯱賞に今年はGⅠ馬が大挙して出走。そこをステップとして大阪杯を春の最大目標として設定する陣営が増えると、これからさらにメンバーの質は高まると推察される。

位置取りが巧みなマイラー気質のスピード馬が台頭することに加えて、厳しい展開となることが予測されれば、さらにそこからの持続力が求められる。そうなれば究極に馬を仕上げていく必要が生じ、年明け緒戦、ぶっつけの馬でも力でねじ伏せることのできたGⅡ時代とは異なり、前哨戦を叩いた馬の方が有利になるのではないか。中山記念、金鯱賞優勝馬の出走はなくとも、そこで〝負けるべくして負ける競馬をした馬〟たちの巻き返しには注意を払いたい。

今年の前哨戦で惜敗したGⅠ馬の中にラッキーライラック(エリザベス女王杯勝馬)がいる。3月1日に行われた中山記念はダノンキングリーに敗れて2着だったが、昨年は前哨戦である府中牝馬ステークス3着からエリザベス女王杯(GⅠ)を勝ち切っているので、本番では前走以上に力を発揮しても不思議ではない。まさに〝負けるべくして負ける競馬をした馬〟の巻き返しに該当しそうである。

GⅡはGⅡ、GⅠはGⅠ

GⅠ昇格初年度に優勝を果たしたキタサンブラックだが、GⅡ最後の年は2着に敗れている。これを負かしたのは、これまでの後方待機策から一転、キタサンブラックをマークする2番手の位置でレースを進めた横山典騎乗のアンビシャス。

レース後のジョッキー談が印象的だった。オーナー、陣営と喜びの握手を交わした後、「これくらい走れる馬。うまくいった」と興奮気味に話していたが、その後、キタサンブラックに加えてラブリーデイらの強豪を倒したのだから次のGⅠこそは…、と意気込んで質問する記者に対して、「今日はうまくいった」との返答が繰り返された。

今日のレースは今日だからできたこと。GⅠとなればレースの質が変わってくることを承知した上での、ベテラン騎手ならではの一言であろう。今度は豊もレースのパターンを変えてくるよ、とでも言いたげな表情に思えた。実際、GⅠとなった翌年で、キタサンブラックと武豊騎手は完璧な立ち回りで優勝を果たした。

今年の大阪杯ではどのようなガチンコ勝負のレースが展開されるのだろうか。好メンバーによるGⅠならではの熱戦を期待したい。