「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

【北九州記念】上昇一途の4歳馬ヤマニンアルリフラ本命 穴馬は“内枠で好走する”ミルトクレイモー

2025 7/5 17:00山崎エリカ
2025年しらさぎSのPP指数,ⒸSPAIA
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸSPAIA

開幕4日目で内と前が有利

小倉芝1200mはコース最高部からスタートしてすぐに下っていくコース。コース最高部からスタートしてすぐに下っていくのは中山芝1200mと同じだ。

ただ最初のコーナー(3角)までの距離が中山よりも長く、JRAの芝1200m戦ではもっともペースが上がりやすいコースとなっている。

北九州記念の過去10年ではスローペースになったことがなく、前半3F32秒台前半の超絶ハイペースが3度もあった。

このため逃げ馬は2勝2着1回3着1回に対して、追込馬も1勝2着1回3着1回と、芝1200mとしては追込馬が活躍している。しかし、この背景には8月下旬の外差し馬場の影響が強くあり、2016年優勝のバクシンテイオーはまさにそれだった。

ただ昨年から6月から始まる小倉開催の1~2週目に繰り上げられたことで、内と前が有利な傾向。昨年はピューロマジックが前半3F32秒3でぶっ飛ばしても勝利したように、この時期は明確に内と前が有利な馬場状態となっている。今年もこの傾向を踏まえて能力値上位馬と有力馬を紹介する。

能力値1~5位の紹介

2025年北九州記念のPP指数一覧,ⒸSPAIA


【能力値1位 ヨシノイースター】
昨年の北九州記念の2着馬。そのときは16番枠から好スタートを決め、押し進めて好位の外を追走。ピューロマジックの逃げでかなり前半が速かったが、ある程度、流れに乗って3角に入った。

4角で2番手に押し上げ2馬身差で直線へ。直線序盤でじわっと伸びてピューロマジックと1馬身半差。ラスト1Fで粘る同馬にしっかり差を詰めたが、半馬身差届かなかった。

しかし、ややタフな馬場で前後半3F32秒3-35秒6の激流。2番手、3番手のペアポルックスやテイエムスパーダが17着、18着に敗れているように、前に不利な展開だった。これを先行策から2着した内容は十分に褒められる。

このレースが消耗度の高いレースになったことで、次走セントウルSでは疲れが出て8着。そこから立て直されて2戦目の前走春雷Sでは、2走前の米子城Sで先着を許したロードフォアエースをマークしながら進め、ラスト1Fでしぶとく粘る同馬を競り落として1馬身半差で完勝した。

前走も強い内容だったが、休養明けの2走前が3番枠で外から競ってきた馬に抵抗し切れず。しかも3~4角の内で包まれる不利があり、能力を出し切れなかったことが前走に繋がった面もある。

今回はトップハンデ58kgを背負い大外16番枠。前の位置を取り切れずに、3~4角の外を回るロスを考えると信用し切れないが、能力や小倉芝1200m適性の高さを考えると侮れない。

【能力値2位 ロードフォアエース】
芝1600mの新馬戦で2着後はしばらくダートを使われていたが、昨夏から芝1200m路線に転向して上昇。芝1200mでは【2-5-0-0】と連対を外しておらず、近走はOP・リステッドで3連続2着に善戦している。

3走前の北九州短距離S(小倉芝1200m)は、11番枠から五分のスタートだったが、しっかり先行して好位の外を追走。道中はコントロールしながら進めて、3~4角では2頭分外から機を窺う。

4角出口で仕掛けて2列目で直線へ。直線序盤ですっと伸びて先頭に立ち半馬身ほど前に出る。ラスト1Fでも踏ん張っていたが、最後は外からキタノエクスプレスに差し切られてクビ差の2着となった。

この時は内有利の標準馬場。3~4角で外を回るロスがあったこともあり、本馬をマークしていたキタノエクスプレスに図ったように差し切られたが、2走前の米子城S、前走の春雷Sともにハイペースの2番手から0秒4差以内に善戦している。

どういう展開でも善戦しているのは大きな強み。近3走は標準以上に時計を要していたが、このタイプは馬場が高速化することでもうひと押しが利くことが多い。対抗には推したい。

【能力値3位 ヤマニンアルリフラ】
昨年1月にデビューし、芝2000mやダ1200mなどを使われたが8戦未勝利に終った。そこから休養明けで格上挑戦した昨年12月のジングルベル賞(2勝クラス・京都芝1400m)で待望の初勝利を挙げた。

その次走のダ1200mこそ休養明け好走の反動で3着に敗れたが、その後は伊良湖特別(2勝クラス・中京ダ1200m)と淀S(3勝クラス・京都芝1200m)を連勝と上昇一途だ。

前走の淀Sは4番枠から外に飛び出して外の馬と接触したが、すぐに立て直して二の脚で逃げ馬の外2番手を追走。3角手前で外からエイムインライフらが捲ってきたが、抵抗せずに好位の中目で3角へ。

