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【宝塚記念】“逃げ馬不在”に泣いた昨シーズン ローシャムパーク、逆襲のシナリオが完成か

2025 6/10 18:00SPAIA編集部
2025年宝塚記念に出走予定のローシャムパーク,ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)
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ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

春のグランプリは波乱あり

2025年上半期の総決算となる宝塚記念(15日、阪神芝2200m)が迫ってきた。大阪杯を連覇し、ファン投票1位に選ばれたベラジオオペラ、有馬記念からのグランプリ連覇に挑むレガレイラをはじめとした中長距離路線の実力馬が顔をそろえ、豪華メンバーによる注目の一戦となりそうだ。

今年も実績馬同士の激突が注目を集める一方で、条件ひとつで浮上の可能性を秘める馬も少なくない。実際、2000年以降の計25回では6番人気以下の馬が7勝、2着11回、3着10回と伏兵の激走も珍しくない。ここでは静かにその時を待つ1頭、ローシャムパークに焦点を当てたい。

ローシャムパークは前年の大阪杯2着馬で、ベラジオオペラとはクビ差の接戦だった。昨秋のBCターフ(米GⅠ)でも、当時GⅠ・6勝のレベルスロマンスとクビ差の2着に好走、次走で有馬記念2着に入るシャフリヤールには先着を果たすなど、“GⅠ級”といっていいほどの実績を誇る。

一方でその戦歴にはムラが目立ち、直近2戦はいずれも掲示板を外している。この不安定さが各所の想定オッズに表れており、当日も伏兵評価となりそうだ。しかしながら、これまでの敗戦は“力負け”というよりも、展開に泣かされた面が大きいと見る。

展開のカギはメイショウタバル

昨年の有馬記念では7着と振るわなかったローシャムパークだが、その敗因の一端は、展開にあったと考えられる。逃げ馬不在の構成で、極端なスローペース。最初の300m通過後の5Fは12.9-12.4-12.4-13.3-12.4。気性面に課題を抱えるだけに、案の定というべきか、折り合いを欠いて激しく消耗してしまった。

昨年参戦した国内レースは、不運にもいずれもスロー寄りの流れ。レース中に力む姿が度々見受けられた。また、長く脚を使う持久力勝負を得意とするタイプだけに、展開にも恵まれず、ローシャムパーク本来の力をなかなか発揮できずにいた。そうした状況を踏まえれば、今年の宝塚記念では一転して条件好転が見込める。

その根拠となるのが、阪神芝2200mで行われる宝塚記念のペース傾向だ。2016年以降の阪神開催における前半5Fの通過タイムは以下の通り。

<宝塚記念の前半5Fラップ(2016年以降、阪神開催のみ)>
・2016年 59.1秒(稍、17頭)
・2017年 60.6秒(稍、11頭)
・2018年 59.4秒(稍、16頭)
・2019年 60.0秒(良、12頭)
・2020年 60.0秒(稍、18頭)
・2021年 60.0秒(良、13頭)
・2022年 57.6秒(良、18頭)
・2023年 58.9秒(良、17頭)
※カッコ内は馬場状態と出走頭数

ご覧の通り、2017年を除く7回で前半5Fが60.0秒以下となっており、淀みない流れがスタンダードとなっている。特に多頭数だった年ほど速く、18頭立て想定の今年も流れる展開が予想される。2021、22年以来となる「開催2週目」での施行という点からも、2022年並みがあっても不思議はない。

くわえて、見逃せないのがメイショウタバルの存在だ。前走のドバイターフでは前半5F59.2(計測方式の違いに留意)、2走前の日経新春杯では57.7で逃げており、この馬ならば、ハイペースで引っ張る展開が濃厚だ。

2番手以下は距離を取りながらの追走が予想されるが、いずれにせよ中盤以降のペースアップは必至。ローシャムパークにとって、自身の持ち味を発揮しやすい流れとなる可能性が高い。

“グランプリ男”兼“仕事人”

今回は、宝塚記念3勝、有馬記念4勝の実績を誇る“グランプリ男”池添謙一騎手に手綱が託される。大舞台での乗り替わりという点はカギとなるが、池添騎手はこれまで幾度となく代打騎乗で結果を出してきた“仕事人”としても知られている。

過去にはレーヌミノル(2017年桜花賞)、インディチャンプ(2019年マイルCS)などをテン乗りで勝利。宝塚記念においても、2015年にショウナンパンドラ、一昨年にはスルーセブンシーズといった人気薄の初騎乗馬を馬券圏内に導いている。

<宝塚記念 池添謙一騎手の好走実績>
着度数【3-2-2-10】
勝率17.6%、複勝率41.2%、単回収率287%、複回収率311%
・2005年 スイープトウショウ 1着(11番人気)
・2009年 ドリームジャーニー 1着(2番人気)
・2012年 オルフェーヴル 1着(1番人気)
・2014年 カレンミロティック 2着(9番人気)
・2015年 ショウナンパンドラ 3着(11番人気)
・2020年 モズベッロ 3着(12番人気)
・2023年 スルーセブンシーズ 2着(10番人気)

驚くべきことに、好走7頭のうち5頭が9番人気以下の伏兵だった。また、スイープトウショウ、ドリームジャーニー、オルフェーヴルといった気性に難しさを抱える馬たちとのコンビ歴もあり、その対応力は折り紙付きだ。ローシャムパークのように、条件さえかみ合えば台頭の余地があるタイプにとっては、まさに頼れる存在といえるだろう。

理想は良馬場

反撃態勢が整ったローシャムパークだが、気にしたい要素がひとつ。それが馬場状態だ。稍重の函館記念こそ勝利しているが、きれいで大きなストライドは良馬場でこそ生きるとみる。

実際、重馬場だった昨年の宝塚記念(5着)ではレース後、「進みが良くなかった」という旨のコメントもあった。前走、豪州の稍重馬場で行われたクイーンエリザベスS(6着)でも、最後に伸びを欠いた原因のひとつは、やはり馬場だったと考えられる。

あとは天気次第。稍重でもこなせるが、理想は良馬場だ。梅雨の仁川に陽光が差し込んだとき、逆襲のシナリオが完成する。

《ライタープロフィール》
編集部ゲン
慶應義塾大学中退後、遊技機開発などを経てSPAIA競馬編集部へ。“趣味”を仕事に、“娯楽の価値”を追い求める日々を送る。
最近引っ越したのをきっかけに、ゲーミングPCを久々に新調しようと調べてたら、今はAMDの勢いがすごいって知ってビックリ。……そういえば宝塚記念って、NVIDIAっぽい王道よりも、AMDみたいな“非主流”感ある馬がハマる気がしませんか? 
ということで、今年のサイン馬券はAMDのCPU「Ryzen9」にちなんで9番枠で攻めます。

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