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【ラジオNIKKEI賞】開幕週で先行力を重視、本命はトレサフィール 穴候補は“最内枠”エキサイトバイオ

2025 6/28 17:00山崎エリカ
2025年ラジオNIKKEI賞のPP指数,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

開幕週らしく内と前が有利

梅雨時となるこの福島開催は、「超」が付くほどの高速馬場で行われることは少ないが、開幕週らしく内枠と前へ行ける馬が活躍。過去10年では1~3番枠が1着6回、2着2回、3着3回と、3着以内に入った馬の約3分の1がここから好走。脚質では、逃げ馬が1着1回、2着2回、3着3回【1-2-3-4】とこちらは半数以上が3着以内に好走している。

舞台となる福島芝1800mは前半で坂を下るコースのため前半3Fが速くなりやすいが、後半の仕掛けがおおよそラスト2F(4角)と遅くなりやすいことが内・前有利の傾向に拍車を掛けている。

今年は逃げ、先行馬が多数いるので、後半の仕掛けがもう少し手前からになりそうだが、昨年のセットアップのように向正面から仕掛ける馬や捲りに動く馬がいない限り、追い込み一手のタイプが勝ち負けするのは難しいだろう。

能力値1~5位の紹介

2025年ラジオNIKKEI賞のPP指数一覧,ⒸSPAIA


【能力値1位 センツブラッド】
前走の白百合Sの2着馬。前走は7番枠から五分のスタート後、しっかり出して2列目を狙ったが、先行争いが激化したので控えて好位の中目を追走。道中は前3頭からやや離れた4番手で進めた。

3~4角でも好位の外目から4角で前のロードガレリアの外に誘導して、2列目付近から直線へ。序盤ですっと伸びて一気に先頭に立ったが、外から各馬が差を詰めてリードはクビ差ほど。ラスト1Fでもうひと踏ん張りしたが、最後に外から3頭に一気に迫られ、外のライトトラックにアタマ差で差された。

ここは高速馬場で前後半4F45秒8-47秒4とかなりのハイペース。さらに京都開催12日目で馬場の内側がかなり荒れており、外差し有利の馬場で、展開も後方有利だった。

本馬は最後の直線で外を通せてはいたが、大外から差し切った勝ち馬ライトトラックに対して、先行押し切りのアタマ差2着に好走したことは高く評価できる。

今回は福島開幕週だけに、前にある程度プレッシャーをかけながら好位でレースを進められる点は好ましい。ただし、前走がハイペースの好タイム決着で、消耗度の高いレースになっている点については不安。今が成長期の3歳馬だが、ここで上昇しきれない可能性がある。

【能力値2位 トレサフィール】
新馬戦では出遅れて差す競馬で7着に敗れたが、次走以降、しっかりハナを切って逃げるようになってからは上昇一途。東京芝1800mの未勝利戦と、休養を挟んでの1勝クラスを連勝した。

前走の1勝クラスは3番枠からまずまずのスタートを切り、押して楽にハナを取って、コントロールしながらの逃げ。道中ではペースを落としたが、3角からじわっとペースを引き上げ、4角では後続の仕掛けを待って1馬身半差ほどのリードで直線へ入った。

序盤でじわっと伸びて2馬身リードすると、ラスト2Fで仕掛けて3馬身差に広げた。ラスト1Fで外から迫るグロスビークをほぼ寄せつけず、3馬身差で圧勝した。

前走は超高速馬場で前後半4F48秒4-46秒4とかなりのスローペース。前半でリードを作ったことは大きいが、最後まで後続をほぼ寄せ付けなかったことは高評価できる。

本馬はそこまでテンが速くないので、このメンバーで外枠だと逃げられない可能性は高いが、好位には付けられる。能力上位馬の大半が前走でオープン以上に出走し、好走しているのに対して、本馬は前走が1勝クラスと、格下で消耗度の少ないレースになっていることからここでの上昇にも期待できそうだ。今回の本命候補とする。

【能力値3位 フクノブルーレイク】
今回のメンバー唯一の重賞連対馬で、2走前のスプリングSで2着。このレースは16番枠から出遅れ、無理をさせずに中団外目を追走。向正面で後方馬群の中目を捌きながら好位の外目に上がっていった。

3~4角ではそのまま外から良い手応えで2列目まで押し上げて直線へ。序盤はあまり伸びず、先頭のピコチャンブラックとは1馬身差。ラスト1Fで同馬に食らいつき、最後は差を詰めたがクビ差までだった。

中団で脚を溜めたとはいえ、ラスト1Fで勝ち馬ピコチャンブラックに唯一頭、差を詰めていた。しかし、タフな馬場で前へ行った馬が早々と苦しくなって失速したのも好走要因であった。

