インにこだわった好騎乗
夏の福島開幕週のメイン・ラジオNIKKEI賞はエキサイトバイオが勝ち、2着センツブラッド、3着インパクトシーで決着した。
3歳限定のハンデ重賞らしく単勝オッズひと桁台が7頭の混戦。ついでにハイペースを演出した先行型や逃げ切ってここに駒を進めた馬もいて、展開読みもカギを握った。
戦前はハイペース想定も出ていたが、実際は1000m通過59.7と開幕週としては速くない。これもキャリアが浅い3歳同士ならでは。並びが前走通りとは限らない。そろそろ将来を考え、控える競馬を試したいという思惑が展開に変化を与える。
内枠にいたスナークピカソが好発もハナに立つ意思をみせず、最初のゴール板付近では一瞬見合うような攻防があり、ほかがいかないならとハナに立ったのはトレサフィールと横山典弘騎手。ベテランの逃げとなれば、無謀なペースはない。
向正面で12.3-12.2と息を入れ、残り800m勝負に持ち込む。早めにペースをあげ、位置取りの優位を活かそうとするレース展開だった。後半800mは11.8-11.9-11.7-11.8。スキのない持続力勝負になった。
勝ったエキサイトバイオはそんな後半に備え、初手から枠順を利用し最内を譲らなかった。開幕週の馬場に加え、後半勝負となると、距離ロスを抑え、体力を温存できるのは理想の形だ。
とはいえ、開幕週のインは簡単には開かない。エキサイトバイオにも直線入り口では先行馬たちの壁。それでも荻野極騎手が一瞬のスキを突いて外に出し、外からまくる馬たちとの間のスペースを抜けてきた。
前走のあずさ賞は2着に敗れたものの、インを抜けてきており、その経験がいきた。2歳10月デビューから4連敗も、5戦目で未勝利を脱出してからは1着、2着、1着。ややエンジンのかかりが遅く、全体的に成長がゆっくりなレイデオロ産駒は走りはじめると止まらない。
馬主バイオの執念
エキサイトバイオは父以上に母アニメイトバイオに注目しよう。
現役時代は京王杯2歳Sと阪神JFで2着。3歳秋のローズSを勝ち、秋華賞でも2着だった。4歳シーズンは夏に七夕賞とクイーンSで3着に入った後、秋は府中牝馬Sで2着。勝ち味に遅いところはあったが、2歳から走り、古馬になっても重賞で活躍した。7~9月【2-0-3-3】と夏に強かったところはエキサイトバイオにも伝わったようだ。
アニメイトバイオの母レーゲンボーゲンといえば、靭帯を損傷しながら天皇賞(春)を勝ったレインボーラインの母でもある。エキサイトバイオもレイデオロと母系の成長力を味方に、秋にはもうひとつ上の舞台で活躍しそうだ。
馬主のバイオには2011年中山大障害、12年中山グランドJを勝った障害重賞4勝馬マジェスティバイオがいたが、平地重賞の勝利はエキサイトバイオの母アニメイトバイオのローズS以来で15年ぶり。アニメイトバイオの産駒はデビューしたすべてがバイオの所有馬であり、その執念が重賞勝利をたぐり寄せたといえる。ひとつ血統を追うのも競馬の奥深さだ。
覚えておきたい夏の福島攻略法
2着センツブラッドはエキサイトバイオとほぼ同じ先行馬の後ろに位置し、先に動いた。人気を背負っており、展開的にも先に動かないと勝負にならなかった。インにこだわった勝ち馬と鞍上の胆力に敗れたものの、力は示したといえる。
父ルーラーシップは福島芝1800~2000m【25-11-23-192】勝率10.0%、複勝率23.5%で、これを6~7月に限定すれば【13-4-9-76】勝率12.7%、複勝率25.5%とさらに上昇する。夏の福島では覚えておきたい種牡馬だ。センツブラッドの母サマーセントもマーメイドSを勝った“夏の牝馬”。夏競馬攻略のためにこういった血統背景も役立てよう。
インパクトシーも1、2着馬と同じ位置から動いて3着に粘った。4着ビーオンザカバーのような後方一気は開幕週では厳しく、位置取りが着順に影響した。
インパクトシーの鞍上は、土曜日にJRA通算200勝を達成した横山琉人騎手。これで福島の重賞は【0-1-2-1】と得意条件。この春も福島牝馬Sでフィールシンパシーを3着に導いているように、福島中距離の心得を体得した騎手だ。地元出身の田辺裕信騎手ほど人気馬に騎乗しないのも心強い。粘り強く買いたい騎手だ。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君』(星海社新書)に寄稿。
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