3~4角では外からアンクルクロスに蓋をされて包まれたが、直線序盤でワンテンポ待ち同馬の後ろから外に誘導しながら追われて2列目の直後まで上がり、ラスト1Fで一気に抜け出して1馬身1/4差で勝利した。

この時は高速馬場で前後半34秒3-33秒9と平均ペース。ここではロードフォアエースの米子城Sや春雷S2着時と同等の指数を記録した。

本馬はこれまで様々な距離を使われていたが、2走前に記録した指数は2勝クラスとしては並み。母ヤマニンパピオネ同様に芝1200mがベストに映る。

ハンデもロードフォアエースの56.5kgに対して55kgと手頃。前走はラスト1Fで加速していることからまだ余力はありそう。今回は本命候補に推す。

【能力値4位 カリボール】
前走パラダイスSの勝ち馬。その前走は12番枠から好スタートを決め、押して好位の外を追走。道中では前に馬を置けず、やや掛かりながら先頭列の外まで上がった。

3~4角でも4頭分外から進出したため、内を通った逃げ馬に離されたが2列目の外で直線へ。直線序盤で仕掛けを待ち、ラスト2Fで追われて1馬身半ほど前に出て、ラスト1Fでもしぶとく伸びて差を広げ、2馬身半差で完勝した。

この時はタフな馬場で前後半3F34秒4-35秒7のハイペース。前がやや不利な展開を先行策から押し切る強い内容で、昨夏のヨシノイースターの北九州記念2着時に並ぶ、自己最高指数を記録した。

前走は昨夏の福島テレビOP以来の勝利となったが、当時もタフな馬場で3番枠を生かして好位から最短距離を通ったもの。このように芝1200mでも上がりの掛かる展開をロスなく立ち回れば通用しているが、ベストは芝1400mで上がりの掛かる展開だ。

高速馬場の芝1200mでは距離が短く、また前走で大幅に指数を上昇させた後の一戦になる今回は疲れが出る可能性が高い。

【能力値5位 ミルトクレイモー】
5走前の志摩S(3勝クラス・中京芝1200m)では、ロードフォアエースに勝利した馬。この時は逃げ馬不在で6番枠から好スタートを決めハナを主張した。

道中で外からロードフォアエースが本馬に並びかけ、しばらく雁行状態だったが、3角手前で同馬がハナを主張し、本馬は2番手で3角に入った。

3~4角では馬場の良い外々を通ったロードフォアエースに対し、ミルトクレイモーは馬場の荒れた最内を通り、コーナーワークで差を広げ1馬身ほどのリードで直線へ。ラスト2Fで追われてしぶとく伸び1馬身半までリードを広げ、最後は2着ロードフォアエースに3馬身半差を付け完勝した。

この時は標準馬場で前後半34秒9-33秒6のややスローペース。展開には恵まれたが、馬場の悪化した内から押し切った内容は強く、昨夏のヨシノイースターの北九州記念2着時やカリボールの前走パラダイスSに並ぶ、出走馬NO.1の指数を記録した。

本馬は3走前のラピスラズリSでも、1番枠を生かして中団の最内をロスなく立ち回り、最後の直線で内を捌いて伸び4着に善戦した。この時は3~4角で包まれて直線の進路取りにやや苦労したが、それでも後のオーシャンS2着馬ペアポルックスに0秒4差だから悪くない。

本馬はスプリンターとしてはやや脚が遅い面があるが、内枠に入った時はインにこだわる騎乗をしており、これまでの連対時は全て6番枠よりも内枠。4番枠の今回は侮れない。

能力値以外の穴馬は芝1200mベストのエイシンワンド

エイシンワンドは中京芝1200mの新馬戦と小倉2歳Sを連勝した馬。小倉2歳Sは8番枠から五分のスタートを切り、押し進めて2列目の外を追走。3~4角では楽な手応えで先頭列に並びかけて直線へ。直線序盤で追われると半馬身ほど前に出て、ラスト1Fで外からクラスペディアに迫られたが3/4差で勝利した。

当時は重馬場でタフな馬場。そのため前走を逃げ切り勝ちしたレイピア、アーリントンロウがペースを引き上げずに前後半3F34秒5-34秒5と流れが落ちつき、前有利の展開に恵まれる形で勝利した。

本馬はその後の京王杯2歳S、朝日杯FSでは控えて揉まれる競馬で能力を出し切れず、朝日杯FSは距離も長かった。前走クロッカスSは前後半3F36秒7-33秒6の極端なスローでクラスペディアが逃げ切る展開を出遅れて中団からの追走となったのが痛かった。

本馬は芝1200mである程度、上がりが掛かる展開がベスト。クロッカスS後に休ませて成長を促しての出走となる今回は一発に期待したい。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ヨシノイースターの前走指数「-21」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.1秒速い
●指数欄の下線の茶色はダート
●能力値 =(前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

《関連記事》
【北九州記念】出馬表詳細
【北九州記念】ロードフォアエース、ヨシノイースターは消し! ハイブリッド式消去法
【北九州記念】開幕2週目で高速決着必至 「持ち時計」と「前走実績」から浮上した3頭とは