スプリングS時のように本馬はゲートも二の脚も甘く、時計の掛かる馬場がベスト。前走の皐月賞では7番枠からやや出遅れたものの、中団中目を追走と改善を見せていたが、序盤でのエリキングとマスカレードボールによるぶつけ合いの余波で窮屈になり、急ブレーキをかけ後方に下がる不利があり、運がなかった。

それを踏まえても高速馬場の芝1800m戦は追走に忙しく、今回は2番枠でも内枠を利した騎乗が出来ない可能性が高い。皐月賞はタフな馬場のスプリングS で好走した疲れもあっての16着大敗と見ており、巻き返してはくるだろうが、昨年当レースのように、前が自滅する展開でないと勝ち負けまで持ち込むのは厳しそうだ。

【能力値4位 ビーオンザカバー】
前走で1勝クラスの山藤賞(中山芝2000m)を勝利した馬。2番枠からまずまずのスタートを切り、軽く促して好位の中目を追走。道中は先頭からやや離れた好位の中目で進め、3角手前で位置が下がった3番手のウーバーストロングの後ろを通して中団付近で3角に入った。

3角で同馬の外から仕掛けて離れた3番手に上がり、4角で4馬身ほど前にいる先頭のジェットブレードを追いかけて2馬身半差の2番手で直線へ。序盤で先頭付近まで上がり、ラスト1Fで早々と先頭に立つと、そのまま突き抜けて2馬身半差で完勝した。

ここは超高速馬場で前後半5F59秒4-59秒6の平均ペース。逃げ馬がある程度飛ばしていったなか、中団付近でレースを進めていたが、4角から勝ちに動いて押し切った内容は高評価できる。

今回は前走から疲れを取っての休養明けでの一戦。デビュー当初はゲートに甘さがあったが、近走は改善されており、直近の3走はまずまずのスタートが切れている。今回も中団で立ち回れる可能性が高く、内目の枠を生かしてロスが少ない競馬ができればチャンスがある。

【能力値5位 バズアップビート】
1勝目を挙げるのに5戦を要し、その後は2走前・プリンシパルSで序盤に落馬する不運にも見舞われたが、前走の白百合Sでは7番人気ながらタイム差なしの3着に健闘した。

前走は大外11番枠から出遅れ、内の馬と接触もあって後方からの追走に。道中はコントロールして折り合い重視で進め、後方3列目・外のライトトラックの後ろから3角に入る。

3~4角でも後方外目から、前のライトトラックが仕掛ける中でワンテンポ待ってその内を通し、4角出口で仕掛けを待って直線で大外へ。序盤ではニュークレドが蓋となって外に誘導しきれず、まだ中団。ラスト1Fで外に出し切ると、伸び脚は良く、2馬身ほどあった先頭にいたセンツブラッドとの差を詰め、ゴール前の横一戦に加わったがアタマ+ハナ差で敗れてしまった。

詳しくはセンツブラッドの項で記載しているが、当時は高速馬場のかなりのハイペースに加え、外差し有利の馬場で後方有利の展開。馬場&展開に恵まれての3着ではあったが、終始外々を追走しており、出走馬中でもっとも距離ロスがあった。最後の直線序盤でスムーズに外に出せていれば勝つチャンスもあったと見ている。

落馬による競走中止後だった前走は実質、休養明け初戦。本馬は4月29日の遅生まれでもあり、さらなる成長を見せる可能性もあるが、馬場と展開に恵まれて好指数を記録した後の一戦で疲れが出る危険性があることから、全幅の信頼は置けない。

穴馬は1番枠の先行馬エキサイトバイオ

エキサイトバイオは1勝目を挙げるのに5戦を要したが、昇級戦の前走・あずさ賞(京都芝2000m)でいきなり2着に健闘。3番枠から好スタートを決めて二の脚で先頭に立ったが、外からサンライズグラシアがハナを主張したので、同馬を行かせてその外2番手を追走。道中では2列目の最内で折り合って進めた。

3~4角では2列目の最内で包まれたが、直線序盤でひとつ外へ行ったサンライズグラシアの内を突いて抜け出し、1馬身半ほど前に出る。ラスト1Fでも差を広げにかかったが、外からマイユニバースとミュージシャンが強襲。ミュージシャンにはアタマ差先着したが、マイユニバースにはクビ差で敗れてしまった。

当時はタフな馬場で、前後半4Fは48秒2-47秒6の平均ペース。やや内有利の馬場ではあったが、次走の白百合Sで1番人気に支持されたマイユニバースとクビ差の内容は高評価できる。ちなみに、白百合Sは外差し有利の馬場で、最後の直線で外を通した馬が1~4着を独占したが、マイユニバースは最後の直線で内目を捌きながらも5着に善戦している。

前走の内容は白百合S上位馬と比較しても大きく見劣りせず、開幕週の1番枠を利して前走同様に好位の最内で立ち回れれば、上位争いに加われる可能性は高い。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)センツブラッドの前走指数「-12」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.2秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値 =(前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

《ライタープロフィール》
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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