「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

数々のドラマが起こった阪急杯 今年はどのような結末を迎えるのか

2019 2/19 15:49SPAIA編集部
馬群,ⒸSPAIA
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸSPAIA

GⅠトライアルだが近2年は荒れ気味

GⅠ高松宮記念が春のスプリント王決定戦へと改められた際、これに伴ってその前哨戦との位置づけとなったのが阪急杯。2013年ロードカナロア、2014年コパノリチャードはここでの優勝をステップに高松宮記念制覇を成し遂げた。2014年からは1着馬に優先出走権が与えられるなど、よりGⅠトライアルとしての色合いを濃くしている。

しかし近2年はともに7番人気のトーキングドラム、ダイアナヘイローのいわゆる伏兵馬が勝利。とくに一昨年は3連単248万超えの大波乱の幕切れとなったこともあり、一筋縄にはいかない空気感が生まれつつある。果たして今年はどのような決着となるのか、レース傾向の変遷を掘り下げつつ、考察していきたい。

同じ条件なのに、阪急杯と阪神カップは違う?

阪神芝1400mで行われている重賞は阪急杯の他に、12月末の阪神カップがある。もちろん、わずか2か月の間に同条件で施行されている両重賞は密接な関連性を持つが、意外にも直近で阪神C→阪急杯を勝った馬はいない(2011年サンカルロ、2018年ダイアナヘイローは両レースを制してはいるが、阪急杯→阪神C勝ち)。これは2つのレースの特性に微妙なズレがある点に起因するものと考えられる。

阪急杯がスプリントGⅠの前哨戦であると明確に打ち出しているのに対して、阪神カップは1年の戦いで思うような結果を得られなかった馬たちが、帳尻合わせをもくろんで集う受け皿的なレース。馬齢定量で実績馬たちを呼び込み、賞金を高めに設定したスーパーGⅡでは、スプリンター、マイラーの猛者たちが覇を競い、その結果として1400mに特化したリピーターが続出することとなっている。

阪神カップが開催も大詰めを迎えた馬場状態で各馬が余力を振り絞って、いわばなりふり構わず賞金を取りにいくレースならば、開催初めの整った馬場で行われる阪急杯は先のスプリントGⅠを見据えたトライアルである。

阪急杯の特徴として、一見ハイペースのラップで推移していても、それほど激しく競り合うレースとならない。なぜなら千二の電撃戦とは違って、スタートから最初のコーナーまで十分な距離があるため、主張した先行馬が有利にレースを進める展開となりやすいからだ。ただし、ここで楽にポジションを取って好走した馬は、続く高松宮記念で激流にのみ込まれるケースもしばしば見られる。

阪急杯は引退する人たちのドラマが生まれるレース

阪急杯と言えば、いまだに語り草となっているのが2006年のブルーショットガンの優勝。11番人気の7歳馬を勝利に導いたのは松永幹夫騎手(現調教師)。ジョッキーとして最後の騎乗日、メインレースを前にしての通算勝利数は1398勝。残り2鞍となれば区切りの1400勝には届くまいと思ったところでの劇的な勝利。最終レースも連勝で有終の美を飾った。〝神が舞い降りた〟〝持っている男は違う〟などと評されたが、その後のブルーショットガンの戦績を見れば、まさに奇跡の勝利であったとしか説明のしようがない。

競馬サークルの暦で言えば、2月の最終週は調教師、騎手の引退の時。そこに人はドラマを観るのだろう。昨年、逃げ切り勝ちのダイアナヘイローは、福島信晴調教師にとってのラスト重賞。絶妙のラップを刻んだ鞍上は武豊。人馬がいつも以上の力を発揮したのか、周囲が空気を読んだのか。それを勘ぐるのも野暮というものだろう。敗戦した馬に騎乗していたベテラン騎手がレース後にポツリと漏らした言葉が印象的だった。

「競馬にはこういうこともあるんだよ。生き物を生き物が動かしてんだからな」

果たして今年はどんなドラマを見せてくれるのだろうか。