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【宝塚記念】“1.9倍”ゴールドシップの出遅れ劇が呼んだ大波乱 春のグランプリを記録で振り返る

2025 6/10 17:00緒方きしん
宝塚記念思い出の記録,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

三連単5000倍オーバーも 三連単、高配当の歴史

今週は春のグランプリ・第66回宝塚記念が開催される。今年からは安田記念翌週の施行となり、そういった観点からも注目が集まる。

古くはコダマやシンザン、スピードシンボリらが勝利。伏兵や苦労してきた馬が勝利するシーンも多く見られたが、近年はリスグラシュー(2019年)クロノジェネシス(2020、21年)、タイトルホルダー(2022年)イクイノックス(2023年)、ブローザホーン(2024年)といずれも3番人気以内の馬が勝利を挙げている。

ここからは、宝塚記念の記録を振り返る。なお、データは1986年以降のものを使用する。

まずは配当額について。歴代の宝塚記念における三連単最高配当ランキングは以下の通り。

1位 5285.1倍/2015年 ラブリーデイ(6番人気)→デニムアンドルビー(10番人気)→ショウナンパンドラ(11番人気)
2位 4925.6倍/2018年 ミッキーロケット(7番人気)→ワーザー(10番人気)→ノーブルマーズ(12番人気)
3位 2514.4倍/2014年 ゴールドシップ(1番人気)→カレンミロティック(9番人気)→ヴィルシーナ(8番人気)
4位 1838.7倍/2020年 クロノジェネシス(2番人気)→キセキ(6番人気)→モズベッロ(12番人気)
5位 1788.4倍/2005年 スイープトウショウ(11番人気)→ハーツクライ(3番人気)→ゼンノロブロイ(2番人気)

2018~21年の4回は、4925.6倍(高配当・2位)→145.6倍(低配当・5位)→2020年1838.7倍(高配当・4位)→2021年133.4倍(低配当・3位)と、高配当と低配当が交互で飛び出した。

今も語られるゴールドシップ“大出遅れ”の2015年

歴代最高配当となった2015年は、単勝1.9倍の圧倒的1番人気ゴールドシップの歴史的な大出遅れからスタート。また、2番人気と3番人気にはラキシス、ヌーヴォレコルトと牝馬が支持されていた。

直線では道中2番手から進めた6番人気ラブリーデイが抜け出すと、2、3着には10番人気デニムアンドルビー、11番人気ショウナンパンドラと牝馬の伏兵2頭が追い込んだ。特にデニムアンドルビーは上がり最速34.0という鬼の末脚で、粘るラブリーデイにクビ差まで迫った。

ラブリーデイはそれまでGⅠで、7着→15着→7着→12着→8着と分厚い壁に跳ね返されてきた。しかし、ここで念願のGⅠ制覇を達成すると、秋には京都大賞典→天皇賞(秋)と連勝。続くジャパンCを3着、有馬記念でも5着と善戦して2015年のJRA賞・最優秀4歳以上牡馬に選出された。

また、宝塚記念で3着だったショウナンパンドラは秋にジャパンCを制覇。大荒れの宝塚記念ではあったが、上位馬の実力が後になって証明された。

連覇で決着も、馬券は波乱の2014年

2015年は大出遅れで波乱を呼んだゴールドシップだが、その前年には1番人気で勝利を挙げ、三連単は歴代3位の高配当を記録した。道中を4番手で進み、上がり最速の脚で3馬身差の圧勝。連覇を達成した。

前につけた馬たちが粘った一戦で、3番手から進んだ9番人気カレンミロティックが2着、逃げた8番人気ヴィルシーナが3着。2番人気ウインバリアシオンは7着、3番人気ジェンティルドンナは9着と大きく敗れた。

カレンミロティックは翌年、2015年の天皇賞(春)で10番人気3着、さらにその翌年の2016年天皇賞(春)では、13番人気2着と多くの波乱を巻き起こした。ちなみに、同牝系からは今年の3歳ダート路線で活躍するクレーキング(ユニコーンS2着)がおり、11日(水)には東京ダービーに挑戦予定だ。

ヴィルシーナは、前走のヴィクトリアマイルを11番人気で勝利しての参戦であり、こちらも大波乱メーカーとして印象を残した。繁殖牝馬としてもブラヴァス(2020年新潟記念)、ディヴィーナ(2023年府中牝馬S)など活躍馬を輩出している。

コースレコードを更新したタイトルホルダー

宝塚記念のレコードタイムは2022年のタイトルホルダーが記録。勝ち時計2:09.7はコースレコードでもある好タイムであった。宝塚記念の勝ち時計ランキングは以下の通り。

1位 2:09.7/2022年 タイトルホルダー
2位 2:10.1/2011年 アーネストリー
3位 2:10.2/1995年 ダンツシアトル※京都開催
4位 2:10.8/2019年 リスグラシュー
5位タイ 2:10.9/2012、21年 オルフェーヴル、クロノジェネシス

なおダンツシアトルの記録は京都開催でのものであり、開催日も6月4日(1回京都8日目)とやや早い時期だった。

稀代の逃げ馬が激突した2022年

2022年の宝塚記念はパンサラッサ、タイトルホルダーというタイプの違う逃げ馬が顔を合わせた一戦。レースはパンサラッサが先頭、タイトルホルダーが2番手に。さらに3番手にはディープボンドがポジションを取り、緩みのないペースとなった。

タイトルホルダーは早めに抜け出すとそのまま後続との差を縮めずに突き進む。2着のヒシイグアスに2馬身、3着のデアリングタクトとはさらに2馬身の差をつけてゴール。圧倒的な力を見せつけた。当時は京都競馬場の改装もあり、阪神で開催された前年菊花賞、同年天皇賞(春)と阪神で3つのGⅠを制することとなった。

5位タイのオルフェーヴルは近走のスランプを抜け出す走りで勝利。3歳で三冠&有馬記念を制して年度代表馬となったが、年が明けると阪神大賞典で逸走して2着、続く天皇賞(春)で11着と連敗してしまう。

凱旋門賞挑戦に向けて負けられない一戦だったが、レースでは決して万全ではない体調のなか、鋭い末脚を披露。池添騎手が4角~直線で内を選択すると、そこから上がり最速の脚で伸びて、2着ルーラーシップに2馬身差をつけた。

施行時期の違いにより、今年は馬場傾向も例年とは変わるはず。果たしてどのようなタイムで決着するのだろうか──。

《ライタープロフィール》
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、ダイワスカーレット、ドウデュース。

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