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大阪杯がGⅠになり格下にも注意?数々の熱戦が繰り広げられた阪神大賞典

2019 3/13 11:00SPAIA編集部
競馬
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天皇賞・春への重要なステップレース

阪神競馬場で行なわれる長距離3000mのGⅡ・阪神大賞典は、天皇賞・春へとつながるステップレースである。その歴史は古く、優勝馬には稀代の名馬たちがズラリと名を連ねる。昨年の優勝馬レインボーラインは勢いそのままに、天皇賞・春で悲願のGⅠ初制覇を成し遂げた(故障発生により引退レースとはなってしまったが…)。

これまで阪神大賞典、大阪杯に加えて中山で行なわれる日経賞がその前哨戦としての機能を果たしていたが、大阪杯がGⅠへと格上げされたこともあり、当レースの重要度はさらに増してくるものと考えられる。

「菊花賞=阪神大賞典」

改めて過去の優勝馬を見ると、阪神大賞典が極めて菊花賞と関連性の深いレースであることに気づかされる。ディープインパクトやナリタブライアンの三冠馬はもちろんのことだが、菊花賞を勝ったゴールドシップ、ナリタトップロードも複数年このレースで勝利を挙げているのだ。

ただし、同じ長距離戦といえども、京都と阪神ではコース形態が違うのでレースの質は当然変わってくる。ではなぜ、京都競馬場で行われる菊花賞で好走した馬が、阪神競馬場で行われる阪神大賞典でも好結果を残せるのだろうか。

大きな要因として考えられるのは、菊花賞がスローな流れになることだ。3歳クラシックにして多くの馬が初めて長距離を経験する菊花賞では、積極的に行かず、無理をしない馬が多い。これにより、直線だけの競馬になりやすく、瞬発力が求められるため、時には能力値によって距離適性を凌駕する優勝馬が現れる。

一方の阪神大賞典は、直線に坂のあるコースを2周する。そのため、各馬が意識し合って、序盤は出方をうかがいつつレースを進める流れが、菊花賞と似たものとなりがちであることは想像に難くない。例年、純粋なスタミナ勝負となるステイヤーズSで無類の強さを誇っていたアルバートが、昨年の阪神大賞典では切れ負けして4着に敗れたことも、そのあたりが起因したと考えられる。

また、一般的に経験が重要視されるのが長距離戦だが、阪神大賞典では年齢の若い4、5歳勢が優勢となっている。単にスタミナ勝負の競馬が行われていない証しだろう。その中で大きな波乱はなく、人気通りの順当戦という過去のデータにはうなずける。

だが、前述したように大阪杯がGⅠへと格上げされたことで強豪の数頭はそちらへと流れる傾向にあり、天皇賞・春の存在意義自体も薄れつつある昨今の状況である。伴って、阪神大賞典のメンバーレベルも低下となれば、格下とされる馬の食い込みがあっても不思議はない。過去の例であれば、2013年3着のフォゲッタブルや2011年優勝、2012年3着のナムラクレセントなど、近走が不振であっても3歳時に菊花賞で好走している馬なら注意を払うべきだろう。

今年は菊花賞で好走した馬の名はないが、2年前に大阪杯がGⅠになったからには、来年以降、この傾向が色濃く出てきそうなので覚えておきたい。

その一方、瞬発力勝負となった阪神大賞典をステップにしたことで、本番の天皇賞・春に苦戦した例も見受けられる。ナリタトップロードが天皇賞・春を勝つことは1度もなく、ゴールドシップは阪神大賞典最初の優勝から3度目のチャレンジでやっと天皇賞・春を制した(勝利した2015年は散水によりゴールドシップ向きの馬場となったとの風聞もささやかれている)。

この結果を見ると、やはり阪神と京都ではレースの質は違っており、「菊花賞=阪神大賞典」というのは異例の関連性なのだ。

記憶に残るレースが多い阪神大賞典

記憶に残るレースの多いことでも知られる阪神大賞典。最たるものはオルフェーヴルが一度は逸走しながらも、猛然と直線で2着にまで追い込んだ2012年。勝ったレースではなく、その走りこそが荒ぶる個性の彼を表すに、最もふさわしいと見る向きもいまだにある。

3歳時に有馬記念も含めた4冠を制したスーパーホースは更なる進化を遂げている最中にあって、その淀んだ流れに我慢がならなかったのかもしれない。その証しとして抑えが利くようにと調教が施された次走の天皇賞・春では弾けるところなく11着に凡走している。

菊花賞馬の対決として多くのファンに記憶されているのは1996年のナリタブライアンとマヤノトップガンが繰り広げた究極のマッチレース。3着以降には大きく水をあけ、ゴールまで続いた熾烈な追い比べは見るものの心を熱くした。

前哨戦であり、阪神コース特有の流れとなることが世代を超えた対決を実現させたのなら、そういった楽しみ方が阪神大賞典の持つ醍醐味なのかもしれない。