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【函館記念回顧】ヴェローチェエラが“サッカーボーイ超え”1:57.6レコード ラスト2Fの加速が決め手に

2025 6/30 11:56勝木淳
2025年函館記念、レース結果,ⒸSPAIA
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レコード更新をあと押しした条件設定

サマー2000シリーズ開幕戦になった函館記念はヴェローチェエラが勝ち、重賞初制覇。2着はハヤテノフクノスケ、3着はマイネルメモリーで決着した。勝ち時計1:57.6は1988年函館記念でサッカーボーイが記録したレコードを0.2秒上回った。

今年の函館は、開幕週でハギノトップレディが46年間守ってきた芝1000mのレコードが破られ、さらに3週目の函館記念ではサッカーボーイのレコードを37年ぶりに更新と、記録ラッシュ。これほど時計が速い函館は珍しい。

開幕週が高速決着になるのは近年でもみられるが、この時期、函館は曇りや雨が多く、平日の雨でも馬場コンディションは変わる。開幕3週目、内側は見た目に変化があっても、時計は速いまま。そこに重賞の函館記念とくれば、レコード更新の可能性は高かった。

函館記念の日程が開催最終週から折り返し地点に引っ越した点も、その背中を押したのは間違いない。サッカーボーイが1分57秒台に突入して以降、函館芝2000mコースでは58秒の壁が長く立ちはだかり続けた。函館記念では58秒台ですら2010年マイネルスターリー(1:58.5)、13年トウケイヘイロー(1:58.6)、21年トーセンスーリヤ(1:58.7)の3頭のみで、58秒台前半はなかった。

2000年以降、札幌開催の2009年、五輪シフトの変則開催だった21年以外は1回開催12日目、2回開催4日目ないし6日目と開催終盤に行われており、時期こそ8月だが、1回開催6日目での実施は、21年を除くとブライトサンディーが勝った96年以来で、そもそも6月の開催は97年アロハドリームが最後。28年ぶりの6月施行がレコードを呼んだならば、今後もこのスケジュールが続けば、レコード更新はかつてより多くなるかもしれない。


ヴェローチェエラとサッカーボーイの類似点

とはいえ、時期や天候の影響を受ける馬場だけがレコードに寄与したわけではない。そんなに簡単にサッカーボーイの記録は破られない。サッカーボーイの函館記念は前後半1000m57.7-1:00.1の前傾ラップから、ラスト400m11.8-11.7と加速したことでレコードを完成させた。このラストのラップを引き上げたのは早々に抜け出したサッカーボーイの脚力であり、ここに種牡馬としての価値もみえる。

今年の函館記念は序盤600mが34.1と速かった。正面スタンド前をたっぷり使う函館芝2000mでは、序盤が速いことは多く、今回も先手を主張したアウスヴァールがついてきたトップナイフを振り切りにかかり、突っ込んだ入りになった。

1000m通過58.1と、その後にアウスヴァールがペースを落としたため、猛ペースにはならず、後半1000mは59.5と極端にかかっていない。それでも先行勢には決して楽な流れではなかった。それでもラスト400mは11.7-11.6と加速しており、サッカーボーイのラップとそっくり。

最後の最後にレコード更新へ導いたのが4コーナー2番手から抜け出したヴェローチェエラだ。中団から先行勢が苦しいとみるや、早めに外を押し上げる鞍上の積極策が見事にハマり、ラストの加速へ導いた。

父リアルスティールはJRA重賞6勝目。芝中距離となると、3勝すべてをレーベンスティールがあげており、ヴェローチェエラは2頭目になる。

レーベンスティールは母の父トウカイテイオー、母系にリアルシャダイが入る懐かしい血統だったが、ヴェローチェエラは母の母インペリアルビューティー。2001年、武豊騎手が騎乗し、仏GⅠ・アベイドロンシャン賞を勝った。

この血統表の奥にはエプソムダービー、凱旋門賞を勝ったフランスの名馬シーバードの名がある。アベイドロンシャン賞は芝1000mだが、凱旋門賞当日のGⅠであり、凱旋門賞に縁深い血統でもある。そんな血統にディープインパクトとラヴズオンリーミーの血が入る。函館記念のレコード更新は快進撃のきっかけにしてほしい。


メモに残したいマイネルメモリーの適性

2着ハヤテノフクノスケは青森県産。故郷の目と鼻の先での重賞参戦は情緒的な意味合いもあったが、厳しい流れと高速決着のなか、好位からの2着確保で重賞通用のメドを立てた。父ウインバリアシオンは長距離のイメージがあるものの、2000、2400mでも実績を残しており、ハヤテノフクノスケも似た距離適性がありそうだ。

マイネルメモリーは最後方から追い込んで3着。展開待ちのタイプで、ハマリどころが難しいが、条件戦では小倉芝1800m・1:45.6(1勝クラス)、京都芝2000m・1:58.4(2勝クラス)で勝っており、追い込み一手のわりに高速決着に強い。

父ゴールドシップ産駒の追い込み型という、イメージとはズレた適性をもっており、人気が落ちたタイミングで一発ある。珍しいタイプなので、メモしておきたい。

2025年函館記念、レース回顧,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君』(星海社新書)に寄稿。

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