積極的に前に位置を取れる器用な先行馬が中心
6月29日(日)にラジオNIKKEI賞(GⅢ)が行われる。本レースは世代限定戦では唯一のハンデ戦であり、今年も例年に違わず大混戦模様の非常に難解な一戦となった。
以下では、本レースが行われる福島芝1800mのコース形態とそれに起因するレースの質、そして想定される展開を踏まえ予想する。
まずは福島芝1800mのコース形態をみる。正面スタンド前直線の少し右側からスタートし、初角までの距離は約305m。発走後は上り坂になっている。ほぼ平坦な1、2コーナーを回り、向正面に入ると再度緩やかな上り坂。残り400m付近から下りはじめ、最後の150m付近から上り坂が待ち構えている。3、4コーナーはスパイラルカーブとなっており、最終直線は292m(Aコース使用時)。これが今回のコースレイアウトだ。
まず注目すべきは初角までの距離が約305mと短い点だ。先手争いは長引きにくく、発走後に上り坂があることからもペースは上がりにくい。また、序盤のポジション争いでは内枠の馬が有利になる。平坦な1、2コーナーを回り、向正面に入ってからも再度緩やかな上り坂でここでもペースは上がりにくい。
ペースが上がるのは3コーナーに入ってから。序盤、中盤で脚を溜めた先行勢がここから一気に加速していく。4コーナー残り400m付近からは下り坂となっており、ここでもペースは全く落ちない。後方勢が先行勢とのポジション差を埋めにくく、馬群が縦長の状態で最終直線を迎えやすい。
さらに3、4コーナーはスパイラルカーブとなっているため、スピードを保ったまま直線に入ると外に振られやすい。最終直線がかなり短い上に、スパイラルカーブで先行馬が外に膨らむため、そのさらに外を回した差し馬は距離ロスが大きくなりすぎてしまい物理的に前まで届きにくい。
したがって、序盤、中盤で積極的に前に位置を取り、できるだけ内ラチ沿いを通すことができる器用な先行馬が恵まれやすいというのが、このコースが持つレースの質だ。差し馬の場合、ラチ沿いを追走してインを差してくる形でなければ、まず厳しい競馬を強いられる。さらに本レースは開幕週の超高速馬場での施行のため、このレースの質がより強まっている。

<ラジオNIKKEI賞 4角通過順位別成績>
5番手以内【7-9-4-41】
勝率11.5%、連対率26.2%、複勝率32.8%、単勝回収率99%、複勝回収率124%
※過去10年
この傾向は数字にも表れている。ラジオNIKKEI賞における4角5番手以内馬の成績は上記の通り優秀だ。連対馬20頭中16頭を該当馬が占めている。また、その中でも内ラチ沿いを通しやすい内枠の馬だけに絞れば数字はさらに上昇する。
ただ、馬券内で見れば30頭中20頭であり、後方からメンバー上位の上がりの脚を使って差してきた馬もそれなりにいる。世代限定戦らしくメンバー間の能力差自体は大きい。展開不利の中でも地力次第で好走可能なのも、このレースの一つの特徴だ。
まず能力比較をした上で、各馬のテンの速さを比較し、積極的に前に位置を取り、最後まで残せるだけの高い地力がある先行馬を中心に印を打っていく。
先行馬の頭数ほど差し有利にはならない展開
続いて今回想定される展開から恵まれる馬を考える。メンバー構成は前走通過順位に3番手以内のある先行馬が8頭と出走馬全14頭に対して多い。ただ、その半数は距離短縮馬である上に、世代限定戦らしいスローペース瞬発力戦を勝利してきた馬が多く、徹底先行タイプはそこまで多くない。前述のペースが上がりにくいコース形態を考慮すれば、ミドルペースか、速くてもややハイペース程度の展開が想定される。
この展開でも恵まれるのはやはり前に位置を取り、最後まで残せるだけの地力がある先行馬だ。差し馬の場合、ラチ沿いを追走しイン差しする形がベスト。また脚質が後方寄りであればあるほど、開幕週の超高速馬場で追走力を補える距離延長はプラス材料だ。
