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競馬でオーストラリア中の活動がストップ 南半球最大級のレース「メルボルンカップ」とは

メルボルンカップ,優勝杯,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

南半球最大級の長距離レース

オーストラリア・メルボルンのフレミントン競馬場にて毎年11月の第一火曜日に行われる長距離レース、メルボルンカップ(GⅠ)。1861年に創設され、当初は芝2マイル(約3218m)で行われていたが、1972年からはメートル法を採用し、芝3200mで争われている。

現在では南半球における最大級のレースとして位置付けられており、同レースの2018年の賞金総額は、625万豪ドル(約5億1000万円)。これは3200m戦、ハンデ戦として世界最高額だ。

同時に、「The race of stops a nation(国の活動を止めるレース)」とも言われている。その名の通り、メルボルンがあるヴィクトリア州ではレース当日は祝日となり、その他の州でもオフィスや商店が休みになることも多いという。

市民生活に根付くビッグイベント

レース当日の競馬場は社交の場となる。明確にドレスコードがあるわけではないが、男性はスーツにネクタイ、女性はドレスと帽子で着飾り、食事とお酒を飲みながらオシャレを楽しむ。

メルボルンカップを楽しむ女性たち,Ⓒゲッティイメージズ

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競馬場に来場する人だけに留まらず、こうした文化は競馬に詳しくない人にまでに浸透しており、オシャレをして外出するのが一般的になっている。まさに市民生活に根付いているオーストラリア人にとってのビッグイベントだと言えるだろう。

また、レース前日には市内の道路を封鎖してパレードが行われる。バグパイプの演奏隊、オープンカーに乗せられた優勝カップ、出走馬の騎手、調教師、馬主、さらに歴代優勝馬までもがパレードに参加。

メルボルンカップのパレード,Ⓒゲッティイメージズ

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観客が歩道を埋め尽くす様子は、まさに凱旋パレードそのもの。レースの歴史を感じることができる。

歴史を大切にする文化、ファッションや食を楽しむこと、日常生活に浸透していること、そして何より競馬を楽しむこと、これらすべてが合わさっていることこそが、メルボルンカップが国の活動を止めると言われる由縁だろう。

2006年には日本馬がワンツー 歴史的快挙を達成

これだけ豪華なレースには、当然これまで海外からも多くの馬が参戦してきた。初めて日本調教馬が参戦したのは、2005年のアイポッパーだった。

着順は12着と大敗してしまったが、前哨戦のGⅠコーフィールドカップ(コーフィールド競馬場・芝2400m)で2着という成績を残したことから、生産したノーザンファームは馬場適性があると判断し、翌2006年には前年の菊花賞馬デルタブルースと同年の目黒記念を勝ったポップロックを参戦させた。

メルボルンカップに出走した日本調教馬

アイポッパーと同じくコーフィールドカップを前哨戦に3着、7着となったのち、デルタブルースがメルボルンカップを優勝。ポップロックが短アタマ差の2着になるという歴史的快挙を成し遂げた。

その後、2017年までに5頭の日本調教馬が参戦したが、いずれも二桁着順となっている。

その理由として短距離路線が充実し、レベルが高いオーストラリアにおいて、長距離路線は層が薄いため、近年ではその隙を狙ってイギリス、アイルランド、フランス、ドイツなどの欧州調教馬が多数参戦してきていることが挙げられる。

また地元オーストラリア所属であっても、オーストラリアの馬主にトレードされて欧州から移籍してきた馬も多いため、レースレベルが高くなっていると分析できる。

近年、期待された結果が得られていない日本調教馬だが、メルボルンカップに遠征する馬が滞在するウェリビー競馬場には、日本で使用されているのと同じ素材のポリトラックコースが設置されるなど、日本側の要望に答えて環境改善も図られている。

そうした中で、2018年のメルボルンカップ には、チェスナットコート(牡4、栗東・矢作芳人厩舎)が参戦。前哨戦のコーフィールドカップでは、重馬場の影響からか13着に大敗しているが、好メンバーが揃う伝統あるGⅠレースで重賞初制覇を飾ることができるのか、注目が集まる。