展開面からも、前に位置を取れる器用な先行馬を中心として印を打っていく。
メンバーで最上位のテンの速さ
◎スナークピカソ
メンバーで最上位のテンの速さを持つ一頭。前走の白百合Sは好スタートから逃げる競馬。初角までが約900mと非常に長い京都芝1800mらしく向正面における先手争いは激化し、外から競られる形でペースアップ。前半1000m57.9秒の超ハイペース、差し有利な展開となった。さらに開催12日目ということもあり、上位4頭は直線でもはや外ラチ沿い近くまで持ち出すほど外差し馬場だった。本馬は展開、馬場ともに向かない中、0.5秒差6着。着順、着差以上に評価できる内容だった。
今回は当時の2、3着馬も出走してくるが、前走より初角までの距離が約3F短くなる福島芝1800m替わり、開幕週の超高速馬場、3枠3番の絶好枠、マイナス4キロの斤量、叩き2走目と条件は大きく好転。逆転可能とみる。
追い切りの内容も良く、テン乗りの出走馬が多い今回、未勝利戦をともに勝っている小沢騎手の継続騎乗もプラス材料だ。絶好枠から好スタートを決めてハナまで取りきり、展開、馬場、斤量とあらゆる恩恵を最大限生かせば逃げ切るチャンスは十分にある。
想定オッズ段階では白百合Sの2、3着馬が最上位の人気を背負っているのに対し、本馬はかなり人気を落としている。鮮やかな逃亡劇に賭けるには十分すぎるオッズとみて本命を打つ。
◯センツブラッド
前走の白百合Sは1000m通過57.9秒のハイペースを4番手で先行。スナークピカソよりは展開、馬場が向いたものの、このペースを先行して上がり3F4位の脚を使い、タイム差なし2着と高く評価できる内容だった。安定した先行力があり、常に好位から堅実な末脚を使えるタイプで、ここでも順当に前目から競馬ができる。スムーズな追い出しで能力を最大限発揮すれば好走してくる。
▲フクノブルーレイク
前走の皐月賞はスタート後に複数回接触する不利があり、手綱を引く形で通過順位もズルズルと下がっていき、持ち前の末脚を全く発揮できずに1.6秒差16着。完全に度外視可能な敗戦だ。2、3走前の内容、相手関係を見てもここでは能力上位。斤量不利と後方寄りの脚質でやや展開不利が想定されるものの、こちらも力を出し切れれば好走可能だ。
△インパクトシー
前走のプリンシパルSは直線で前が壁になった上に、徐々に左にヨレてしまい、全くまともに追えないまま1.1秒差10着。度外視可能な敗戦とみる。右回り替わりは大きなプラス材料で、2走前の内容だけ走れば人気以上の好走に期待できる。
×エキサイトバイオ
1枠1番の絶好枠。斤量も恵まれた。持ち前の先行力で前目から競馬ができれば。
×モティスフォント
どの位置からでも常に堅実な末脚を使える。距離延長を生かして好位から運べれば。
買い目は◎単勝1点、◎-◯▲△馬連3点、◎-◯▲-◯▲△×3連複7点で勝負する。
▽ラジオNIKKEI賞予想▽
◎スナークピカソ
◯センツブラッド
▲フクノブルーレイク
△インパクトシー
×エキサイトバイオ
×モティスフォント
◎2024年勝負買い目個人成績(東海S~ホープフルS:25記事)
・単勝27点→4830円 回収率178.9% 的中率37.5%(的中9R/推奨24R)
・馬連105点→12480円 回収率118.9% 的中率42.9%(的中9R/推奨21R)
・3連複204点→22410円 回収率109.9% 的中率17.4%(的中4R/推奨23R)
《ライタープロフィール》
京都大学競馬研究会
今年で30周年を迎える、京都大学の競馬サークル。馬主や競馬評論家など多くの競馬関係者を輩出した実績を持つ。また書籍やGⅠ予想ブログ等も執筆。回収率100%超えの本格派が揃う。
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